2015年7月9日木曜日

弱者の恫喝

ATMの前で現金を引き出すギリシャ国民

先進国で初めて事実上の債務不履行(デフォルト)に陥ったギリシャ。金融市場は与党・急進左派連合の瀬戸際戦略に翻弄され続けている。
そもそも、債務が膨れ上がってデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に立たされていたギリシャでは、2428億ユーロ(約42兆円)の借金を踏み倒したい与党・急進左派連合のチプラス政権と、支援する代わりに緊縮策を迫る欧州連合(EU)などの債権団が激しく対立してきた。まとまるとみられていた両者の交渉が決裂すると、チプラス首相は突如、債権団の緊縮策の受け入れの是非を問う国民投票を7月5日に実施するという奇策に出た結果、財政再建策への反対派多数が確実となった。

反対派が多数を占めた結果、債権団との交渉決裂の流れを反映して、金融市場は世界同時株安の様相を呈し、日経平均は前日比596円安と今年最大の下げを記録した。さらに30日には、国際通貨基金(IМF)からの融資を期限までに返済できなかったことから、先進国では初めて事実上のデフォルトに陥った。しかも、国内では“預金封鎖”という禁じ手まで繰り出し、市民生活を直撃している。

問題のギリシャ政府債務の約80%はEU、IMF、欧州中央銀行(ECB)が保有していることなどもあり、世界経済への影響は限定的との見方が大半を占めるが,今日までのギリシャが辿った道のりを概観すると

2010年〜2014年
欧州連合(EU)が緊急財務相会合で国際通貨基金(IMF)と共に、財政危機に陥っているギリシャに対して今後3年間で1100億ユーロ(約11兆7千億円)の融資を実施することで合意。また国際通貨基金(IMF)が55億ユーロ(約5800億円)の融資を実施することで合意。
その見返りとして、ギリシャ政府は3年間で300億ユーロの財政赤字を削減することをEUなどに約束し、増税や行政サービスの歳出カット、公務員のリストラなどを実施。しかし公務員や多くの国民はこれに強く反対、デモやストライキが繰り返される。

 2015年 
総選挙により、EU側がギリシャに強いた緊縮策に不満を持つ国民の支持を集め、反緊縮政策を掲げる急進左派連合が圧勝。チプラス新内閣が発足。
同国への国際金融支援の条件となっている幾つかの緊縮措置を撤回する計画を公表。
また、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるギリシャ占領で被った損害の賠償として、ドイツに対して1620億ユーロ(約22兆円)を請求する権利があると主張。一種の恫喝である。
ギリシャの公務員の比率は、就労者の約25%。4人に一人が公務員である。しかも民間よりも給与待遇面で優遇され58歳から年金が支給されるなど、キリギリスのような役人天国。ちなみに、日本の公務員の割合は3%だ。

ギリシャは財政赤字を垂れ流す放蕩国家危機が明らかになったのは国家の「粉飾決算」が発端だ。ユーロに加入するには、財政赤字はGDPの3%以内という定めがあったにもかかわらず、粉飾決算して誤魔化し続けてきたが、2009年に、対GDP比で12.7%もの財政赤字が表面化し、EUの火種としてギリシャ危機がずっとくすぶり続けている。
もともとEUは経済地盤の強い国だけだと、ユーロの通貨高が輸出を妨げるためギリシャのような弱小国を取り入れることで、ユーロ安で恩恵に預かっているのがドイツであり,EUにおけるリーダーでもあるが、ここにきてギリシャに足元をすくわれている。

ギリシャでは1日60ユーロまでしかATMで引き出すことができなくなっていて、クレジットカードなども利用ができなくなっている。ドイツがギリシャを簡単に見捨てることは、ギリシャ国債の*CDSに売り手の多くを占めているドイツの銀行は、数兆円単位の支払いを請求されるであろうと言われている。メルケル首相としても、ギリシャのデフォルトは、ドイツの金融システムを守る意味でも何としても回避したいという思惑を知ってか、借りた者勝ちのギリシャは開き直っている。我が国の隣国韓国も弱者の恫喝を続けている様は背景こそ違うが似た者同士だ。また経済が弱体化してきたロシアのプーチンも、ここにきて欧米に対して、やたら核の恫喝発言をしていているのも目に留まる現象である。


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