2010年9月8日水曜日

覇権国家の盛衰


オバマ米大統領は8月31日夜、ホワイトハウスの大統領執務室から国民向けにテレビ演説し、「イラクでの米国の戦闘任務が終了した」と宣言した。
大統領は2011年末の米軍のイラク完全撤退に改めて言及した上で、米国の緊急課題は「景気の回復と雇用」と強調。今後はアフガニスタンでの対テロ戦争に加え、米国経済の再生と雇用創出に全力を注ぐ姿勢を示した。
03年3月の開戦から約7年5カ月を経て、米国のイラクでの戦闘任務は正式に終結。米兵の死者は約4400人、戦費の総額は7000億ドル(約58兆円)に達した。<産経ニュース>



米国とその同盟国は中東から血にまみれた独裁者を排除したかもしれないが、サダム・フセイン自慢の大量破壊兵器の存在は幻想だったことが分かり、代償として多くの米国人の命や、そしてそれ以上にイラクの人々の命が失われてきた。イラクは、確かに、もはや独裁政権ではなくなった。2007年にブッシュ大統領が孤立しながらも撤退要求を拒否したこともあって、侵攻後の内紛の流血は抑えられた。だが、イラクの新しい民主政治はなお慢性的に不安定であり、そのことが、約5万人の米軍「維持」部隊がイラク支援のために居残る理由の1つとなっている。



イラク戦争の発端は、フランスの後ろ盾もあってフセインが石油代金の決済にドルを止めユーローに決定したことから始まった。
国際的に金の保有率の最も高い米国によって基軸通貨のドルは支えられていたが、その後フランスがドルと金との兌換を実際に求めたことから、米国の金保有率が半減したため、歴史上のエポックとなったあのドルショック(ニクソンショック)が始まり金本位制度が崩れ、ドルはただの紙切れになった経緯がある。時1971年のことであった。

そこでドルと言う通貨の裏づけとするための新たな価値が必要となったことから、石油が担っていたエネルギー資源としての価値を以て、金を代替するように変更したのだった。そのため金のもつ量的な制約から離れてドル市場全体が急拡大したことから、米政府は爾来潤沢な資金を手に入れることに成功してきたのである。そしてこのシステムに楔を打ったのがフセインだった。ドルの崩壊は米国の死活問題であるゆえ、あらゆる手段を使ってでもフセインを倒すことが米政府(ブッシュ)の主要命題であったため、国連安保理の承認を得ないままロシア、フランス、中国の拒否権発動をもろともせずイラク戦争に突入していった。その狙いはドルの防衛とイラク石油の利権のために戦争を仕掛けたものだった。
時代は過ぎ、オバマはブッシュ以来のアフガン戦争(テロとの闘争)をやめるどころか、造兵をしている。その背景にはアフガニスタンの地下に眠る1兆ドル近くの鉱物資源の収奪の目論見があり、覇権国家は覇権を維持するためには戦争を画策する。



さてドルの乱発で今や米国は最大の対外債務国であり、双子の赤字国(財政赤字、貿易赤字)その額は年々膨らんでいってる。このように一人勝ちのアメリカに忍び寄っている3つの負の影は、やがてドルの崩壊につながる道へと続き、それは歴史上繰り返してきた覇権国家の凋落の道をたどることになる。
すなわち、16世紀のスペインの黄金時代から17世紀オランダの台頭、そして18~19世紀に産業革命を起こした英国から覇権を手にしたのは、第2次世界大戦後の米国である。いずれもそれぞれの国の繁栄と覇権は200年は持たず160年前後と言われている。覇権の転換点には必ず大きな戦争があった。米国も没落に突き進むたびに戦争を起こして覇権を維持しているが、計算ではあと100年は米国の時代が続くことになるが、その時期も早まるだろう。

ロシアをはじめ、中国、EUなどは米国の一極覇権を望んでいない。米国の様な超大国がじわじわと崩壊するのを見ているこれらの国の選択肢は、多極化をめざすことである。現在のところ米国の次の覇権が言われている中国もまだまだ覇権をとるレベルではない。



かつてブッシュの時代の2007年代にCNNが流したニュースで、ユーロにならって米国とカナダ、それにメキシコが一体となって北米経済圏をつくる構想があり、2010年までに実現すると「AMERO」アメロと呼ばれる新基軸通貨というものがあったが、今年はその年であるが、まだそのような気配はない。米国はドル安を志向しその返り討ちにあっているのが現在の円高でもある。わが国が為替介入して円売りドル買いが進めば買ったドルの行先は米国債という米国にとって願ってもない構図が見えてくる。またユーロも不安定な状況下で円だけが買われている。


今後大きな経済変動、例えば世界大恐慌や、米国のデフォルト(国家破産)に直面した時に米国の考えていることは、現在のドル(グリーンパック)を国内では流通不可にし、すでに準備してある新ドル(ブルーノート)を発行。新ドル発行とともに、旧ドルは大暴落する。旧ドルを大量に抱えた中国や日本は、デフォルト(国家破産)状態となり米国の膨大な債務はチャラになり、通貨制度は新ドルでリセットされる。
つまり恐慌の発生によって自らドルを暴落させ、この機に乗じて現在のドルの使用を禁止して廃止、そして、新たなドルを発行する計画が進められているようだ。今使われているドルはグリーンのトーンで印刷されているため「グリーンバック」と呼ばれているが、新たに青いトーンで印刷されたブルーノートと称するニュードルを発行する。(すでに発行済みのものがFRB(米国中央銀行)に眠っているという話である。)これが第2のドルショックというシナリオである。

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