2010年4月3日土曜日

アートな話「モノづくりの原点」





ワインクーラー 「葡萄に乾杯」 吉川 創雲

我々工芸に携わっている者にとって、最初に形がある。すべての物の始まりである形は、作り手自らの意思で作ることも変形することも 出来るものである。またそこから付加される加飾もデザインする作り手のわざである。
この加飾の領域に入るものが文様と称するもので平面的な図案を意味する。これら創作活動の過程で、形造りのデザインも含めたものを意匠と総称している。



自然界には全ての物質に形は存在する。人工的な形には無意味なものもあるかも知れないが、自然界の形は皆必然性を持っていて、そして自然界には2つとして同じ形はない。万物が基本的に同じ価値をもつのはこの絶対的な固有性にあると言えるだろう。
自然界の形は完成されている。どんなに混沌として見えようが、無秩序に見えようがそれは法則的でもある。また自然の形には人間の知らない自然界の比例律と言うベーシックがあり、画家はこの比例律を身につけるために数え切れないほどの風景や人物を写し取るためのデッサンやスケッチをくりかえす。



デザインに関して、自然の形からデザインをおこすことは我々がよく使う手法である。自然が創り出した形は全て応用が効くもので、自然の何処をどう切り取り写し取るかはデザインする者の感性である。

私が常日頃モノづくりにおいて念頭に置いていることがある。それはデザインを構成するものとして、メッセージの3つを挙げたい。



1) 美の造形―均整と調和(プロポーションとバランス)


デザインは美しくなければならない。美とは何か?これはデザイン以上に難しい言葉だ。古来さまざまな人が分析し、美学という学問領域も哲学の1部門として存在する。 ここでは物質を構成する要素、すなわち材質、色彩、模様、大きさ、数量、時間がそれぞれ調和し、かつ均整のとれた構成の存在と考える。それらの要素が見る側に心地よさをあたえる。



2) 用の造形―安全、利便、快適



そしてデザインは機能的でなくてはならない。まず安全であること、つまり安全性(安定性)が保たれていること。 ついで便利であること、つまり利便性である。場合によっては経済性と置き換えられることもある。 さらに快適であること、快適性とも言えるが、使い易さ、解かり易さである。その意味でも我々の身の回りにある器物や道具類に見られる形はそれぞれの機能を暗示している。



3) メッセージの造形―個性と文化



「美と用」という言葉は以前からある。いわゆる機能主義では「機能的なものはすべて美しい」としているが、「美しいものはすべて機能的」か、といえばそうでもない。 使うことを前提にした場合、美しく、かつ機能的でなければならないが、もうひとつ大事なことはメッセージである。「意味」あるいは「イメージ」と言えるだろう。 「そのデザインは、何を訴えたいのか」という訴求力である。受け手はその内容を想像、吟味し作品あるいは製品を認めるのである。 それは「個性」オリジナリティーと「文化」カルチャーから、構成されている。いわば作り手の内的告白である。

0 件のコメント: