2010年2月13日土曜日

貧困ビジネス





イギリスの古典派経済学者であるアダム・スミスは『国富論』の中で「1人の金持ちが存在するためには、500人の貧乏人がいなければならない」と述べているが、その言葉は現代でも通用するようだ。

現在の日本には、正社員と非正規雇用労働者のダブルスタンダードが存在する。前者には高度成長期につくられた手厚い保護がなされ、後者はそれを支えるためだけに使い捨てにされる雇用状況である。
日本経済の低迷と格差社会の広がりに伴い、生活保護世帯も年々増加している昨今、これら生活保護受給者や低所得者やホームレスの人たちを相手にしたビジネスが横行している。

そのうちのひとつに無料低額宿泊所がある。これは従来社会福祉法第2条第3項第8号に基づく事業として、ホームレス・野宿者等生活困窮者の自立支援を目的に、無料または低額料金で提供される一時的な住まいである。これらは民間によって運営されているものや 社会福祉法人やNPO法人のような法人格を有するものから任意団体までさまざまであるが、都道府県知事への届出制であるため、個人でも開設が可能である。

法律上は「無料」とついているが、実際には生活保護を受給してそこから利用料が支払われるので、実態としては「低額宿泊所」が正しい。住むところを貸すことで生活保護費の受給を可能にし、運営する側はそこから安定的な収入を得ていくシステムになっており、生活保護費から住宅費、食費、光熱費、共益費などを支払うことになっている。高齢化や貧困化に対応しきれない行政の隙間を埋めている側面があるこれらの施設の中には、生活保護をピンハネするような悪徳業者も紛れ込んでくる。現在、「低額宿泊所」は全国に439カ所あり、1万4000人が宿泊している(2009年6月現在)。うち170カ所、4700人が東京都にいる。千葉県、埼玉県、神奈川県を含めた1都3県で全体の8割を占める。

一方、フリーターや派遣切り、また就職氷河期によって取り残された若年ワーキングプア(働く貧困層)のための簡易宿泊施設「レストボックス」というビジネスの実態もあり、1日1000円、平均して大体1日1780円~1880円程度が多く、一泊目は無料。いわゆるマンガ喫茶やインターネット喫茶で寝泊まりし、完全にその日暮らしとなって社会問題化している宿無しフリーターたちをターゲットにしている。

本来インターネットカフェは、他の貧困ビジネスのように社会的弱者を標的にして営業しているわけではないが、しかし、一部には「ネットカフェ難民」を主な“収益源”にしている店も存在している。1か月3000円で「店の住所」での住民票の登録と郵便物の受け取りを代行するサービスも実施しているところもあるほどだ。

ゼロゼロ物件

「敷金・礼金」が不要であるため一見格安費用で居住できるとして、非正規労働者のような低所得者に利用されるようになっているのがこれだ。しかし、派遣切り等の事由から経済的に困窮し家賃の全額もしくは一部でも滞納すると、違法でもある莫大な違約金を請求され、無断住居侵入、借家からの締め出しや鍵の無断交換、家財の没収や無断遺棄、「追い出し屋」による嫌がらせ等、利用者の同意や交渉の余地なく即時行使されるというケースが相次いでいる。


医は算術か?

医は仁術なりといった言葉が死語になりそうな話を2つ。

貝原益軒の養生訓[正徳三年(1713)]では、「医は仁術なり。仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし。わが身の利養を専ら志すべからず。天地の生み育て給える人をすくいたすけ、萬民の生死をつかさどる術なれば、医を民の司命という、きわめて大事の職分なり」と述べられている。
最近起こった医者がらみの事件でひどいのが2つある。いずれも金に異常なまでに執着した銭ゲバ医者の話である。

◎ 奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」が生活保護受給者の診療報酬を不正に受給していたとされる事件で詐欺容疑で同病院の理事長、山本文夫容疑者(51)が逮捕された。
 不正受給は患者14~15人分の1000万円以上にのぼることが確認されており、捜査資料によると、山本容疑者らは平成17年から18年にかけ、患者に心臓カテーテル手術をしたように装い、診療報酬数百万円をだまし取った疑いが持たれている。いずれも生活保護受給者の医療費は全額が公費で賄われることになっていることを悪用したもので、生活保護受給者が患者の大半を占めていた。
中には必要のない手術までして患者を死なせたり、同病院関係者は生活保護者相手に入院を勧誘するなど“営業”もしており、やることがえげつない点では、ずば抜けている。

◎ 横浜市の菅谷クリニック これはさんざんTVで報道されたのでご存じだろうが、我が家の近所にある美容クリニックで、同じく診療報酬の不正請求で逮捕されている。院長は旧厚生省OBの菅谷良男で、名前だけみると良い男らしいが、これもえぐい男である。宗教法人「 宇宙教団錦教会 」の代表といった別の顔をもつ菅谷は、患者のアザやシミをみつけては治療を長引かせ金を儲けるといった事案で、訴訟問題も多く抱えていた医者である。だいたい金にまつわる宗教はカルトを含めろくな宗教はない。余談になるが民主党が宗教法人の課税強化を画策していることに、戦々恐々としている宗教団体は大小を問わず多いはずである。これも時代の趨勢であろうか。

0 件のコメント: