2014年7月28日月曜日

煙 考


私は30後半まで喫煙していたが、医者の勧めもあって以後今日まで禁煙している。その間たまにそのアロマ(芳香)を思い出し時々忘れたころに吸ったこともあった。そのアロマと瞑想の誘惑に駆られる煙草も、タバコのみにとっては至福の嗜好なのであろう。健康問題が取りざたされている昨今では、嫌煙権も拡大して禁煙ゾーンが増え喫煙人口も減少している。煙の出すアロマはなぜか精神性を醸しだし、人々はその魅力に取りつかれる。これものカテゴリーに入るのだろう。

古今東西、にまつわる歴史は多くあり、 日本では香をたく習慣は飛鳥時代の仏教伝来と共に始まり、をたくことで、身の穢れを取り除き、仏の功徳を受けられるという思想から盛んに行われた。そして宗教儀式に用いられた香は、平安時代になると、 仏教行事以外でも、貴族達が生活を楽しむために愛用されるようになり、香を衣服・頭髪・部屋などにたきこめる「空薫物」(そらたきもの)の風習が生まれ、やがて、衣服に独特の香りをたきこめることで、自分の存在を示すようになる。 貴族は日常的に自分の着物に香をたきしめ、また香合わせという遊びもあった。
  

鎌倉彫香合 吉川喜久次
室町時代には、仏教上の行事であった香を茶道にも取り入れ、書院の床の正面に香炉を飾って香をたくようになった。この頃は周囲の環境をよくする為の香炉の脇役として香を入れる容器として香合は存在した。香合は鎌倉彫でもよく作られるもので、仏具のほか茶道具としても利用されている。左は私の親父の作品である。
 草庵の茶道が流行するにつれて、香合は侘び茶を盛り立て、茶道と香の関係は深い。炭点前の際に香をたき、部屋と精神を清める役割を持つお香は。点前に欠かせない重要なものとなっていった。




脱法ハーブと原材料
さて、がらみの話になるが、報道によると最近問題になっている脱法ドラッグを販売している店舗が、今年3月現在少なくとも全国252カ所に上っていることが厚生労働省の調べで分かった。背景には「脱法ドラッグ」を使ったことがある人が全国で約40万人に上ると、厚生労働省研究班が初の全国調査で推計した。 またこれらの供給元である店頭やインターネットで脱法ドラッグを販売している業者は、全国で240件(平成25年9月現在都道府県報告)あるそうだ。
脱法ドラッグを使用した後に体調不良を訴え、全国60カ所の医療施設に救急搬送された患者が平成24年に469人となり、前年の48人から約10倍増した.脱法ドラッグは、安く簡単に入手できることや、「合法ハーブ」「合法アロマ」などと呼んで抵抗感をなくしていることなどから、軽い気持ちで手を出す人が少なくない。

脱法ドラッグは、覚醒剤などの規制薬物と似た作用をもつ化学物質が含まれていて、法律による規制の網の目をかいくぐる新たな物質が次々と登場しているようだ。覚醒剤などの規制薬物はこれまでの研究から、心身に及ぼす悪影響などが分かっているが、脱法ドラッグは原料に何が含まれているのか、また、身体にどのような悪影響を及ぼすかよく分からないため、より危険な薬物であるとして危険ドラッグと改名された。

ウイキペディアによると、2004年には、ドイツ、イギリス、スイスで「スパイス」という製品が流通し、合法の大麻(偽大麻とも呼ばれている)とされ以来ヨーロッパで流通した。2008年末までにハーブ製品に配合されていた合成カンナビノイドが、法的管理下に置かれると、こういった化合物のファミリーである似たような化合物が配合された製品が流通した。最初ヨーロッパで発見された「スパイス」は、生産者が迅速に法律の変化に対応し、先進国における問題とされている。ドイツではじめてスパイス製品が違法化される以前は、好奇心で試す人が多かったが、以降は、大麻の代用品とする層が増え、軍人や患者、以前に薬物による運転事故によって受刑した人といった薬物検査が定期的に行われる人に需要がある。使用がドーピングテストでは検出できないので、カナダではアスリートと軍人に需要があるという。
現在のところ、脱法ハーブとは、危険ドラッグの一種で、合成カンナビノイドを含有する化合品であるとされている。毒性に関するデータは不明で、大麻よりも中毒性が高い可能性や、深刻な毒性がある可能性がある。合成カンナビノイドは、大麻よりも過剰摂取しやすい可能性がある。成分は一定せず、厳密なルールによる臨床治験を通していないので購入者が人体実験をしているようなものである。症状として多い順からあげると、頻脈  興奮 嘔吐 精神錯乱 悪心 幻覚・妄想 めまい などで事故を起こす前に救急搬送されるケースをが多い。


脱法ハーブ絡みの交通事故
脱法ハーブは、乾燥させたお茶などの食物の葉っぱに、幻覚作用を引き起こす人工的に合成された薬物を混ぜたもので、繁華街で、だれでも買える手軽さから専門店としてその数は増えている。またそこには、我が国では若者を中心にここ2~3年で使用者が増えている背景がある。ハーブとかお香と表示し、違法ではないと称して売られており、インターネットでも手に入れることが出来るようだ。その多くは煙草のように喫煙から始まり、やがてもっと刺激の強いものに走る薬の罠にかかっていくのだ。
現在全国的にこのハーブが元で悲惨な交通事故が多発しており、警察も脱法ドラッグから危険ドラッグに名称を変え、取り締まりを強化しているが,取り締まりの網からこぼれていく危険ドラッグの数は化学式の形を変えては増え続けているので、煙草好きな人はご用心。!

製造業者が海外(主に中国)からネットで原料を購入する際、薬物規制にかからないものを発注するので規制がかかるとまた少し違った化学式のものが製造されその数は数千となり、法の規制といたちごっこが止まらない
中には覚せい剤と非常によく似た化学式の成分や混合されたものも販売されており、毒性の強い非常に危険なものも出回って憂慮すべき状況になっている。
首都圏にある多くの販売店は、お香として売っており、吸引使用は禁止の注意書きは店内に見受けられるものの、使用方法はお香としてでなく大半は紙巻きタバコのように火をつけ吸引するので、買い手が後を絶たない。このため以前は指定薬物を製造したり販売をしたりすることだけが禁止されていたが、この4月から購入したり持つたり使ったりすることも禁止された。政策で国民を煙に巻いてきた政府も、ここにきて国が有害な煙に巻き込まれないよう動き出した。

2014年7月17日木曜日

アートな話「伝統産業」

伝統工芸品マーク

右は、ご存知の経済産業大臣が指定する伝統的工芸品マークであり、鎌倉彫もこの指定を受けている。国は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」1974年公布に基づき、全国の伝統工芸品210品目を指定しており、経済産業大臣が伝統的工芸品を指定する要件は、以下の5項目になっている。

1.主として日常生活の用に供されるものであること。
2.製造過程の主要部分が手工業的であること。
3.伝統的技術または技法によって製造されるものであること。
4 伝統的に使用されてきた原材料であること。
5.一定の地域で産地を形成していること。

さて、戦後高度経済成長を経て、伝統産業も経済成長とともに成長してきたが、バブルの崩壊から長期的な経済不況が始まり、現在まで一定の経済回復はあるものの、本格的な回復はしていない現況がある。このことは経済社会において、単なる経済不況に留まらないトレンド、すなわち経済のグローバル化、生活者のニーズの変化、新たな流通の仕組み、さらにITの発達などによって、経済の構造変化が進んでいることが、複合的にこの業界に影を落としている。
このような時代の流れのなかで、日本人の暮らしの価値観、精神性といったものが忘れ去られていきつつある今日において、「和」の暮らし、考え方、センスを今一度見直すためには、その担い手である伝統産業の持つ意味は大きい。
しかし、高度成長期が終わったころから、全国の伝統産業の規模の拡大が止まり、今日まで縮小の一途をたどっている。業種によっては絶滅危惧種のような地方の地場産業もあるが、後継者も育たない状況は大なり小なり各業界が抱えている問題である。

私が仕事をしている鎌倉彫業界は、お稽古産業という特殊な形態が鎌倉彫総生産の80%以上を占めていたため、急激な需要の落ち込みはなかったものの、年々会員数の減少化は進み、会員の高齢化なども影響し最盛期の半数を大幅に下回り、下げ止まりが見えない状況である。一方で伝統産業の宿命でもある生産性の低さと高い技術力とは裏腹に、大量生産された紛い物(市場で鎌倉彫風と称して流通している安価な臭い製品)も製造業としての鎌倉彫のイメージを悪くしている。良い作品を見て消費者が眼力を肥やすのは望ましいことだが、生産者も消費者のニーズに答えるよう、常に創造力を磨く努力は怠ってはいけないと思う。

ここにきて生産基盤である原材料の減衰や,経営者死去に伴う廃業などで、唯一残っていた鎌倉市内の木地製造業者もいなくなり、今後は鎌倉市以外の地域で、限られた業者に材料の調達と木地加工製造を委託することになるようだ。これも時代の趨勢かもしれないが、組合も手の打ちようがないのだから情けないかぎりである。
鎌倉市も地場産業の鎌倉彫に対する思い入れも厚いとは言えず、市の助成金も雀の涙ほどで、このまま伝統産業の看板が廃れていくのは関係者としては忍びない。唯一の地場産業である鎌倉彫を守り、その活性化を促すのが鎌倉市の使命だと思うのだが。果たして市にその気概があるのかどうか疑問である。

2014年7月5日土曜日

玉虫色が好きな日本人



玉虫(見方によってはいろいろな色に変化する)
これまで歴代の政府は、憲法9条のもとで「武力の行使」が許容されるのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られると考えてきた。しかし、米国の弱体化にともなう中国の台頭などによるパワーバランスの変化や、技術革新による武器の急速な広がりや、大量破壊兵器などの脅威等により我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、一国平和主義が立ち行かなくなった。

変化し続けている世界状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、状況によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得るとの認識から、安倍内閣は1日の閣議で、日本国憲法第9条の一定の要件を満たしている場合、集団的自衛権を行使することができるという内容の閣議決定をした。新たに憲法9条を憲法改正で明文化することを避け、憲法解釈という日本人好みの玉虫色の政治手段を選択したわけである。

現況では憲法改正の実現の可能性が低いことと、非常に時間がかかることから、ある意味これは日米同盟強化の便法になった。集団的自衛権行使容認に米国、欧州、オーストラリアなどは賛同しているが、中国は猛反発している。愚かにも同盟国韓国はこれに同調している。日本が玉虫ならば、韓国はイソップに出てくるコウモリであろう。朝鮮半島有事の際に誰が手を差し伸べるのか、このアホな国は同盟という意味が分かってないようだ。

米国発の憲法9条を保持することに、同盟国米国は異論を挿めない。日本にとっても、安倍首相が「閣議決定は日本と関係の深い国が攻撃を受け、日本に危険が及ぶと政府が判断すれば、必要最小限の集団的自衛権の行使が可能となる」と述べている。あくまで「日本に危険が及ぶ」ケースでしか行使はあり得ないとし、「外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行われない」と明言している。
現在、極東の安保情勢は中国の海洋進出と北朝鮮の核ミサイル開発でがらりと様変わりし、一国平和主義が通用する環境にないことを考えると、平和ボケから目覚めた国民の意識の根幹にあるのは戦争抑止である。そのためにも集団的自衛権行使は普通の国の大きな抑止力になりうる。
国内では賛否両論分かれているが、反対派は「日本が他国の戦争に巻き込まれる」と主張するが、国家主権がある以上、NOと言える局面は訪れる、それも玉虫色に変貌しながら。
なお、この閣議決定で、ただちに集団的自衛権が行使できるようになるわけではなく、国内法の整備と、国会の審議などを経て、実際の行使に当たっても、個別的自衛権の場合と同様、国会承認が待っているので少なくとも来年以降の話である。




 さて、憲法解釈とは対照的なのが、憲法に明文化される移民法改正案の成立である。現在ヨーロッパ各国では、多文化共生を謳い文句に大量移民を受け入れてきた結果、社会基盤や文化を崩壊させかねない勢いに危機感を募らせ、ドイツのメルケル首相が「移民政策は完全に失敗だった」、そして英国キャメロン首相が「移民受け入れという慈善は止めた」、さらにサルコジ・フランス前大統領が「移民の流入をこのままにして置く訳には行かない」と告白した経緯を見ると、移民政策の失敗が浮き彫りになってくる。唯一成功したのは歴史の浅いゼロベースの移民で成り立った米国と言えるだろう。

そんな折、国会議員は6月11日国会で「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」を成立させた。、内閣提出法案として5月29日たった1日の審議で、衆議院法務委員会全会一致で採決、31日衆議院、6月11日参議院で可決し、国民への周知もなく成立した。いうまでもなく少子高齢化対策としての禁じ手の切り札で、年間20万人を呼び込む目論見である。
主な改訂部分は、政府指定の「高度人材外国人」が、3年間の日本滞在で、無期限の永住が可能となり、欧州の失策を敢えて踏襲している。「永住許可取得後に両親や家事使用人の帯同が認められ」、「子供の養育名目で帯同出来る両親と子供が、本当の両親や子供では無くとも良い」という。1人の高度人材外国人が日本移住認可を得ると、本人が招聘する家族以外の、例えば家政婦、両親名目で誰でも移民出来るのだ。一応高度人材の確保としながらも、低賃金の移民を安易に受け入れ、労働力不足を解消する手立てであることは明らかである。報道も法案の経緯や成立についてもほとんど解説していないのが不思議である。
日本を取り囲む特に中国や韓国などは、自国から逃げ出したい輩が国民の半数以上いる中で、安易な審査で、世界各国で問題を起こしているこれらの国の移民は永住権を得た途端、当然の権利として地方参政権を要求し、本国の分子となって反日の日本を蝕む芽となりうる。同一性の強い日本人社会ではヨーロッパの国難よりも深刻になる公算大である。災いの芽は増やしてはならない。