2009年8月11日火曜日

マニフェストのメニュー


民主党のマニフェストを吟味し様子をうかがって最後に出した自民党のマニフェストも出揃い、いよいよ選挙戦が始まった。投票する国民サイドから見れば、判断基準が明確に示されるわけであるから、寄る辺ない選挙公約(マニフェスト)が明文化されることは政党の主張を明確に理解できて望ましいことであるが、選挙を意識して両者とも美味しいことを書いている。




まず自民党のマニフェストは安心,活力、責任の3つがキーワードとなっており、これらキーワードの元に、多くの政策メニューが並べられている。個々の項目の良し悪しを論じられているが、政党として日本が直面する構造問題解決のための改革の指針は伺えるが、改革のスピードが鈍いため、それら公約が迅速に実現するようなメカニズムが自民党の中で働いているのか疑問視される。現在の政治と経済の閉塞感から国民に政権交代の機運が高まったことは否めない。まさに改革は待ったなしである。860兆円の負債残高を野放しにしてきた、自民党のあと始末を次世代、孫世代に託すことは許されないことである。その自民党は経済政策については先ず経済成長のための戦略を示し、経済全体のパイを増やしてからそれを分配することを想定しているが、示している経済政策の多くは、今までの政策の延長線上にあるものが多く、従来とあまり変わらない。





民主党のマニフェストの経済政策については、今後も世界経済の低迷が続く経済状況を想定し、直接給付によって家計部門の可処分所得を増やし、個人消費を盛り上げることで国内の経済活動を活性化する財源を一般会計や特別会計から捻出することが言われているが容易ではないだろう。助成の対象者に直接支給する形になっているのが自民党と違うところで、自民党政権だと、中間団体に助成金を流すことにより、官僚の天下り先と自民の集票組織がセットされた形での予算の組み方をしており、民主党はその流れを断ち切ろうとしているようだ。

民主党のマニフェストでは政府の無駄を省いて、その分を子育て、教育、年金、医療に振り向ける、また行政権限をできるものは中央から地方へ移し、地方主権を確立するなど、国民には耳障りのいい資源配分の組み換えを目指しており、自民党政権下ではなかなか実現しなかった政策を掲げて業界団体、族議員、霞ヶ関の三角形を壊すことで実現しようとするものである。民主党は政権を取ればマニフェスト実現のために、予算の大幅な組み換えに取り組むことになるが、財源をどう確保するのかという根源的な問いには、無駄を省くという回答しかないので、やってみないと分からないというクエッションマークがつくが、まずはお手並み拝見と言ったところだろう。




自民党と民主党のマニフェストで示された経済政策は、どちらも小泉構造改革の否定を出発点に成り立っており、小泉内閣の行った改革が、行き過ぎであって、地方、中小企業、個人の間に経済格差が拡大し、経済的、社会的に大きなひずみが生まれてしまったとの認識が両党ともあり、その上で、小泉改革から脱却し、その是正を図ることを目指す経済政策を打ち出してきたと言える。いみじくも小泉首相がマニフェストに関して、「この程度の約束を守らないことは大した事じゃない。」と答弁したような項目の羅列は払い下げ願いたいものである。
緊急避難的な両党のマニフェストから明確な日本の未来像が見えてこないと感じるのは、私だけではないだろう。近い将来の日本をどうするかは概ねわかるが、日本という国の未来をどうするのか、戦略的な視点に立って政権を取った政党は国民に示す責任があると思う。

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