2012年3月8日木曜日

アートな話「唐草文」


今年は私の所属している鎌倉彫教授会50周年にあたり、鎌倉から始まり広島~札幌と地方巡回展が3月から5月にかけて行われる。
案内状に描かれた文様は宝相華文(中尊寺円乗院に伝わる木彫光背残闕)で鎌倉彫の教材として模刻されているのが上の写真である。
鎌倉彫の基礎教材として数多くの古典作品に技術と感性を学び、現代につなげていく一貫したカリキュラムは今日まで続いており、鎌倉彫教授会の基本理念でもある。

鎌倉彫の意匠は花や花鳥文、自然風物、動物、屈輪など多種多彩であるが、中でも唐草紋は馴みのある文様である。
エジプトのロータス(水蓮)つなぎ文
唐草は古代エジプト時代つなぎ文に端を発し、多種多様に展開していった数千年もの歴史を持つ人類の普遍的なイメージである。植物の花や葉の形を蔓 (つる) 状のリズミカルな曲線でつないだ文様の総称で、<唐草>の語はすでに平安時代の文献にみえ, 〈中国唐代伝来の蔓草文様〉という意味でこの名が使われたようだ。

唐草は草花文様の一種と考えられるが、重要なのは文様そのものというより 縦横無尽に空間を埋め尽くしてゆくかのようなその潜在的なエネルギーである。やがてそれはギリシャのパルメット(忍冬唐草)を経て、ペルシャ、インド、中国を通って日本に伝播されてゆく。

● 宝相華文

正倉院 五絃琵琶      仁和寺宝珠箱


数千年の時代を経てロータス(蓮華)・パルメット・ザクロ・牡丹などを組み合わせた空想上の花文として登場してきたのが宝相華で、ペルシャで芽生え中国唐代に豊麗な文様として完成され、奈良時代日本に渡ってきて唐草的に様式化されたものが正倉院御物に見られ、仁和寺宝珠箱を経て平等院鳳凰堂  中尊寺の木彫光背の残闕にたどり着いた。まさにシルクロードを経て平安時代末期に栄えた奥州藤原3代で宝相華唐草は花開いたのだった。

◎  展覧会日程

創立50周年記念展 3月29日(木)~4月2日(月)鎌倉生涯学習センター
50年のあゆみ展  3月29日(木)~4月1日(日)鎌倉彫会館
地方巡回展 4月17日(火)~22日(日)札幌大丸藤井セントラルスカイホール                     
5月15日(火)~20日(日)広島県立美術館県民ギャラリー

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