最近読んだ本に、中国史に造詣の深い東京外語大名誉教授
岡田英弘の著書で「
この厄介な国、中国」がある。
中国は20世紀になるまで中国大陸には中国と言う国家もなかったし、中国人と言う概念も意識もなっかった。というくだりに衝撃を覚え、昨今の中国の引き起こした数々の紛争や国内問題に思いを馳せ読み進んでみると、私が知り得ていた中国の姿と違う側面が陳述されているので一部掻い摘んで列記してみると次のようになる。
「古代中国において歴代王朝は存在していたが、民族の集団ではない。皇帝ただ一人の専有物で中国人民の支配者でも中国大陸の所有者でもなかった。皇帝は中国全土に張り巡らされた流通システムを所有していた。つまり総合商社の社長のような存在であった」と筆者は述べている。
つまり中国においては、最初から王は流通業、商売の頂点に立つ人間のことであった。王はマーケットの支配者であり、この商業ネットワークシステムを帝国の形にしたのが秦の始皇帝、あるいは漢の武帝である。中国の統治システムにおいて最も重要なものは交易である。そのため交易が発展
すればわざわざ領民や領地を持つ必要がない。そのためその存在はボーダレスになり現代の巨大商社の様に国籍がさほど問題にならなくなった状態と似ている。
一般民衆にとって皇帝は利害関係に基づくつながりでしかなく、都市において交易したいものは一定の税を払ってその権利を手に入れ、都市の戸籍を持ち、そうでない物は農村籍あるいは蛮族と言うように厳然と区別が現代中国まで続いている。
中国政府が主張している漢族の優位性と存在自体が厳密な意味で存在しないとも筆者は述べている。つまり古代中国の都市国家の発生を見ても分かるように、商業都市としての住民は様々な地方から交易を目的に集まった雑多な烏合の衆であり、やがてそれらが混じり合い漢族を形成したものととらえている。
「だがそうやって誕生した漢族もまた紀元184年に起った「黄巾の乱」によって消滅してしまった。この乱は都市に人口が集中した結果深刻な食糧不足に陥り、漢王朝に対する不満が爆発し反乱は全土に及んだがやがてそれは制圧されたものの、それがきっかけで中国は四分五裂になり後漢は滅び、三国時代に突入するのである。」
古来中国の歴史は飢餓との戦いでもあり食人の歴史でもある。食料が欠乏したら直ちに共食いが始まる。各時代にある人を食った話は非常に多く、枚挙にいとまがない。そこにはひとかけらのセンチメンタリズムもない殺伐とした世界がある。
「三国時代の混乱は隋の文帝が中国統一に成功するまで400年も続いた。この間都市機能は疲弊し人口が10分の1以下に激減したが、この人口空白を埋めたのが北方の騎馬民族の流入で、中国の住民はそっくり騎馬民の子孫に入れ替わり漢族はほとんどが紀元2世紀で地球上から姿を消したとされている。ただし、漢時代の皇帝システムだけは生き残り、隋、唐、宋と言った王朝に受け継がれ、新たな漢族となった騎馬民の子孫鯛がそのシステムの中に組み込まれ現在に至る。
その皇帝システムが形を変えて出来たのが現在の中華人民共和国なのである。」
「中国人のメンタリティーには他人はすべて敵であり、油断をすればいつ寝首を掻かれるか分からないという考えが常にあり、相手が弱みを見せるとすぐに攻撃を仕掛けると言った個人主義の極め付きがみられる。」和を大事にするわが国の国民性とはかけ離れた国民性である。
「中国人社会において最大のタブーは他人に弱みを見せることで、中国人の行動原理は他人から付け込まれる前に他人の弱みに付け込むといったパターンである。」尖閣諸島問題のあの中国の高飛車な言動はまさにこれが当てはまるであろう。
参照 中国史略年表
◎
中国への戒め
中国浙江省温州の高速鉄道事故後に車両を地中に埋めるなど、証拠隠滅が行われたことについて、1日付の週刊経済紙「経済観察報」は「以前から同じ。今回はメディアの関心が高かっただけ」とする主要駅責任者の内部告発を掲載、同様の行為が常態化していたことを暴露した。
事故後、遺族は福建省などから温州に続々と集まり、地元政府が用意した施設に陣取る一方、鉄道駅や市政府前などで激しい抗議活動を繰り返した。その報道をみた人が、ネットや中国版ツイッター「微博(ウェイボー、マイクロブログの意味)」で鉄道当局のずさんな対応を非難。怒りが増幅する構図となった。
中国浙江省温州市で40人が死亡した高速鉄道事故ではネットを中心に「人命軽視だ」「真相究明が先」と世論の怒りが爆発した。中国メディアの一部も報道規制を振り切って当局批判に転じた。いったん埋められた車両の一部は「証拠隠滅だ」との批判を受けて26日に掘り出され、温家宝首相は28日に現地入りした。
中国の過去の災害や事故とは“異質な空気”が流れ、事故の収束を急ぐ当局に強い怒りが世論となって対峙(たいじ)している。
「事故現場の処理は急ぎ過ぎではないか」。事故後初めて現場を訪れた温首相の記者会見で、とげのある口調で質問を突きつけたのは中国国営中央テレビ(CCTV)の記者だった。
不可解な事に行方不明者の数がいまだ公表されていないことだ。「2つの高速列車の乗客は合わせて1630人が乗車していたと報道されている。多くの行方不明者はどこに消えたのか?。。世界の最新技術のいいとこ取り、技術の寄せ集めの産物の高速鉄道はこうした寄せ集めた技術を、おのれの開発技術のごとく主張して世界に特許を取ろうとしている厚かましさには開いた口がふさがらない。そうした考えが世界に通用すると考えているのが、今の中国社会の実態である。
今回の事故はまさにそれを戒めるべくして起きた事故以外のなにものでもない。「無理を通せば道理が廃る」とはこのことである。
川崎重工は、鉄道省との間で締結した技術移転契約は、技術使用は国内に限られると定めており、中国企業は輸出にそうした技術を使うことができない、と交渉の中で強く主張している がそれも豚の耳に念仏となりそうだ。
今回の事故を起こした車両は、先に停車していた車両がカナダの技術をベースにした「CRH1]で、追突した車両は日本の東北新幹線の技術を導入した「CRH2」である。 信号機などの運行技術に至っては海外の先進技術を十分に取り入れることが出来なかったために、時速300~400キロのスピードには追いつかないまま、運行開始に至ってしまっていたのである。
世界各国に現在商談を持ちかけている高速鉄道の入札に焦るあまり、事故を原因究明などもせず不都合な事はすべて覆い隠し、人命を無視した揚句、事故の早期終結を図ったことに、伝統的な商業至上主義者の中国人のがめつさの片鱗が見えてくる。
その一つが、中国鉄道省が事故の発生の翌日24日早々に、上海鉄道局 トップの幹部3人を解任したことである。事故が起きたら最高責任者として、事故対応や事故原因の解明に当たらす事は避け闇に葬ろうとした。
二つ目は、発表されている死傷者の数が40人程度の少なさである。追突した電車と追突された車両の乗客のほとんどすべてが負傷していて当然なのに、けが人の数はたった200人ほどだという。どう見ても、中国鉄道省や政府が事故の規模を小さくしようとしているとしか思えない。
3番目は、事故後真っ先に現場に駆けつけた処理班は追突した先頭車両、つまり運転席を含んだ車両を破壊し、穴に埋めてしまったのである、事故原因判明の一番の手がかりになる運転席部分を破壊して埋めるなどと言うことは、事故原因をうやむやにするため以外考えられないことである。
そしてインターネットを通じて政府鉄道省への批判が激しくなると、直ちに掘り起こすことをやる。
中国で長年ビジネスにかかわってきた日本人が口をそろえて言うのは、「二枚舌、利己的、契約を破っても平気、こんな信用の置けない国が何故ここまで発展するのか不思議でならない。」と。
ビジネスの世界では欧州人もアメリカ人も韓国人も、みんな中国人を好きになれない、中国の話をするときは皆顔をしかめて.ため息をつく。今回の事故で中国は世界中に一番大事な国家の信用の欠落を露呈した。
しかし多くのビジネスにとって悲しいかな安価な労働工賃の魅力には勝てない。おかげで中国の外貨保有高は日本を抜いていまや世界一。
各国が安い工賃を見込んで中国全土に工場を作り世界中に物を売る、結果中国に大量の外貨が入ってくる。そしてその金で軍備増強に余念がない中国、世界中の資源を独り占めする勢いの中国、共産党一党独裁政権が維持できないと崩壊する中国。
こんな厄介な国と我々日本人は心して付き合わなければならないことをこの本は教えてくれた。