2009年11月11日水曜日

アートな話 図案の原点 






画像1
 



 1960年代にフランスの数学者マンデルブローにより導入された幾何学の概念に、部分が全体と相似(自己相似)となるような相似形の図形にフラクタル図形というものがある.
マンデルブロー集合という終わることのない無限に込み入った複雑な模様は、デザインの世界でも多く見られる。人によってはこれを神の原理を発見したものと言っている。そしてマンデルブローは「自然はフラクタルである」、つまり自然の形成原理は「自己相似性にある」と言っている。一度フラクタルの目を持つと自然界の至る所、そして宇宙にもフラクタル図形を見いだす事ができる。良く観察すると、どの一部にも全体の構造が見出せるのである。樹木の分布、神経の樹状突起、、血管分布、大脳の溝、リアス式の海岸線や雲の形、ブロッコリー、玉ねぎ、宇宙の構造・・・などなど・・に見る事ができる。
例えば画像1の図形の全体構図をそれぞれに枝に置き換えてみると図形のようになっていき、更にその小枝に全体の構図をどんどん置き換えてゆくと、図のようなデザインが完成する。
画像2

宇宙の構造を密教では曼荼羅(まんだら)というフラクタルな図形で表現している。マンダラとは古代インドのサンスクリットが原語で「本質を表示(表現)せるもの」と言う意味で、どちらも中心に座すのは「大日如来」と言う宇宙最高仏となる。 マンダラの原理は「中心の原理」と言う常に変わらない原理の中にある。
宇宙と人間(小宇宙)と言う概念を密教では「私達人間それぞれに大宇宙が含み込まれており、この自分が宇宙そのものであり、宇宙そのものが自分自身である」と教えており、これは正にフラクタルの概念である。



同じことを仏教では「三界(現世)は唯心の所現」と表現している。これは、この世の一切の現象は自分の心が作り出した仮想の世界で、自分の想念を変える事で世の中(仮想の世界)はいくらでも変える事が出来ると言っている。数千年の歴史を有している仏教(近代科学はたかだか百数十年であるが)の仏典とも言える「般若心経」はキリスト教の聖書に当るものだと言える。般若心経の中では「色即是空・空即是色(しきそくぜくう・くうそくぜしき)」と教えている。ここで言う「色」とは宇宙の森羅万象、あらゆる物質存在を指しており、「空」とは宇宙(空間・真空)の事で、 つまり「この世のあらゆる物質存在(色)を生じさせている究極物質こそ空間(空)であり、万物(色)はまた空間(空)に還ってゆく」と言及している。




画像3

さて、我々になじみの深い画像3の唐草模様であるが、紀元前から世界各地で存在しており、これもフラクタルな要素を秘めている。唐草は古代エジプト時代に始まるといわれている。自然界の渦や蔓草などから発生した古代の唐草文様はシャーマニズム(呪術的、霊的な思考形態)から発し、古代エジプトからは睡蓮の唐草、神秘の蔓はペルシャ、インド、中国を経て日本にたどりつく。悠久の歴史のなかで一方ではロマネスク、他方ではアラベスクへと変容していく唐草は人々の目を魅了する力をもった文様でもある。19世紀末に文様史研究の口火を切ったオーストリアの美術史家アーロイス.リーグルは、唐草創造の長いプロセスを要約しながら、唐草は古代エジプトにおいてロータス(水連)から出発したのではないかと指摘する。そして、紀元前2000~1400年ごろの石碑や食器に側面系のロータスの花が文様として使用されていることなどから、そのロータスの側面系の萼とロゼットの正面系の花冠が融合しエジプト様式のパルメット唐草が完成してゆくという仮説を立てた。上の画像の最後にに唐草文のバリエーションを載せてみたので見ていただきたい。

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