2012年2月6日月曜日

不気味な海洋汚染


「NHKスペシャル 知られざる放射能汚染~海からの緊急報告~」によれば、東京湾の海底の放射能汚染が進行しているようだ。東京湾の魚はこれから食えるのかという釣り人の不安を煽る放送であった。
想像を超えた調査結果が示している現状では、江戸川の川底は、河口から8キロの地点で1キロあたり1623ベクレルのセシウム汚染。河口では872ベクレルが計測されている。東京湾の河口は原発至近の海と変わらない汚染の様相を見せている。これらの堆積したセシウムは時間をかけて東京湾に侵食していき、汚染がピークに達するのは2年2か月後。この汚染は10年以上続く見込みだ。これは関東平野に降り積もった放射性物質が河川を流れ、東京湾に注ぎ込まれる地形によるものだ。今更ながらこの調査結果には戦慄を覚える。さらに相模湾にかけても今後の調査を望むところである。

当初福島の海で計測されたヒラメやメバルなどの底魚はヒラメの最高4500ベクレル/kgのセシウムが検出され、基準値500ベクレル/kgを大きく上回った。汚染状況は沿岸流の影響で放射性物質は茨城から千葉へと,沿岸流によって南下し拡散は始まっている。映像で見た地上で話題になっているホットスポットも海底の土や泥にも存在している様子が垣間見れる。網にかかったヒラメやメバル、カサゴを見てつぶやいたやるせない漁師の言葉「これもゴミか。」が印象に残った。そもそもこの暫定基準値自体国際的には甘い基準値で、有識者からの指摘で厚労省も重い腰を上げ、この四月から魚を含む一般食品の基準値を100ベクレルにするようだ。漁民にとってはますます厳しい事態になるが、我々一般消費者の食の安全を考えた場合やむをえないことだ。逆に言えば魚も含めてあらゆる食品がこの基準値をくぐり抜けるための産地偽装に走らないことを願うばかりである。
 
一方汚染スポットに定住している底魚とは違う生態の回遊魚に関しては、流通・加工業者らでつくる「北海道サンマ産地流通協議会」は昨年、福島第1原発の北100キロに当たる宮城県金華山より南の海域で取れたサンマを扱わないよう求める要望書を、根室市など道東の地元4港の市場に提出した。
また、「全国さんま棒受網漁業協同組合」が東京で理事会を開き、福島第1原発から半径100キロ以内の海域を「操業自粛区域」から「禁止区域」へ規制強化したのだ。月を追うごとにサンマの群れが岩手県沖まで南下してきたことが理由という。

カツオの南洋での遠洋漁業は1年を通して行われ、日本では静岡県および鹿児島県が漁獲高の大半を占める。冷凍されて日本で水揚げされ、主にかつお節の原料になる。一方、近海物のカツオは、鹿児島県から静岡県遠州灘にかけては春、伊豆より北では初夏に漁期がやってくる。
これらの地域では『もどりカツオ』も漁獲でき、秋に漁期が来るが、このときの放射性物質に注意が必要らしい。太平洋沿岸を回遊する鯖は、伊豆半島沖で春ごろ産卵し、餌を食べながら北上し、9~10月ごろ南下を始める。鯖によく似た生態系を持つ出世魚ブリも同じような行動パターンで、大型になればなるほど食物連鎖の頂点に近づき、体内に凝縮され蓄積していく。



「放射能を防ぐ知恵」の著者でNPO法人「食品と暮らしの安全基金」代表の小若順一氏が次のように言及している。
「魚から放射性物質が検出されても、基準の1キロあたり500ベクレルを超えない限りは操業を自粛しません。事故前の魚の平均値は0・086ベクレルでしたから、放射能汚染魚が出回ります。基準を超えると、国は取ってはいけない海域を決めるが周辺海域での漁は続きます。すべての人と言いませんが、特にこれから子どもをつくる若い世代は要注意です」
ヒラメ、カレイ、スズキに関しては、福島周辺の各県で非常に高い値が検出されているにもかかわらず、岩手以北、神奈川県以西のデータがほとんどありません。基準の500ベクレルを見直さない限り、関東や東北の太平洋側で取れた魚を安心して食べることはできません」(小若氏)

「事故前の魚の放射性セシウムの平均値は0.086ベクレルだから、今は事故前の約2万7000~1万6000倍ということになります。米国がビキニ環礁で行った水爆実験では、魚介類に影響が出始めたのが半年後。福島原発で汚染水が流出、投棄されたのは3月下旬~4月上旬だったから、だいたい当てはまります。高濃度汚染の魚介類はさらに増えるだろうし、汚染域は太平洋沖にさらに拡大していく。影響は5年ほど続くとみています」

一方で群馬県や栃木県の山間部の湖沼などにもセシウム汚染が深刻化しており、淡水魚の汚染もワカサギなどに広がっている。狭い陸封型の湖沼は海洋よりもやっかいだ。

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