2010年10月7日木曜日

政局探訪

 



 「賢者は歴史から学び愚者は経験からしか学ばない」
     オットー・フォン・ビスマルク(ドイツ帝国初代首相)




それにしても、国会答弁で、中国漁船が海保巡視船に体当たりするビデオを菅首相が「見ていない」と言うのには唖然とした。一国の一大事の局面で本当に見ていないのならあらゆる状況を踏まえて国家の方針を決定すべき立場にある国家指導者の資格を欠いている。「ウソ」だったのなら、これまたあまりに姑息で浅知恵の言い逃れとしか言いようがない。

菅民主党政権の特徴は、弁護士の国会議員が多いせいかも知れないが政権運営でも国会運営でも、司法手続きの発想で動かしている。司法の役割と政治=立法の役割とは異質である。
中国船長の「処分保留で釈放」の決定理由は、誰が考えても検察権の権限外の問題で、超法規行為である。これを断行するなら、菅内閣総理大臣の「政治決断」で行われるべきであり、菅首相自身の言葉でその理由を国民に説明する責任がある。政府がこの問題に一切介入せず、官僚任せに責任逃れをしてしまったことに一国民として危険性を感じる。
国民に真実を隠し、「政治介入」を否定し続けている菅首相は、嘘を重ねて政治を行っているといえる。国民に嘘を言い続ける政治の結末はどうなるか。国民と国家の悲劇でしかない。


国民新党の亀井静香代表は時々気になることを言う。4日夜、BS11の番組で、小沢一郎民主党元幹事長に対する検察審査会の議決が同党代表選の投票日に行われながら、20日後の公表となったことについて「ふに落ちない。何か事情があったのか」と疑問を呈した。小沢氏の対応については、「一貫して潔白だと主張してきたわけだから、そういう立場で行動していくと思う」と語った。また、「証拠判断の訓練も受けず、法律判断をしたことのない人の判断は情緒的に流れやすくなる。制度論として検討の余地がある」と述べ、強制起訴制度の見直しが必要とした。また亀井代表は最近、米議会に乗り込んで「日本国民の財産である郵貯をお前らの勝手にはさせないぞ」と啖呵を切ったらしい。こういう侍が民主党にはいない。


◇ 検察審査会とは?

1948年(昭和23年)にGHQの指示によって成立した検察審査会法によって始まった制度であり、全国の地方裁判所と地方裁判所支部がある場所に149か所165会設置置されている。

検察審査会法第2条により「検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項」や「検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項」を扱う機関とされている。

日本においては、事件について裁判所へ公訴を提起(起訴)する権限は、原則として検察官が独占している(起訴独占主義)。したがって、犯罪被害者等が特定の事件について、告訴を行うなど裁判がなされることを希望しても、検察官の判断により、不起訴・起訴猶予処分等になり公訴が提起されないことがある。このような場合に、検察官の不起訴判断を不服とする者の求めに応じ、判断の妥当性を審査するのが、検察審査会の役割である。これは、アメリカの大陪審制度を参考にしたものである。
司法に一般国民の常識を反映させるという目的で、検察審査会法第4条により、各検察審査会管轄地域の衆議院議員の選挙権を有する国民の中から、くじで無作為に選ばれた11名で構成される。任期は6か月で、そのうち半数が3か月ごとに改選される。審査員が欠けた場合に備えて、補充員がいる。(ウイキペディアより)

 
 
今回検察審査会が国会議員を強制起訴とするのは初めてのケースで、「検察審査会の人選のやり方や議事進行のやり方が不透明で審査のありようが分からないため、国会などの場で公にする手だてはないものか」と検察審査会制度の見直しを求める声があっちこっちで上がっている。

抽選で選ばれた、たった11人の「善良な市民」が完全な密室のなかで審査を行う。そこで行われていることは誰も知ることができない。憲法で保障されているはずの不利益処分に対する当事者への「告知と聴聞」も行われることは無い。
この審査は全くの密室で行われる。ここが裁判員制度と違うところで、憲法違反の可能性が高い制度であることも誰も問題にしてこなかった。そして、どんな議決がされているのかも一般市民は知る由も無い。有名事件の議決要旨を報道で知ることができるだけだ。このままでいいのかいささか疑問である。



◇ 民主党は溶解していくのか?


民主党元幹事長小沢一郎が問題の検察審査会によって強制起訴された。いうまでもなく西松事件の時に大久保氏を取り調べたのが前田検事で、検察はこれを立件できずに政治資金規正法によって記載漏れと言った微罪で追及したが、これも
不起訴になり、その後この審査会は問題の前田主任検事の作成した調書をもとに起訴相当の審判を下した。当然過去に扱った疑惑の前田検事取扱いの数々の事件の洗い直しをしてから審査に入るべきところ、民主党代表選の最中に審判は下っていた。
民主主義の名のもとこの検察審査会という制度が政争の具に使われる危険性は高い。審査会が取り扱った一般の案件とは格段に違う、政局を動かす審判が、今回平均年齢30.2歳の抽選で選ばれた連中によって密室で決められたこと自体異常な事である。

小沢一郎は以前、市民団体が小沢氏を起訴するよう検察審査会に申し立てたことについて、「検察審査会で議論してもらえばいい。ただ、政治とカネをめぐり、与野党でいろいろな問題が出たが、強制捜査によって不正なことをしていないことが明らかになったのは、私だけだ」と述べた。

しかし裁判決着に至るまでの道のりは遠いし、国政にとっても時間の浪費が続く。判決が出るまでは被告人とはいえ推定無罪の人間に離党勧告や議員辞職などを口走るのは早計というものだろう。小沢の動向次第では民主党は分裂解散の危機に瀕する。

今の執行部の、国民に見透かされたご両人ではこの先の政治運営が思いやられる。今回の温家宝首相との偶然を装った会談もわざとらしく、小賢しさだけが目につく。政局は早い時期に賢者が知恵を出し合って大連立に進むのか、日本沈没に進むのか予断を許さない局面に来ている。

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