チュニジアに続きエジプトの独裁政権が崩壊の危機にさらされている。23年間にわたってチュニジアを支配してきたベン、アリ大統領がサウジアラビアに亡命したあと、エジプトではチュニジアに触発された民衆がムバラク大統領に向かって反旗を翻した。
今回の事態の発端は、昨年の末に、八百屋を営む一青年が政府に抗議して焼身自殺をしたことに始まった。政府の役人は民衆の苦しみをよそに、平然と賄賂を要求し、それを拒むと店の品物を没収する、こんな腐った役人が支配する政治はくそ食らえと青年は訴えたのだった。インターネットの普及などでこの訴えにこたえて、おびただしい若者たちがベン・アリ政権に対して、強烈な反乱をはじめ、各地で大規模なデモが催された。政府側はこれを武力で粉砕しようとしたが、そのたびにデモの規模は膨らむばかり。ついには国全体を巻き込んだ大規模な内乱に発展していった。
チュニジアと言えば古代地中海世界で繁栄した経済国家カルタゴである。その国でインターネットによる革命が起きた。チュニジアの国花はジャスミンであるからネット上でこの革命がジャスミン革命と呼ばれるようになった。
チュニジアのジャスミン革命の振動がエジプトを揺さぶっている。ムバラク大統領は2日次期大統領選に不出馬を表明したが、即時退陣を要求する民衆の騒乱事態は収まっていない。
亡命先のエジプトでもインターネットの威力は大きく、30年間権力の座に座り続けているムバラク大統領にも火の粉が飛んできた。インターネットや携帯電話を封鎖統制しても民衆の勢いを止めることは出来なかったのだ。
毎日のように群集がカイロの広場を埋め尽くし、ムバラクの退場と政治の民主化を求めて叫んでいる。その波は地方都市にも広がり、国民全体が変革を求めて動き出した。連日日本の観光客の空港で足止めを食った映像が流れている。
1981年にサダト大統領が暗殺され、副大統領だったムバラクが大統領に就任して以後30年、自分の息子を次期大統領に据えようとしているのは、北朝鮮の独裁者金正日と同じである。長年の民衆の不満は頂点に達し、ついに爆発した。今や将軍様も夜も眠れない日が続いていることであろう。
それにもまして戦々恐々としているのは中国である。この中東全土に広がりつつある内乱が、膨張経済下でインフレに苦しめられた生活困窮民衆や労働者によって体制に波及するのを恐れて、情報操作や映像遮断などが始まっている。その中国も独裁政権であることに変わりは無い。
歴史は繰り返す。民衆が目覚め立ち上がった時、やがて独裁者は消えていなくなる。
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