昨年末に行われた総選挙で、図らずも私は入院中の病院の中で不在者投票をした。その結果は、足並みの乱れた野党を尻目に自民党圧勝の予想通りの結果となった。民主党をはじめとする不甲斐ない野党は分裂離散集合を繰り返し、その成れの果てが今回の選挙結果となったわけだ。小沢一郎しかり維新の会、みんなの党、それぞれ同床異夢の寝言にうなされ、内ゲバの結果くっ付いては離れ、あっけなく散って行く。
選挙後の民主党の中でも同じことが起きている。党首選を戦うご両人は自主再建派の岡田と他党との連合にこだわる細野との一騎打ちであったが、そこに長妻議員も名乗りをあげ、三つ巴の混戦状態となったが、年明けて岡田代表に落ち着いた。
腐っても民主党が野党の中核にならなければ議会制民主主義は廃れてしまうのだが。どうなることやら。過去の失敗を糧にして新しく力強い野党として再生してもらいたいものである。
さて選挙結果で自民党の長期政権が進むことになるが、財政再建、円安によるインフレ対策、経済政策による成長戦略などどこまで実現できるのか、はたまた憲法改正、集団的自衛権の法制化など、日本の国力が試される多くの懸案事項の成立にその実行力が問われるところだ。
今回の選挙結果で、安倍首相の任期は、2018年9月までとなり,米露韓の大統領を上回る任期となったが 、首相の慢心 でアベノミクスがアホノミクスにならないようにしてもらいたいものである。その浮かれ声とは裏腹に、経済格差は広がる一方で、一部上場企業の賃金は上がるものの、雇用の喪失による、非正規雇用やリストラによる中産階級の没落は止めようがない、成長を金科玉条に進んできた資本主義の末期症状を呈している日本がそこにある。確かに日本国民の経済実態は厳しいものがある。GDPこそ世界3位ではあるが、相対的貧困率は16・1%OECD加盟国34カ国中、下から第4位、父子母子家庭世帯のそれは54.6%で1位。2011年度の所得再分配ではジニ係数0・38と過去最大になり、ちなみに中国は0・61と国家暴動が起きても不思議ではない状況だ。
○ジニ係数 http://www.gifu.shotoku.ac.jp/hosoi/books/econdatabases/p100.htm
集英社新書の最近読んだベストセラー[資本主義の終焉と歴史の危機ー水野和夫著 ]の中でエコノミストらしい緻密な分析で、歴史的に見た資本主義の推移と、低迷する世界経済の推移に共通点があることを導き出した。
それによるとアメリカを例に取り、リーマンショックなどを、利潤を生み出せない実体経済を延命させる手立てとして、バーチャルな電子金融空間を作り、余剰資本が世界を駆け巡り、実物経済の余剰マネー約74兆ドルに対して,電子金融空間での140兆ドルのストックベースの何十倍ものマネーが電子空間を徘徊する事になる。
本書の中で著者は資本主義の限界とは、資本の実物投資の利潤率が低下し、資本の拡大再生産ができなくなってしまうことで、日本のように長きに渡りゼロ金利が続いている状況が、臨界点に達した現象であると言及していて、過去の経済成長をもう一度と躍起になっていることは、過去の世界の経済史から見て最終的には財政破綻につながる道を歩んでいることと警鐘を鳴らしている。
また一方で、先進国の中で大規模なバブルをいち早く体験した日本は 、失われた20年の中で、ゼロ金利が続き経済成長が鈍化する資本主義の末期症状を呈しており、同じ病に陥った先進国のなかで、先を行く日本から、暗中模索の果てに、ほのかな希望として新たな資本主義のステージが生まれるのではないかと最後に著者は締め括っている。
さてアベノミクスだが、1金融緩和 (デフレからの脱却) 2財政政策 (公共投資)は一部ではあるが賃金上昇や株価上昇などの効果があったが、以前なら円安になると貿易黒字に直結して行くところだが、グローバル経済の元では、多くの企業が生産拠点を海外に移している現況では、円高によるあらゆる原材料が高騰し、輸入超過から生じる貿易赤字 の増大がみられる。そんな中での増税は、実質賃金が下がっている現状で消費が上がらず、GDPを0・3%マイナスにしてしまった結果をみれば、消費の冷え込みは想像以上だ。さらに10%の増税も思案のしどころだろう。
財務省がせっついているほど、日本の財政は逼迫していないと多くの経済アナリストは言及していることから、ここで性急に上げる必要はないと思う。そして第三の矢(成長戦略)は過剰な資本ストックを増やすだけで,危ういと感じているエコノミストも多い。財務省は、2013年度末の国のバランスシートをまとめ、2014年3月末時点で資産・負債差額(負債が資産を上回る債務超過額)は490兆円と発表したという報道があった。なぜここでだんまりを決め込んでいた政府が急に発表したのか不思議であるが、この場合の負債は問題になっている1143兆円で、負債の多さに目を奪われていた国民の多くは、国の資産の多さを知り少しは胸をなでおろしたのではないだろうか?
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