2008年9月9日火曜日

欲望と人生

                画像 歌川 国芳




 ミクロ経済学において「限界効用逓減(ていげん)の法則」というものがある。人が消費できる財の消費量には限度があるのが普通である。最初の1杯のビールは美味いが、2杯目からは最初の味に及ばない。回転寿司や食べ物の場合は、最初は美味しいけど、だんだん お腹がいっぱいになってきて、効用の増分が小さくなっていくという当たり前の現象である。一般的に、財の消費量が増えるにつれて、財の追加消費分から得られる効用は次第に小さくなる。これを限界効用逓減の法則という。


人間の物欲はこの無限連鎖である。一つのものを手に入れるとまた次の物が欲しくなる。最初に手に入れたものの効用が小さくなると、次のものに触手が動く。欲望の尺度は人によって異なる。究極の尺度は自己満足が最も重要な尺度である。それぞれの人間がそれぞれの自己満足を目指して生きている。あることに満足できなくなると、別の満足を探す。金を稼ぐことに満足できなくなると、知的な満足を求め、知的満足に満足できなくなると、宗教的満足を求め、あるいは慈善活動などに満足を求める。
お互いの満足がぶつかり合うと、争いが起きる。それが例え国のため世界のため真理のためであろうが、全ての争いは満足を求めて行われている。あらゆる美化された行為、あらゆる卑小な行為は自己満足の結果である。



我々の人生は、「自己」の物語そのものである。人はよりよい生活や社会的地位、あるいはよい人間や物などを求め右往左往し、それが得られるとそれを維持することにエネルギーを費やし、やがて死にいたる。大方の人生はそうした簡単な図式に集約される。それが最も顕在化しているのが政治の世界である。金と利権、派閥と官僚に囲まれた政治家たちが、国民のため、国民のためと連呼しているが、果たしてどれだけの政治家が本気で今の日本の窮状を救う強い意志をもっているのか疑問である。先日の福田首相辞任劇は身内の自民党員に対する謝罪はあったようだが、我々国民に対して一言も謝罪の弁は発していないことを見ても、この一国のリーダーの目が一般国民に向いていないことを現している.

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