2013年2月23日土曜日

金が仇のこの世



厚労省は日本人に多い胃癌がピロリ菌の感染によって引き起こされる割合が高いので、今まで保険対象外だった除菌治療を健康保険の適用範囲に入れることになったそうだ。ただし慢性胃炎の症状がなければ検査は実費のようだ。
最近かかりつけの医者にピロリ菌の検査を聞いてみたたら保険がきかず、数万円かかると言われ、症状もないのに検査の必要はないと言われたことを思い出した。というのも年1回の胃カメラ検査がどうにも嫌で、ピロリ菌の検査をして、いないことが分かれば胃がんのリスクはかなり低いので、胃カメラも飲まなくて済むだろうと安易に思っただけである。
最近はがん治療に関して、日本の多くの医者はすぐに患部を切除したがるが、欧米では放射線治療が主流で、最先端の陽子線治療では、放射線よりも安全に患部のがん細胞だけを照射でき、周りの正常な細胞組織を傷つけたりしないようだ。ただしこの陽子線治療は保険適用外で、完治するのに約280万円以上かかるらしい。

交通事故にせよ、重篤な病にせよ、巷では体中に輸血ルート、気道チューブ、動脈ライン、などのチューブやセンサーを取り付けられた重症患者のことをスパゲティー症候群と呼ぶそうだが、本人は意識がなく死を待っている末期治療にも、一日あたり数十万円もの医療費がかかるそうな。
また自力で食事もできず寝たきりの床ずれ患者も、硬直した体に、直接胃にパイプラインを引いて液状の流動食を流してもらっている、いわゆる胃籠(いろう)患者も介護の世界では増えているようだ。このようなお世話にはなりたくないが、私も介護保険料はきっちり取られている。

国も加速化する高齢者の医療費増大にあの手この手を考えているようだ。まして例外無き関税撤廃と医療分野への進出を図るアメリカ主導のTPPに加盟すれば、国民皆保険制度の崩壊につながる可能性を医療関係者は危惧している。
TPPで公的または民間の保険による混合診療が解禁になると、高度な医療は自由診療となり民間の保険でカバーされるようになる。公的保険制度はなくならないまでも、民間保険が進出して自由診療が広がると、財政破たんしている公的保険はその適用範囲をどんどん狭めていく懸念がでてくる。
混合診療となると公的保険でカバーしなくてもよい言い訳ができ、国民は民間の保険料も支払うこととなるので負担が高くなる。民間の保険料が払えない人は高度医療を受けることができないという事態になる可能性が出てくる。(交通事故を例に取れば任意保険に入っていて自賠責保険はほとんど使われないケースなど)
 現在の公的保険での診療報酬は保険の財政が破たんしているから、世界の中でも極端に低く抑えられている。特に命にかかわる高度医療は極端に低額であるため、多くの基幹病院は赤字のようだ。そのために民間の保険会社が参入した場合は医療費は世界基準に跳ね上がり、治療を受ける側は金持ちは命が助かり、貧乏人は命が持たないことになる。


TPPに反対しているのは医師会(開業医の団体)で、医療費が高くなると、薬局で買うよりも安いからといって、風邪薬や湿布をもらいに来るような軽症者は医療機関に来なくなるから軽症者をみる開業医は死活問題であるが、しかし勤務医は診療報酬が世界基準になるので、正当な報酬を得ることから医師はこぞって自由診療に走ることで賛成しているようだ。
公的保険しかない人たちはアメリカの医療のように後回しにされたり診療を受けられなくなる。救急の受け入れも保険次第となるから、民間保険がないと現在よりもたらいまわしが増えるので、したがって無理してでも民間の保険に入らざるを得なくなるという具合になる。日本にはびこっている米国の保険会社にとっては、目の前にぶら下がっている人参のようなものだ。営利事業が相容れない医療の世界が外圧で様変わりする日は近い。

現在 厚労省は皆保険を守りたい意向はあっても、財務省は財政赤字を減らすために混合診療にして公的保険の範囲を狭くしたいと考えている。
世界に誇る国民皆保険制度は内部からも外部(外圧)からも崩壊の兆しが見えてくる。それは、全ての国民に健康な生活を保障した輝かしい憲法25条も風前の灯になることを意味している。一番割を食うのは医療難民となっていく国民で、米国にTPPの交渉に行っている安倍首相の舵取りやいかに。
 

2013年2月5日火曜日

天に唾を吐くもの

スモッグにまみれた北京市内


報道によると、 中国の有害物質を含んだ濃霧が深刻化しており、中国北部の長春、瀋陽から、南部の珠江デルタまで、東部の済南から、西部の西安まで日本の国土の3倍以上に当たる約130万平方キロを包み込んでいる。被害面積は中国全土のおよそ7分の1であるが人口密集地域であるため、被害人口はおよそ8億人に及 ぶというから大変である。所によっては、肺がんやぜんそくを引き起こす微小粒子物質PM2.5が、世界保健機関(WHO)の基準値の20倍も含まれていた。

汚染地図

同期間中、大気汚染の主要原因となっている車の排ガスなどに含まれる微小粒子状物質「PM2.5」の平均濃度は、354マイクログラム/立方メートル。前日の同期間に比べて、明らかに悪化したという。 北京市気象台の統計によると、29日の時点で、1月のうち濃霧が発生した日は24日間に上り、同期では1954年以来最多を記録した。粗悪石炭使用の工場や家庭からの煤煙、粉塵も加わりその環境は最悪だ。その影響がとなりの韓国にも出ており、日本も偏西風の方向しだいでは影響は免れない、すでに中国に近い九州では計測されており、福岡市では定期的に計測発表することを決めている。国際エネルギー機関 (IEA)の最新の世界自動車需要予測によると、中国国内の自動車保有台数について、現在の6000万台から、2035年には4億台に拡大すると見ているから空恐ろしい。

中国共産党政権はこれまで、GDPの急成長をもって「共産党しか中国を治められない」と言ってきて、保八すなわちGDPの成長率を8%以上維持するという国家目標に向かって邁進してきたが、その性急な発展は深刻な環境汚染という形ではね返ってきた。そしてその深刻な環境汚染を放置してきたツケがいまになって回ってきた。水の汚染に始まって、粉ミルクや地溝油(再生食用油)に代表される粗悪な食品群や空気の最悪の汚染で中国は人間の住むところではなくなった。当局に外出を控えるように規制された市民たちは、「俺たちゃーどうすりゃいいんだい!」と断末魔の叫び声をあげている。
中国人も中国に住みたがらない。空気汚染、水質汚染、食物汚染などで害毒を垂れ流しにしているからである。中国人は諸国に移住してゲットーを作り、諸国の環境や社会道徳を汚染する。

中国の著名な環境保護活動家で、1993年に米ゴールドマン環境賞を受賞した戴晴氏は「中国社会に暴動が起きるとすれば、それは貧富の格差や腐敗によるものではなく、環境によるものだ」と述べている。
中国が安い賃金で世界の製造工場となり、多大の利益を受けて金持ちになったが、毒ミルクや毛髪で醸造した醤油など、有害物質の入った食物や物品を輸出して、今では各国が中国製品を買わないようになった。世界の有名ブランド商品の模造品は殆ど中国製である。インターネットのウイルス攻撃も中国発で、はた迷惑な国でもある。Facebookのサーバーが中国上海にあることも考えると、安易にFacebookに手を出さないほうがいいだろう。

一方で中国人が権力利用や汚職賄賂などで金持ちになるとすぐに家族を国外に移住させ、汚職、横領した金も国外に預金する。中国からの違法入国者が増える、国外逃亡した者、中国関係を利用した密輸入などで各国は迷惑している。我国にもヤクザ絡みで中国人と偽装結婚させる組織が摘発された。日本の水資源を狙って荒廃した森林の買い占めに走ったり、私の関連の中国からの漆の輸入についても関税を危険物(デインジャラスカーゴ)にして大幅に輸出価格をつり上げる目論見もしている。在日の中には善良な中国人も多いが、70万人近い在日中国人の中にはタチの悪いものも結構いるようだ。

2013年2月2日土曜日

アートな話「無用の用」

コラボシリーズ 「漁火」 吉川 創雲

上の写真は最近制作したコラボシリーズの私の作品「漁火」で、アクリルとコラボした鎌倉彫の照明と、下の作品はカミさんの作品ワインセラー「揺りかご」でどちらも木工所で捨ててあった端材(円形をくり抜いた残り物の木地)で、なんとなく創作意欲をそそられた形だったので譲り受け、2つとも半年ほど工房に寝かしておいたもので、考えあぐねていた末に、どの木地もドリルとノミで穴を開け、私は漆黒の夜に浮かぶイカ釣り船の漁火をイメージし、波を抽象化したものを彫り、カミさんはブルーベリーを彫り、ワインを載せることにした。照明の要になる素材はアクリル棒をカットして研磨し、狭い円形の土台に固定するのは難事であったが、以前訪れたことのあるベネチアの海上都市を思い浮かべ、海中の土台は木の杭を数多く使用し建物を支えていることをヒントにして、一本一本をブロックに分け、直経1cmのアクリル棒を穴に埋め込んだ。これら不用品を再利用し、息を吹き返した2点の作品は、いわばジャンクアートでもある。

ワインセラー 「ゆりかご」吉川 洛芳


我々の日常の中で一見無用なものが意味を持つことがある。1987年に免疫グロブリンの特異な遺伝子構造を解明した功績により、ノーベル生理学、医学賞を受賞した利根川進教授が、以前評論家立花隆との対談で、遺伝子について興味深いことを指摘しておられたが、これも人生やもろもろの事象における無駄とか不必要、あるいは合理性の範疇を超えた必要性を示唆するものとして心に残っている。曰く、

「遺伝子というのは、4つの要素が個体各々の順列組み合わせで並んだ長い二重構造になっている。その中に絶対必要であると思われる遺伝子とともに、こんなものがなぜ存在しているのかもよくわからない雑然とした不規則な遺伝子や重複した内容の遺伝子もたくさん見られる。」という。
遺伝子の構造が解明された初期の頃には、そういう意味不明な遺伝子のことを「ジャンク」くずと呼んでいたそうだ。よく調べてみると、そういうジャンクが数多くあることにより、遺伝子のコピーのミスが生じ、その結果突然変異が起こり、それによって変わった種が誕生し、その種が従来の種より適応性が高い場合には、適者生存で生き延びていくわけである。
実はこの突然変異の積み重ねが進化ということらしい。すなわち進化の歴史は突然変異の歴史そのもので、逆に考えると、もしも整然として必要以上のものが何もない合理的な組み合わせの遺伝子だけだったら、人類は進化しなかったということだ。

宇宙の意志というものに思いを馳せれば、仮説から進化してきた人類の歴史は単純に西洋の合理主義では推し量れないものである。