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この秋に採決されようとしている「特定秘密保護法案」は、所管する内閣官房が、保存期間満了後の文書の取扱規定を盛り込まない方針で、都合の悪いことは秘密にしたまま担当省庁の判断で廃棄される可能性がある。識者からは「国の秘密になるほど重要な情報は歴史に残し、後世の検証の対象にするのは当然」と批判が上がっている。他国に先駆けて情報公開法を制定した米国では、例外はあるものの10年未満、10年、25年と優先順位をつけての自動機密解除が潮流となっているのだが。
2001年にようやく施行された情報公開法は「国民主権の理念にのっとり、情報の一層の公開を図る」ことを目的とし、続いて2009年に出来た公文書管理法は、国の諸活動や歴史的事実の記録であり、公文書は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源とうたっている。政府は国民からの信託に基づいて行政を行っているのであるから、国民に対して情報を提供、共有することは当然の責務である。
先進国としての、我が国の情報公開の遅さは、日本の為政者に、国民に自分たちの為政の情報を与える文化がまったくなかったことを示している。いわゆる由らしむべし知らしむべからずの伝統的な政治である。情報公開法は出来ても、少しでも為政者に都合の悪い情報は公開されていない。ほとんど情報公開法の意味がないような、ほぼ全面にわたって墨で消された「公開情報」を我々は様々な場面で目にする。
公文書管理法は、行政機関等の公文書を対象としており、司法・立法の公文書は含まれていない。また、地方公共団体の公文書は努力規定となっている。消えた年金や、小沢一郎裁判で明らかになった司法の闇などは、すべて情報公開と公文書管理文化の立ち遅れを物語るものである。例えば、3.11以降、原発関係の重要事項を決めてきた「原子力災害対策本部」の議事録も作成されていなかった。これは原発事故以降の最大の隠蔽工作であると言われている。福一の事故のあと、東電や国の隠蔽工作は時間を追って次々にあぶりだされたことは記憶に新しい。
古くは1972年の沖縄返還に伴う密約問題で、政府の「隠蔽体質」が如実に現れた。日本が米国に財政負担することを両政府が合意した密約について日本政府は一貫して否定し続け、2000年以降に米国立公文書館で密約を裏付ける文書が見つかった後も、その姿勢を変えていない。
国民的議論も不十分なまま進められていく昨今の消費税増税・原発輸出・ TPP参加・「特定秘密保護法案」・NSC法案・解釈改憲・新ガイドライン。これらはすべて危機による国民のパニックを利用して、平時なら不可能な改革を実施するフリードマンの経済ショック療法のやりかたを踏襲している。
ところで、この秋にも採決されようとしている「特定秘密保護法案」のルーツは、日米政府が締結したGSOMIA(ジーソミア)にある。これは、2007年5月1日に、日本と米国が「2プラス2」(日米安全保障協議委員会)で協定締結に合意し、2007年8月10日に、GSOMIA(General Security of Military Information Agreement、ジーソミア)として締結されたものである。
同盟など親しい関係にある2国あるいは複数国間で、秘密軍事情報を提供し合う際に、第三国への漏洩を防ぐ協定である。日本は米国やNATO、フランスと、この協定を締結している。この締結の際に、米国から日本での法案化が要請されており、それが「特定秘密保護法案」として現在の臨時国会に提出されようとしている。
つまり日本での過剰なまでの情報統制や国民監視の法案提出には、背後に常に米国の要請や指示があるという筋書きになっている。ほとんどの国家ではスパイ防止法や機密保護法を制定し国益を守る防御策が講じられているが、スパイ天国日本の現状を見て、スノーデンに3万点に及ぶ機密文書を盗まれた米国が要請してきたのは想定されるところだ。
その「「特定秘密保護法案」は、米国の要請を元に官僚主導で法案化が進んでいる。その法案概要では、次の4分野に分けられている。
( 1 )防衛( 2 )外交( 3 )外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動(スパイ活動)の防止」( 4 )テロ活動防止。
この4分野のうち、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあり、秘匿の必要性が特に高いと考えた情報を、行政機関の長が「特定秘密」に恣意的に指定できる。
しかし国民の「知る権利」「取材の自由」は守られる、と言いながらも、その規定がどうにも曖昧で、その定義は解釈によってどうにでもなる。報道に網がかけられた次は、やがてネットで好き勝手なことを言わせないネット規制も始まるかもしれない。
個人にプライバシー権があるように、国家にも「国家機密情報を保護する情報のコントロール権」がある。中国や北朝鮮の工作員や米国やロシア等主要国の諜報員多数が我が国で国家機密情報の収集に注力している状況下で、他国の場合はスパイ活動を発見すれば逮捕又は国外追放処分に付すが、我が国にはスパイ活動を取締まる法律がないためスパイ天国となっていて、最近の中国書記官のスパイに逃げられた事件など、数え上げたらきりがない。
外圧によって重い腰を上げる日本政府は、今回の特定秘密保護法案や、TPP、そして集団的自衛権においても他力本願の政治姿勢は変わらない。我々は民主党政権時代、脱原発を閣議決定する矢先に米国の横槍で頓挫したことを見てきた。今、小泉元首相が即脱原発と声高に叫んでいるが、弟子の安倍首相が米国の圧力をはねのけて閣議決定するのは容易なことではないだろう。
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