2015年5月26日火曜日

活動期に入った日本列島



箱根大涌谷
箱根山の地震活動と蒸気噴出が活発になっている。今年3月に大涌谷に娘夫婦と立ち寄った際はいつも通りの景色であったが、あれから2か月が経ち、画像で見る限り蒸気噴出は激しさを増して、火山性地震も総数を増しているようだ。
先月中旬から地震活動が活発化し、噴火寸前に見られる「山上がり」(山体膨張)も観測されていて、噴火警戒レベル2に認定され、現場付近は立ち入り禁止となっている。

各地で活発化する火山が増える中、箱根山は、300年間噴火していない富士山と近いこともあり、関連を心配する声もあるようだ。箱根の歴史によると、
箱根山の大噴火で3200年前には、それまで3000メートル級の高さがあったと思われていた箱根火山の上半分が吹き飛ばされていまの1400メートルの高さになり、それだけではなく、そのときの噴火から出た火砕流がカルデラを埋めて芦ノ湖を作り、仙石原を埋めて平らにし、さらに西側の外輪山である長尾峠を越えて静岡県側まで流れ出たとされている。大涌谷周辺は現在山体膨張はすでに18㎝の隆起が認められており、今後水蒸気爆発で終わるのかマグマの噴火に至るのかは分からないが、水蒸気爆発の可能性が高いらしい。


空にぽっかり浮かんだ変な虹
 

西之島の噴火から始まって 富士・箱根・伊豆諸島を結ぶ火山帯で起きていることや、伊豆諸島の南方、鳥島の近くにある須美寿島(すみすとう)近海で、5月11日にマグニチュード5~6の地震が6回にわたって発生したことも気にかかる。
今月22日に一年ぶりに東京湾でフグを釣りに行った時に、不思議な現象を見た。出船前の7時ごろ船上から何気なく水面を見ていると丸い虹が映っているので、空を見上げると虹が水平に現れる 「環水平アーク」といわれる虹が出ていた。東海や関東でも見た人が多くいたようだが、この虹は大地震の前兆に見られる現象といわれている。



日本列島桜島や蔵王など火山活動が活発化しているが、江戸時代中期の1707年(宝永4年)に起きた「宝永大噴火」は日本最大級の地震であるマグニチュード8.6〜8.7と推定される宝永地震の49日後に始まった。
2011年に起きた大地震の影響によって、富士山のマグマ溜りにかかった圧力は宝永大噴火時より高かったこともわかり、近く再び噴火するのではないかと懸念されている。
いまだ眠っている富士山は山体膨張が2cmということで、300年前の宝永の大噴火以来沈黙を守っているが、眠りから覚めるのは神のみぞ知るといったところか? 

2015年5月16日土曜日

鎌倉界隈

左から大正7年植樹した頃の段葛 中央平成26年 右平成27年 5月
 

最近久しぶりに用事があって鎌倉に行った。昨年の10月の入院以来久しぶりに見た鶴岡八幡宮の参道段葛は、桜の木が抜かれ高い工事用の塀が八幡宮に続いていた。月日の移り変わりの速さを感じた次第であるが、鎌倉市では近年、玉石の崩落が相次いだことや約250本に及ぶ桜並木の樹勢が衰えたこともあり、平成22年に鶴岡八幡宮から整備を求める訴えがあったという。
工事主体となる鶴岡八幡宮と国・県・市による総事業費は約5億8千万円。工事期間は1年半程度とみられ、玉石を新たに築き、桜を植樹することで全体をかさ上げすることになった。

期間中は段葛の両側を高さ約3メートルのパネルで遮断して通行止めとする。段葛はメーンストリートである若宮大路の中央部に築かれた高さ約1・2メートルの土塁上に敷設されており、現在は同大路に下りるための出入り口が36カ所設置されているが、歩行者の安全確保のため整備後は大幅に減少する見込みだ。鎌倉彫会館と目と鼻の先にある反対側の鎌倉彫慶には通路が遮断されていて鳥居まで戻り、大回りをして店に行かなければならない。そうでなくても慢性的な混雑ポイントのこの界隈は、工事でさらに混雑することが予想される。来年の初詣も今年同様歩道が人であふれることになるようだ。

報道によると、その改修工事は11月4日から始まった。老朽化の目立つ参道を補強し史跡としての風致・遺構を保全するとともに、参拝者と車両の安全確保、桜並木の回復と育成が主な目的で、期間中は高さ3mの仮囲いで遮蔽され、工事が終わる2016年3月まで通行できない。
改修により左右の堤をコンクリート擁壁の上に石積みする構造として、積石のたるみや崩落を防止するほか、踏み固めで桜の根を傷めないよう、参道の下に貯留槽と基盤材を埋設する。また試掘調査で発見された土層を保護するため、南側に向かって厚くなるように参道路面の「かさ上げ」を行う。東西への横断が可能な「開口部」に関しては、これまでの36カ所より少なくなる見込みだ。
また 現在植えられている桜は、専門家が「育成が期待できる」と鑑定したものを平家池周辺に移植し、そのほかは伐採する。改修後は、種類や樹齢など可能な限り統一した桜を新たに植え、育成に適した樹間を確保するため従来(248本)より少ない180本程度となる予定。つつじ類は全て同宮の境内と、交流のある東日本大震災の被災地に移植する方針だ。

若宮大路の中央部に位置する段葛は、鎌倉時代に源頼朝が政子の懐妊と安産への願いを込めて鶴岡八幡宮から由比ガ浜にかけて、頼朝が築いた。幅4~5メートル、長さ約500メートルの参道で、何も植えられていない段葛に松や梅が植えられたのが明治のことで、桜が植えられたのは1918年(大正7年)頃のことだったと言われている。 その後石垣を。昭和30年代には玉石が積まれ、それを覆うようにツツジが植えられた。思えば親父の年が大正7年生まれで、ほぼ同じの97歳である。
ここの桜はソメイヨシノでこの桜は江戸時代に染井という植木屋が、江戸彼岸桜と大島桜を掛け合わせて作った新種の桜である。 山桜や他の桜と違って成長も早いので、あっという間に全国に広まった。その代わりに寿命は100年といわれており、手入れが行き届いてないと60年とも言われている。老木が朽ち果てる前に新しい見頃の桜を植樹する予定であるが、上の画像は大正7年の段葛と昨年までの老木が咲き誇っている段葛と今年の段葛である。

樹木に限らず生きとし生けるものはいずれ寿命が来る。天命とは言え我が家の老木も100歳を目指して目下奮闘中である。

2015年5月7日木曜日

顔について


2月初めに退院してから、顎の術後経過は日毎徐々に良くなっている。現代医学の最先端技術で元の顔に戻りつつあるが、外見は凝視しないとわからない傷が、右下顎の周りを覆っている。術前には他の患者の顔の修復写真を見ていたので、期待どおりのダメージの少ない外見に安ど感はあったのだが、いかんせん食事の際の食べにくさと、喋りにくさには閉口している。
自分の肩の骨と肉を顎に移植したのだから、口腔内が狭くつっかえ棒をしているようで、四六時中違和感は消えないのだ。物を噛むときは残った左顎と歯を使い、右顎は左顎に連動して動かされているだけなので、長時間の咀嚼は顎がだるくなってくる。喋ると滑舌の悪さも気になるが、やむを得ないとあきらめている。
顔の外見が崩れていないだけでも良しとしなければならない。阿部公房の小説「他人の顔」ではないが、ひどい火傷を顔に負い、他者との通路を得るために仮面を作った主人公の心の葛藤までには至らないが、容貌が一変するほどのダメージを負った場合は、この小説はリアリティーを帯びてくる。ことそれほどに顔の人間存在に占める比重は大きいのである。

第一印象という言葉があるが、もし言葉を交わさないのであれば第一印象なんて言葉は顔の印象を言っているに過ぎないのではないか。人はまず顔を見てその人間がどういう人間か判断するのだ。顔はたんなる物体ではない。観察者の記憶や経験や先入観やそのときどきの感情によって、相手の顔にはおどろくばかりに多彩なバイアス(偏見や歪み)が加えられる。見る側の内側から身勝手な投影がなされ、ときには別人のイメージと重ね合わされ、その結果として顔は事実上の変形と加工を受けるだろう。いっぽう見られる側も、相手を欺こうとすることがあるから厄介だ。
本心とはまったく別の表情を浮かべたり、演技によって顔の雰囲気をコントロールしようとする。人間が他人の価値を判断するとき容姿にどれだけ依存しているか、という危うさはつきまとう。


画面右がプロフィール

これらの顔の特性は、遺伝的なつながり、進化的に準備された学習、各文化に特有の学習をつうじてさまざまな属性をあらわす。性別、人種、アイデンティティーといった変化しない個人的属性、感情という急速に変化する属性、さらに年齢と身体的なゆっくり変化する属性などの相互作用で表情が出来上がる。人は相手を知ろうと会話を望み、自己を表現するために会話を発する。他者のまなざしの前では、ショーペンハウエルの言葉を借りれば「一般的に顔は舌よりも多くのことを語る…」ことになる。
同時にこのことは、顔は、他人の目の判断によつて、自と他と区別する大切な表徴であり、表層と内面は絶えず揺れ動いている。
そんな顔であるが、顔には否が応でもその人の生き様が刻まれていく。人の顔とは、その人物の人生そのものである。だから若い時に、いい顔をしていた人物が、年を経て妖怪顔になったり、若い時は、普通の顔 だった人物が、中年になっていい顔になるということは、よくあることだ。
だからよく言われる「人間40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」という言葉は「自分の人生とちゃんと向き合え」という意味で、リンカーン元アメリカ合衆国大統領の言葉でもある。
日本でも 「男の顔は履歴書だ」と云ったのは、故・大宅壮一(ジャーナリスト)である。男女を問わず経年による劣化とともに知らず知らずのうちに変貌を遂げていくのはいたしかたないことだが、年相応の年輪の入り方がある。
フランス語でプロフィールという言葉があるが、一般的には略歴と解釈されるが、横顔という意味もある。人間を正面から見ると、他者のまなざしの前で繕った顔が浮かび上がる。横顔は他者のまなざしを意識しない素の顔でもある。ある人物を見た場合、正面から見た顔と横から見た顔に内面的な違和感と落差を感じた場合、その人物の本質的な部分を横顔で知ることになる。誰しもいろんな顔を持っている以上、表層と内面の葛藤は続くものである。