2009年5月9日土曜日

末期資本主義


最近巷でよく耳にする言葉に肉食系、草食系と言う言葉がある。言葉のイメージからすると肉食系は食うか食われるかの弱肉強食の世界で狩猟民族が思い浮かべられ、草食系はあまり他者に対して侵略を犯さない農耕民族の害の無いおとなしいイメージが喚起されるが、一般的には男女の行動パターンの分類に使われているようだ。今、若者の間では草食系男性に肉食系女性と言った傾向が増えているらしい。

これを世界の趨勢である資本主義に置き換えてみると、資本主義発祥の西洋の風土は、搾取するか、されるかの「二者択一の世界」である。欧米の資本主義に日本型資本主義の「共存共栄」はない。過去の歴史からも推察できるように、欧米の列強は植民地を広げ、あらゆる地域の経済的な搾取を続け、冨の肥大化を図った。

欧米型経営が、利益至上主義という強者のための契約関係に対して、異文明の日本では、労使の共存共栄という信頼関係を築き、 日本型経営は欧米企業とは正反対の道を歩んだ。欧米が簡単にやる首切りをしない代わりに、それ以外のありとあらゆる方法でコストを削減し、利益を出すことを目指した。労働者とは対決せず、会社のために勤勉に働かせることで利益を上げようとしてきた。

資本主義は、自国の産業を発展させ、他国の産業より常に一歩リードすることで、富の独占をはかるシステムである。そのため産業が停滞してしまうとすぐに追いつかれ、限られた富の配分からの排除がはじまる。
欧米の資本主義では、弱者は常に搾取され、切り捨てられる運命にある。欧米の会社は、労働者を利用するだけ利用して捨てるので、労働者の方も、会社を自分のキャリアを積むための場としか考えていない。だからキャリアを積んだものは、少しでも給料のいい会社をと渡り歩こうとする。近年では、頻繁な首切りと引き抜きと転職のせいで、熟練労働者の数が減少し、逆に仕事に不慣れなものや、熱意の欠片もないものが増え、産業が底辺から揺いでいる。

近年欧米型資本主義が浸透してきた日本の産業界も、昨今の経済危機の局面で、製造業を中心に容赦ない労働者のリストラが始まっている。欧米の金の亡者たちが引き起こした今回の金融危機は、西洋型資本主義の金のためなら何でもやると言った、限度を知らない暴走した資本主義の結末でもある。


仏教の教えの中ですべての基本になっているのが、中庸(中道)である。ブッダが修行の中で悟った「何事も程々がよい」という教えは、仏教と融合した儒教でも、「過ぎたるは、及ばざるがごとし」と説かれている。このような思想とは、正反対な道を歩んだのが西洋文明だった。何事にも限度というものを知らないため、ついやり過ぎてしまう。やり過ぎて暴走するのは、中庸という一番大事なブレーキがついていないからである。
文明を暴走させる原因は、限度を忘れさせる飽くなき欲望と競争にある。西洋文明は、欲望の固まりである金儲けを基準にして競争させるので、一度走り出すと止まらなくなってしまうのだ。
歴史上最悪の資本主義の形態は奴隷制度である。世界の弱小国家から労働力(人間)を強奪あるいは売買し、一握りの富裕層[国を動かす階層]の富を肥やして拡大していくシステムを我々は歴史で学んだ。今我が国はアメリカと言う金権国家の経済奴隷でもある。

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