2013年3月30日土曜日

吠える北朝鮮


北朝鮮の3代目が牙を剥いている。
報道によると、北朝鮮の軍最高司令部は26日、米本土や韓国、ハワイなどにある米軍基地へのミサイル攻撃を示唆しつつ、戦略ロケット軍部隊などを「1号戦闘勤務態勢に突入させる」という声明を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。核実験強行などで国際的孤立が深まる中、事態打開を図るために緊張を高めようという「瀬戸際戦術」の可能性が高いが、米韓など関係国は北朝鮮軍の動きへの警戒を強めている。

北朝鮮は最近、朝鮮戦争休戦協定の「全面白紙化」や南北不可侵合意の「全面破棄」を表明するなど、緊張をあおる言葉をエスカレートさせている。今回の声明は、米本土へのミサイル攻撃を示唆することで、米国をさらに刺激することを狙っているようだ。日本や韓国、米国に対して「核戦争」をちらつかせ、緊張をあおっている。「全面戦争に向けて軍の準備はできている」「日本も核の先制攻撃の例外ではない」「最終決戦の時が来た」などと言明したり、韓国のテレビ局や金融機関に対する大規模なサイバー攻撃を仕掛けたり、めまぐるしい動きをしめしている。


北朝鮮軍は21日、国営朝鮮中央通信を通じ、在日米軍基地攻撃の可能性を示唆した。
前日の20日に北朝鮮は、米韓が韓国で実施している合同軍事演習に米軍のB52戦略爆撃機が参加していることについて「許しがたい挑発行為」と非難し、B52の演習参加が続くならば軍事行動も辞さないと警告していた。また北朝鮮は22日、韓国・ソウル(Seoul)に北朝鮮軍の空挺部隊を降下させ、韓国に住む「15万人の米国人を人質に取る」という軍事シナリオを描いたプロパガンダ動画を公開した。

核兵器開発にともなう昨今の実験強行などで、国連の制裁をうけた北朝鮮は,自国を取り囲む米韓の動きに神経を尖らせ、国際社会を敵に回し兵糧攻めにあっている最中、頼みの中国も2月の時点で北朝鮮向けの原油を止めたり、中国に開設している北朝鮮の銀行2行の口座凍結もしたようだ。もともと中国の言うこともあまり聞かない北の暴れん坊は中国からしっぺ返しを食らった手負いの犬状態である。
「ほえる犬は噛まない」とは言うものの、ABC包囲網に追い込まれ、無謀にも連合国と戦った我が国の状況とよく似ているのは不気味でもある。
3代目の暴発で第2次朝鮮戦争が起こる可能性はないとは言えないが、先の朝鮮戦争のように旧ソ連と中国を相手にしたアメリカの代理戦争にはならないと思う。米中ともにまともに戦争するほど馬鹿ではないのだから。核という兵器は牽制にはなるが有事の時には、そう簡単に使える武器ではない。そのことは核当事国が一番分かっているはずだ。
そのことから仮に北朝鮮が韓国に南下しても、米韓連携で北の核施設を爆破すれば短期決着になるだろう。問題は朝鮮戦争云々よりも北朝鮮の体制が崩壊したときの事態を想定したほうがよさそうだ。体制崩壊は近い!

2013年3月14日木曜日

劣化する中国社会


中国問題評論家 石平著の「これが中国33のツボ」のなかで、歴代王朝が勃興と滅亡を繰り返すたびに、長い動乱と内戦の結果、社会規範や伝統がゼロにリセットされていく中国社会は、進化の欠如 と社会の仕組みの不変(最初の王朝秦王朝と最後の王朝清王朝まで単調な反復が続くという中国史の特徴)が指摘されている。

1966年から10年間続いた毛沢東による文化大革命において中国の伝統文化が破壊された。文化人の抹殺とマルクス主義の徹底化によって文化喪失。またマルクス主義に基づいて宗教が徹底的に否定され、教会寺院・宗教的な文化財が破壊された。特にチベットではその影響が大きく、仏像が溶かされたり僧侶が投獄・殺害されたりした。中国全土で文革によって粛清された人民は裏の数字をいれると4000万人はくだらないとも言われているが、正確な数字は未だ不明である

その後時代は移り、鄧小平による経済拡大路線によって共産主義と資本主義の折衷政策のもと、拝金主義や規範崩壊と倫理観の欠如が顕著になった。さらには 極端な格差社会が進み、人心の荒廃と人間精神の砂漠化が進んでいく。中国の官僚社会の地位と出世は金で買われているから、小役人から上へと賄賂の金が動くため、あらゆる局面で汚職が万延している。

特権階級や官僚などは、経済発展優先で環境問題は眼中にない。地方幹部はGDPが高ければ高い位置に就ける。環境や庶民の命はないがしろにされ、汚染企業が多ければ多いほど、GDPが高くなり、幹部の業績も評価され、昇進も速い。また、企業の汚染がひどければひどいほど、企業からもらう賄賂額も高くなり、ポケットが膨らみ、海外にいる子供の生活も潤う。さらに、出世が速ければ速いほど、地元から早く脱出でき、汚染地帯にいる期間も短くて済む仕組みになっているようだ。
賄賂絡みの手抜き工事の結果(マンションと高速道路)

 
●人権という概念のない国

世界一の死刑大国、中国。犯罪はもちろんキリスト教やチベット仏教を無許可で布教しただけで死刑になる。そして法輪功学習者の場合は、なんと生きたまま臓器を取り出される肝抜きの死刑が執行されているようだ。 中国で死刑が多い最大の理由は、仕入がタダで、臓器売買でボロ儲けの国家事業で、外国人から莫大な外貨を稼いでいるとも言われている。それも臓器を傷つけないために頭部銃殺の処刑が大半である。ネットではおぞましい画像が氾濫していて正視に耐えない 。倫理観の欠如したこの国民性は,インフラ工事や、一般建築においても、手抜き工事があとを絶たない。知的財産権のパクリ、個人財産の強制的な収奪は朝飯前の無法国家からはじき出された人民たちは中国共産党の最大の犠牲者でもある。
 
湖北省潜江市の水道取水口

 死刑とともに多いのが国民病の癌である。中国各地にある4百箇所以上の「がん村」(がんの発病率が異常に高い村のこと)。その村民たちはまさに水汚染の犠牲者である。1997年以来、ガンは中国人の死因の第1位となっており、毎年130万人がガンで死亡している。いずれの村も汚染された河川流域に住んでいる住民だ。汚染の深刻なのは川だけにとどまらない。

最近当局は、「全国97%の地下水が汚染され、約64%の都市地下水の汚染は非常に深刻だ」と発表したが、大紀元日本によると、環境経済学者で中国人民大学環境学院の馬中院長は、、年間160億トンの工業排水(汚水)が処理されず、地下に排出されていると明かした。予想以上に速い速度で人民の水瓶である地下水も汚染が進んでいる。
がん村の子供
 
ここにきて中国当局は初めて国民への健康被害を認め、環境汚染が原因でのがん発症率が高い「がん村」は、全国で247カ所あると発表した。専門家は、実際の数はこれよりもっと多いと指摘。また、最近では中国の9割の地下水が汚染され、うち6割は重度に汚染されているという中国地質調査局の専門家の話も話題になった。新華網が118都市の地下水を調査したところ、64%の都市の地下水がひどく汚染され、ほぼ正常なのは3%しかないとも報じている。まさに中国ではまともな飲料水にありつけるのは限られた人間しかいない状況である。
もはや回復不能の手遅れ状態で人民は悲鳴を上げている。

 

また野放図の汚染は大地にも広がり、中国の耕地の約10%が重金属に汚染されている可能性が高く、なかでも南の地域が比較的汚染が深刻だという。土壌の汚染は主に重金属、農薬、有機化合物によるものである。今の中国では、最も深刻なのはカドミウム、ヒ素、クロム、鉛などによる重金属汚染であり、その半数以上は工業廃棄物質として排出されている。汚染された土壌で作られた毒野菜,毒米は中国人も食べないから、闇に紛れて流通しているのだろう。このように天からは公害スモッグPM2.5が降り注ぎ、地からは生存に欠かせない水と恵の食物が奪われたこの大地に生息している中国人民は、自然環境からは見放され、中央政権からは見放され、包摂性のない社会で一般民衆の人身が荒廃していくのは中国の歴史の必然でもある。

中国の高度経済成長を支えてきた不動産投資と企業による設備投資、供給過剰の生産性がもたらしたこれら多くの負の代償は、あまりにも大きい。 社会保障の欠如(国民の85%以上が無保険)と中産階級の不在による内需の停滞の偏った経済発展が、不動産バブルと株のバブルを膨らませていく。一方で失業大国 として都市部で毎年1200万、農村部で余剰労働力1億2千万人を抱えている。潜在的な不満分子がおこした大小の暴動は年間9万件を越して、共産党体制の崩壊の危機は年々迫っているため、党幹部や高級官僚の資産や家族などの海外流出が絶え間なく起こっている。崩壊に備えての逃亡の段取りを図っているとも言われている。こんな国に未来はあるのだろうか?

2013年3月7日木曜日

アートな話「芸術とパトロン」


現在神奈川県立歴史博物館で鎌倉彫の特別展が3月23日まで開催されている。鎌倉彫の歴史的な流れが展示作品や資料によって理解を深める構成になっており、鎌倉の移り変わりや鎌倉ゆかりの文化人と鎌倉彫の接点も紹介しており、見ごたえのある展覧会だった。 

さて近代鎌倉彫に関連して時代背景をたどれば、明治元年(1868)明治政府は神道を国家統合の基幹にしようと意図した。一部の国学者主導のもと、仏教は外来の宗教であるとして、それまでさまざまな特権を持っていた仏教勢力の財産や地位を剥奪した。僧侶の下に置かれていた神官の一部には、「廃仏毀釈」運動を起こし、寺院を破壊し、土地を接収する者もいた。また、僧侶の中には神官や兵士となる者や、寺院の土地や宝物を売り逃げていく者もいた。
神仏分離令や大教宣布は神道と仏教の分離が目的であり、仏教排斥を意図したものではなかったが、結果として廃仏毀釈運動(廃仏運動)とも呼ばれる民間の運動を引き起こしてしまった。神仏習合の廃止、仏像の神体としての使用禁止、神社から仏教的要素の払拭などが行われた。祭神の決定、寺院の廃合、僧侶の神職への転向、仏像・仏具の破壊、仏事の禁止などを急激に実施したために混乱した。明治4年(1871年)ごろ終熄した(ウィキペディア)


神仏分離令が発令され、廃仏毀釈運動により寺の衰退が進み、従来の寺の仕事(造仏、寺の装飾、調度品など)を生業としていた仏師は大きなパトロンを失うことになる。そしてそれらの仏師たちが活路を見出したのがそれらの技術を生かした鎌倉仏師の後藤、三橋両家が始めた日用品や茶道具としての鎌倉彫であった。そしてその鎌倉彫は皇族や一部資産家らの特権階級から手を離れ、戦後の高度成長に支えられた中産階級に普及し、身近な工芸品として今日に至っている。

古今東西、画家や彫刻家は時の権力者である宮廷のお抱えで生計を立てていた。わが国では絵画や工芸品(襖絵、蒔絵など)は時代を遡ること奈良や平安時代から貴族や時の権力者によって保護育成されていた。一方宗教的な関わりで言えば、寺の造仏や装飾を担っていたのが仏師たちである.
飛鳥時代から連綿と続く仏師は、朝鮮半島や中国大陸から来たお坊さん達で、仏像造りの技術を日本に伝えた。飛鳥時代の有名な仏師 止利仏師(鞍作止利)の祖父も中国からの渡来人である。
やがて 仏教により国を統一する鎮護国家を朝廷が目指したことから、仏師は国家プロジェクトの中心部に絡んでいた。さらに、当時の最先端の特殊な技術を駆使するため、地位や待遇が、他の工人より優遇されていた。やがてそれら渡来人の子孫や弟子から、運慶,快慶などの名工が誕生し仏教文化の担い手である彼らを支えていたのが多くの寺院であった。このように宗教と芸術は密接な関係に有り、それは西洋においても同じことが言える。

教王ユリウス2世      ロレンッオ・デ・メデチ

西洋における宗教画やキリストの像などを制作した芸術家のパトロンは教会であり中世のダ.ビンチ、ミケランジェロ、ラファエルロなどの宮廷人芸術家たちは教皇ユリウスの庇護の下、旺盛な芸術活動を展開していた。15世紀のフィレンツエでは教会堂の装飾や祭壇画の制作(宗教芸術)が、その後資本主義の発達とともに勃興してきたメデチ家(商人や銀行家)などによって支えられてきた。王侯貴族や教会がパトロンであったルネサンスから、市民階級が展覧会に出品される作品の「買い手」として新しいパトロンとなる19世紀をへて、現代は宗教的な背景はなくなり、多様化するパトロン活動が政府や地方自治体の公的資金を用いて、芸術活動支援があらゆるアートで展開しているが、都市の公共空間を芸術作品で飾り、一般市民が日常生活の中で芸術に接する環境を創り出す、いわば美術館や画廊から芸術が街に出て行った状況をパブリックアートが作り出している。

2013年3月3日日曜日

錬金術は止まらない

瀬戸際の米国経済
記者会見するオバマ大統領

米国経済もいよいよケツに火がついてきた様相である。
米国は3月1日、連邦政府の全分野における一律的な歳出削減を開始した。与野党の歳出削減目標分野をめぐって、社会保障費か防衛費かで大きく対立し、その対立が解消されないまま、けんか両成敗として、オバマ大統領は一律強制削減を発令した。
最近報道されている財政の崖とは、財政再建を進めるための「実質増税」と「歳出削減」が、年末年始に集中するために景気が失速しかねなかった事態のことだ。
アメリカは、国債発行に歯止めがきかなくなることを回避するため、国債の発行に上限を設けている。米国は債務上限を規定している世界で唯一の国である。上限引き上げのために採決をしなくてはならないのは、野放図に借金をしないためのチェック機能であり、債務上限を引き上げるには政府の歳出を減らさなくてはいけないという法律があり、現在の債務上限額は、2011年8月に引き上げられ、16兆3940億ドル(1ドル90円換算で約1、475兆円)となっている。それも限度額越えを目前にして、米上院は連邦債務の上限を5月19日まで暫定的に引き上げる法案を可決しており、そのためには今回のような強制的な歳出削減を実施する必要があるわけだ。いずれにしても問題は先送りされ絶対返済不能な額である。また今回の強制削減発動による影響も景気、雇用、防衛、安全、福祉の機能低下など取りざたされている。リーマンショック以降、すでに財政破綻は州政府カリフォルニア州から始まっている。米財務省は、5月19日までに連邦債務の法定上限問題が解決していなければ、再び緊急措置を講じる可能性があるとの考えを示した。
 米政府の財政赤字は2001年の911以後、テロ戦争を口実にしたブッシュ政権の財政の大盤振る舞いによって増え続け、08年のリーマン危機後に公的資金で景気テコ入れ策をやったため、赤字増に拍車がかかった。当時、オバマ大統領と米議会は赤字削減の必要性で合意したものの、どの分野の歳出を削るかで対立を解消できないまま交渉期限の11年夏がすぎ、11年8月にS&Pが米国債を格下げした。

米国議会の政策や財政に影響を及ぼす勢力にロビイストが存在する。政府や有力議員たちを動かすロビイスト勢力には大きく分けて2つあり、一つは民間の金融界や産業界で金儲けに走るグループである。もう一つは 濡れ手に粟で軍事費から膨大な利潤を得ようとしている軍産複合体グループである。最近準備されている「新ドル発行とデノミ」戦略は前者の目論見で、後者はそうした戦略の実行は後回しにして、目先にぶら下がった戦争による利益獲得を優先する目論見が垣間見れる。その戦争の第一候補は言うまでもなく、イスラエル対イラク、イスラエル対パレスティナである。どちらも表面は平穏を保っているように見えるが、シリア情勢の進み方次第ではいつどうなってもおかしくない状況にある。


新ドル紙幣
紙幣発行権を持つ中央銀行(FRB)は同時に世界の基軸通貨ドルを意のままに発行している特別な銀行だ。。FRBはニューヨーク連邦準備銀行が支配しており、ユダヤ系の民間銀行の面々が6割以上の株式を保有している。ドル紙幣は正式には連邦準備券と呼ばれ、それはFRBに対する債務を意味する。財政赤字の解消にねずみ講のように国債を発行してはドルを乱発している。政権内部も金融界も全人口の2%に過ぎないユダヤ人が牛耳っている。それらを動かしているのはイギリスやフランスにいるロスチャイルドの支配者であるから根は深い。歴史を遡れば、世界の金融システムを発明したユダヤ人の高利貸しから出発したロスチャイルドは闇の支配者と呼ばれる所以である。彼らからすればオバマも一使用人に過ぎない。

A.アロマティコ(錬金術)
錬金術

血の一滴は、金の一滴で知られるシェークスピアの「ベニスの商人」に出てくる悪役のユダヤ人シャイロックに象徴されるように、中世ヨーロッパでは多くのユダヤ人が高利貸しを生業としていた。他人に貸した金から利子をとることはキリスト教が禁止していたため、それに手を染めるユダヤ人は欲深い罪人というイメージを持たれていた。しかし、ユダヤ教は例外として異教徒(外国人)から利子をとることは許していた。
「聖地争奪戦:一神教の近親憎悪 」によると、そのため11世紀に、バチカンのキリスト教会がユダヤ人をほとんどの職業から追放した後、ユダヤ人にとって数少ない収入源として残ったのが、高利貸し(質屋)や金塊の保管人、両替商(貿易決済業)など、利子を取り扱うことが多い金融業であった。教会という中世ヨーロッパの支配者が、ユダヤ人をそのような立場に追い込んだ理由は、社会の共通の敵を設定することで、自らの権力を安定させるためだったと思われる。とはいえ、すべてのユダヤ人が金融業者だったわけではない。中世から近代にかけて、ユダヤ人は東欧に多かったが、彼らのほとんどは職人か行商人、もしくは貧しい農民だった。

中世には、弾圧を受けたユダヤ人の移住が何回も起きた。11世紀には、十字軍やイスラム帝国分裂の影響で弾圧された中東のユダヤ人が、ベネチア(ベニス)などに移住した。15世紀には、スペインでキリスト教王国がイスラム王国を倒したことにともなってイスラム王国に協力したユダヤ人への弾圧が強まり、ユダヤ人は全員がキリスト教徒に改宗するか追放されるかの選択を迫られ、多くが北アフリカやトルコ、ベネチアなど地中海沿岸の商業都市に移住した。
このような移住は、たとえば以前にスペインの金融業界に属していたユダヤ人金融家が、トルコやベネチアに信頼できる同業者がいるという状況を生んだ。彼らはこの離散状態を生かし、遠い町との貿易決済業にたずさわるようになり、為替技術を発達させた。さらに彼らは、貿易商人から毎月いくらかの積立金を徴収し、船が海賊や遭難の被害にあったときの損失を肩代わりするという保険業や、事業のリスクを多人数で分散する株式や債券の考え方を生み出した。

 一方、中世にはユダヤ人だと分かっただけで財産を没収されることがあったので、ユダヤ人にとって自らの名前を書かねばならない記名型の証券は安全ではなかった。そのためユダヤ人の金融業者たちは、無記名の証券(銀行券)を発行・流通させる銀行をヨーロッパ各地で運営していた。この技術は、やがてヨーロッパ諸国が中央銀行を作り、紙幣を発行する際に応用された。
 ヨーロッパ各国政府のなかで、最もユダヤ人に寛容なのはイギリスであった。イギリスは政教分離や国家の近代化、産業革命が大陸諸国よりも早く、ユダヤ人を重用することの利益が明確だったからだろう。
この時代に民間資本家として、イギリスの国家運営に最も影響を及ぼしたユダヤ人は、ロスチャイルド家の人々であった。この一族は、もともとドイツ・フランクフルトのゲットーにいた高利貸しだったが、1793年に始まったナポレオン戦争の後、ヨーロッパで多発するようになった国家間戦争のための資金調達をあちこちの政府から引き受けることで、急速に力をつけた。 一族のうちの一人は1797年、産業革命が始まっていたイギリスに進出し、綿花産業への資本提供やドイツなどへの販路拡大を引き受けて大成功し、イギリス政府に食い込んで資金調達を手伝うようになった。

 ロスチャイルド家がたどった歴史の詳細は、よく分かっていない。彼らは他のユダヤ人資本家と同様、自分たちに関する情報が広がって反ユダヤ弾圧に使われることを恐れ、亡くなった家族の日記や手紙、メモなど一切の記録を焼いてしまうような情報管理を行っていたためである。実態が分からないので、仕方なく反ユダヤの人々は「陰謀家」のレッテルを一族に貼り、マイナスのイメージを語り継ぐようになった。 ロスチャイルドは、稼いだ金をふんだんに使って慈善事業を展開することでも知られていた。その事業の一つに、19世紀末に帝政ロシア政府が国内のユダヤ人に対する激しい弾圧を展開し、多くのユダヤ人がロシアを逃げ出したとき、彼らを後に「イスラエル」となるパレスチナに移民させ、資金を出して集団農業を作ったことがある。この事業こそ、イスラエルの建国とパレスチナ問題の発生につながる最初の起源であった。

13世紀からのベネチア=東方貿易での重商主義  : 国際貿易では、金のみが信用できるマネーだった。金匠は金への交換要求が10%しかないことに気がついた時から10%の準備率の概念が発生した。 金の預かりを証明する証券  預かった金の9倍を、追加の金証券として、金が不足する貴族・商人に貸し付け金利(10%の金準備率)をとった。
これが、金証券が、つぎの金証券を生む紙幣(元は、金の保有証書)の、発生の始まりだった。この紙幣発行の構造を、現代の中央銀行システム(=準備銀行)が引き継いでいる。 この無から生じた信用で全欧の富を集めたメディチ家やデル・バンコ銀行家になっていた金匠達は、20世紀は、世界の中央銀行の株主(BOEやFRBなど)になった。米国では、ロックフェラーとロスチャイルド :欧州ではロスチャイルドやデルバンコ である。しかし金の兌換券(紙幣)の金交換を放棄したのは、ほかならぬアメリカ(1971年のニクソンショック)だった。     
                                  (ロスチャイルドの歴史)

  無形の信用を背景にした紙幣発行は合法的な偽札でもある。