出典:環境保護団体WWFジャパン |
魚が自然の回復力を上回る勢いで乱獲されていることは、10年以上前から知られていた。過去50年間の乱獲で、マグロやタラなど10種類の大型の捕食魚は90%も数が減ったというのだ。
世界の人口は、1950年には25億人程度であったものが、2000年には約61億人となり、2050年には90億人以上になると予想されている。統計によると水産物は人類が摂取する動物性タンパク質の約16%で畜肉は45%を担っており、海面漁業の漁獲量が頭打ち状況にある中、海面及び内水面養殖による生産増大が需要に応えている。
魚資源の需要はヘルシー志向の高まりで世界的に増加し、限られた魚資源を各国が奪い合う時代を迎えている。昨今では尖閣諸島沖と黄海で、中国漁船が相次いで海上保安庁の巡視船や韓国海洋警察の警備船に体当たりした事件の背景にも、中国での爆発的な魚需要の増加と中国自体の海洋汚染による沿岸漁業の衰退がある。一方で漁獲と養殖を合計した中国の生産量は世界の全生産量の約3分の1を占めている。
FAO(国際連合食糧農業機関)は、「世界人口の12%の生計が漁業に依存し、世界人口の17%にとって魚介類が主なタンパク源であるため、このままでは世界の漁業は早晩立ち行かなくなる。世界各国は持続可能な漁業への支援と乱獲資源の回復に向けたあらゆる努力をしなくてはならない」と呼びかけている。当面、資源管理が不十分な公海を含めた漁獲量削減が課題となりそうだ。
日本人が世界中の漁獲量の3分の1を消費しているマグロは、去年は2割ほど値下がりしていたが、これは韓国や台湾が対日輸出を急増もあって、韓国は1昨年の2.5倍も日本にマグロを輸出しているが、乱獲で生息数の枯渇につながる30キロ未満の未成魚が97%を占める。
海洋侵略を続ける中国 |
さて海釣りではお世話になっている魚であるが、今世界で有数の漁業国日本のお魚事情がが気にかかる。入院中に読んだ本の中で、勝川俊雄著の「 日本の魚は大丈夫か」がある。
本書では日本近海は豊かな魚場に恵まれていて、古来漁業が盛んに行われてきたが、その現在の日本の漁業が資源枯渇と魚値安で衰退の一途を辿っていて、既得権でがんじがらめの「水産ムラ」に今メスを入れなければ漁業者の暮らしは救われず、食卓から国産の魚が消える日が近くなると危惧しており、健全な資源管理と組合経営でその危機は乗り越えられると言及している。
それによると漁業従事者の46パーセントは60歳以上。高齢化がすすみ後継者が不足している。その大きな理由のひとつは赤字経営の常態化である。農水省が公表している全国1,073漁協の損益計算書総括表(2008年度)によれば、事業総利益は1,092億円であるが、事業利益はマイナス232億円で資源状況からこの先好転する気配はない。
私も肉よりは魚の方が種類が多く好きである。食卓には欠かせない魚であるが、昨今のスーパーなどでは、馴染みの魚や新参者の養殖サーモン、根魚など世界各地からの輸入物が増えてきている。世間では魚離れが久しく言われているが、実際日本人一人の魚の消費量はアイスランドについで世界第二位だそうだ。そんなわが国もこのたびの大震災で三陸の漁場で操業している漁業者は船や加工場、インフラなどで壊滅的な打撃を受け、さらに放射能汚染と言った厄介な問題も抱え込むことになったわけだが、復興漁業の再開が進む中で、これら東北の漁業者が古い漁業体質から抜け出て新たな事業として展開していけば、日本の漁業は三陸から明るい展望が開けるのではないかと著者は活動を通して提案している。
本書では、漁業には地付きの縄張りで細々やっている沿岸漁業と大量に乱獲する沖合漁業、さらにEEZ(排他的経済水域)に規定されている各国沿岸から200海里以外で操業する沿岸漁業に分かれるが、いずれも衰退の一途をたどっている。
また日本の場合漁業者から消費者に届くまでに産地卸売市場と消費地卸売市場の業者を通すので、コストが高く着く割には魚価が低いので、各業者は薄利多売を強いられている。その一因となるのが稚魚までも水揚げする漁業者の乱獲による値崩れがある。そこには獲ったもの勝ちの、水産物保護育成の観念の欠如がある。また沿岸漁業においては縄張り意識が強い。
沿岸漁業に関しては、一般漁師の職漁船と我々が乗る遊漁船ではそれぞれのテリトリーが違うようだ。沿岸で細々一人でやっている高齢の漁師などは、平均して年間100万ぐらいしか水揚げがなく、あとは年金で暮らしているありさまである。高い燃料費を考えると、老婆心ながらやっていけるのかと気にかかる。そんな沿岸漁業に見切りをつけ釣り客相手の遊漁船に乗り替わる漁師が跡を絶たず、おおよそ沿岸漁業の80%が遊漁船で占められている。不安定な漁獲を当てにするよりも、釣り客一人小一万で小さな船でも一日船を出せば5~6万になる寸法だ。言葉は悪いが、釣れた釣れないは別として客を遊ばせてやればその日の上がりとなる寸法だ。そんな船頭も色々な人間がいて、客が大釣りすると一緒になって喜ぶ船頭もいれば、南房の特定地域のシマアジを釣らせる船頭は、客が大物をバラすと嬉しそうな顔をして、釣り上げると 渋い顔をするので、米櫃のような限定場所を後生大事にしている様子が伺える。
娘が以前TVの取材でお世話になった横浜のアナゴ漁師などは、震災以降東京湾の海の様子が変わり、アナゴが撮れなくなって、ギャンブルでその場をしのいでいるような話も耳にする今日この頃である。海の様子は潜って見ないとわからないが、我々釣り師も数を競って魚を乱獲することは慎み、小型の幼魚はリリースするなどして、せめて近海の魚だけでも乱獲を避けて限りある海洋資源を大切に見守りたい。
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