2010年5月17日月曜日

鳩山内閣の行方



内閣支持率が各メディアの発表では20%を割り込んでいる。過去に選挙前の内閣支持率の極端な落ち込みで選挙に勝った政党の例はない。来る参議院選も民主党の大敗が予想されている。


鳩山内閣の内閣支持率の最高と最低との「落差」は歴代内閣で最大となった。支持率は民主支持層を含む幅広い層で下落に歯止めがかからず、支持構造は発足から8か月で様変わりしている。
鳩山内閣は初めは小泉内閣に次ぐ2番目の高さだった。しかし、今回「鳩山離れ」が足元の民主支持層でも一気に進んだことがわかる。この間、支持政党のない無党派層の内閣支持率は60%から12%に下落した。無党派層の割合は20%から50%に増えており、鳩山内閣に失望した民主支持層が無党派層に移行したと見られる。

鳩山由紀夫は、戦後の首相の中で初めて、アメリカに対して異議申し立てを行った人物である。
従来のアメリカ従属の政治家や官僚と比較すると、鳩山首相は少なくともアメリカの奴隷から、この日本という国を解放しようとする意志を持っていると感じさせた。そんな鳩山首相が、「最低でも県外」と言った時、普天間基地移転問題は日米安保問題になった。

周知のように日米安保は片務条約であり、アメリカは日本の安全を保障するが日本はアメリカの安全を保障出来ないのだから、安全保障上の合意や約束はアメリカの合意がない限り日本は対等な立場でアメリカに変更を要求することは出来ないことになっている。「最低でも県外」と言った鳩山首相は、日米安保破棄または改定を念頭にアメリカに駆け引きを挑んでいるのだと思わせていたが、ここにきて風向きがおかしくなってきた。

筆者が12月17日のブログで言及した、「米国自身が普天間からグァムへの移設を求めていること」は、まさしく宜野湾市の独自調査によって、日米政府の「密約」が明らかになっている。ジャーナリスト上杉隆氏は自身のブログでも下記の通り述べている。

「2006年9月に本市が入手した米太平洋軍ホームページで発表されたグァム統合軍事開発計画によるとその内訳は司令部機能が2,800人、地上戦闘機能が2,900人、後方支援機能が1,550人、航空戦闘機能が2,400人と発表されている。仮に宜野湾市のこの調査結果が正しいとすれば、なんのことはない、普天間飛行場のグァム移設は米国自身が求めていたことなのだ。
それではなぜ、日米政府はその事実をヒタ隠しにするのだろうか。
沖縄は3Kの島といわれる。「観光・基地・公共事業」による収入が途絶えれば、たちまち県の財政状況が悪化するといわれている。換言すれば、沖縄の産業形態はこの3Kに頼らざるをえないということである。
そう考えれば、県外移転だとカネが島に落ちない、さらには国外移転だともっと旨みがない。このように考える沖縄県民はゼロではない。

 一方、米国も似たような事情を抱えている。グァム基地のほかに沖縄東海岸にも基地を持っていれば、有事発生の際にも、有用な予備基地としてどちらかを使用できる。つまり、沖縄の基地利権が、国外・県外という真っ当な鳩山首相の当初の政治決断を歪めてしまったのである。
先に国外移設先の候補であり、自ら誘致を決めているグァム・テニアン・サイパンの知事が日本を訪れ、鳩山首相と面会する予定だった。だが、首相官邸は、その知事らの訪問を拒否している。理由はわからない。」


普天間問題は鳩山政権の急所であることは間違いなく、わが国最大の危機に直面している折に、民主党内では小沢氏がこの問題と距離を置いて発言していることについて「(小沢氏は)首相を見放すのか」(中堅)と発言の真意をいぶかしむ声が出ているが、もともと小沢一郎は政治の表舞台には立たず、隠然とその権力を駆使する絶妙なポジションに自分を置いている。日本の危機に表立って身を投げ打ってまで向かう体力、気力はない。一言で言えば政治のコーディネーターである。今も筆者の耳に残るのは、海部内閣誕生の時に「担ぐ神輿は軽くてパーがいい。」と言ったことである。来る参議院選に向けて惨敗を想定して何やら動きだしているようだ。予想されることは連立の再編と新党をも巻き込むシナリオもあるだろう。少なくても日本の総理がパーだけは願い下げにしてもらいたい。 



日米安保について


ソ連の崩壊による冷戦の終結で、日米安保の最大の目的は消滅した。そこで次に登場したのが、アメリカの世界戦略に日本が協力する形での新しい 日米同盟であり、同時にこれは軍事同盟に組み込まれている様相を示している。

 日米安保条約は、2005年から「日米同盟」へと、異質なものに変化した。冷戦後のアメリカは、軍備の縮小ではなくて、世界で唯一の超大国としての地位を厳守する道を選び、新しい仮想敵国は、イランとイラクと北朝鮮であった。いずれもソ連に比べれば小粒であるが、そこへ欧米諸国に敵意を抱く国際テロ組織と、それを支援する国家という概念が加わったので、 新しい目的が成立した。

 この状態のアメリカが日本と同盟することの最大のメリットは、「条約」で確保した基地を、そのまま「同盟」の基地として使用できることである。なにしろ日本の米軍基地は日本を守るためのものという建前であるから、経費の4分の3は日本が負担することになっている。ちなみにドイツは、米軍基地の経費は4分 の1しか負担していない。日米同盟は、日本の戦後史すべてを集約した「宿命」のようなものである。

現代の安全保障は、軍事では限界があることが指摘されている。たとえばアメリカと中国が戦争をする可能性は、現在は非常に低くなっている。相互が最大の貿易相手国になっていて、戦争で相手を壊滅させても自国の損害が大きくて、良いことは何もないからである。相互に経済関係を親密にすることは、強力な安全保障になる。 その観点から、グローバル経済で重要な役割を果たすことは、世界の中における日本の安全保障につながる。

 憲法9条は、今も日本の軍事的な国際 貢献について強い歯止めになっており、自衛隊員を戦死から守っている。しかし日米同盟があるから憲法を変えなければならないというのは間違っており、憲法改定はアメリカとの腐れ縁が薄くなり、日本が独立した国家として成熟していく過程で、国家の安全性を考慮しながら機を見て変えていくしかないだろう。





 

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