2009年4月28日火曜日

国内景気



政府は27日2009年度の国内総生産[GDP]成長率の政府経済見通しを実質でマイナス3.3%に大幅に下方修正した。追加景気対策効果を見込んでも、09年度の日本経済は戦後最悪の水準になることを政府が認めたことになる。同時に先進国の中でこの数字は最悪の経済状況を示している。今年度は史上はじめて新規国債発行額が税収を上回り、政府予算の最大の財源が「借金」と言う非常事態に陥る可能性が出てきた。(読売新聞) 
写真は白川日銀総裁


昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が戦後2番目の落ち込みとなった要因は、世界同時不況と円高による輸出の激減だ。昨秋、米国でリーマン・ショックが起きた当時は「対岸の火事」との見方さえあったが、“震源地”米国をはるかにしのぐ日本のGDP悪化幅は、輸出に依存する成長モデルのもろさを浮き彫りにした。政府は今後、追加経済対策の策定を本格化させるが、当面の景気浮揚策だけでなく、今後、過度に外需に依存する経済構造からの脱却が求められている。

09年の世界経済は絶壁の淵に立っている。世界の経済成長は第2次世界大戦後初めてマイナスになる可能性が出てきた。金融危機収束のメドが立たず米経済の回復は2010年以降にずれ込むとの見方が強い。そのうえ回復後も米国は世界の最終消費地にはなり得ないとの見方もある。外需という成長基盤を失った日本は4月以降も年率で2ケタのマイナス成長になる見通しで、不況克服には外需依存からの脱却が不可欠となる。


わが国は、既に人口減少局面に入っており、しかも少子高齢化が世界最速のスピードで進行している。人口が減り始め、年金生活者の割合が高まると、国内の個人消費には高い伸び率を期待することは難しくなる。2002年から2007年まで続いた、わが国の景気回復過程の多くの部分は輸出に支えられていた。具体的には、米国の消費ブームと中国の投資ブームによって、わが国の輸出が伸びたことが景気回復の起動力だったといえる。そのため、世界経済が落ち込み、輸出が減少すると、わが国の経済に大きな悪影響が及ぶことになる。
 逆の言い方をすると、国内に強力な消費セクターを持っていないわが国は、世界経済の動向の影響を受けやすく、その輸出の中でも自動車、電機、機械、鉄鋼の四つの業種が大きな比重を占める産業構造になっており、産業の分散の度合いが低いから今回のように、世界経済の下落によって、主要四業種の輸出が痛手を受けると、輸出全体に大きな影響が出ることになる。特に“20世紀最大の産業”といわれてきた自動車産業は、構造的な変化に直面していると考えられる。20世紀を通して相対的に安価であった原油に依存して、主要国の自動車メーカーは高い成長率を実現することが出来た。ところが、原油価格の高騰や、人々の環境問題に対する意識の高まりによって、現在、大きな転機を迎えている。

2009年4月24日金曜日

米国覇権の終わりに来るもの



ロシアの国土は日本の45倍あり、米国の2倍もある。その殆どがシベリアのツンドラとしても、途方もなく広い。およそ一国の政治体制で仕切っていくのはウオッカにやられた凄腕エリツインも骨が折れたに違いない。彼の晩年は20世紀最後の12月に腹心のプーチンに権力の移譲がおこなわれ、21世紀プーチンの時代は始まった。


ロシアは100民族以上ひしめきあってる多民族国家で、オーストラリアやアメリカのように移民で多民族国家になったのではなく、土着だけで100民族いるというからとんでもない国である。圧倒的多数はスラブ系のロシア民族だとしても、辺境や周辺には聞いたことないような民族や文化が沢山ある。
ゴルバチョフからエリツィンの改革は、共産主義国家ロシアに大いなる混乱をもたらした。恐怖のソ連共産党支配というタガが外れ、ペレストロイカ[改革]の名のもと経済もメチャクチャになった。.当時のロシアの政治状況は、エリツィンらの市場経済移行派、共産主義に戻ろうという復古派、それに加えてソ連以前の古き良きロシアに戻ろうという民族派の3つが暗闘を繰り返していて、西側としては共産主義社会に戻らせないためにもエリツィンに頑張ってどうにかして社会主義に訣別して、市場経済に移行してもらいたい志向が働きIMFや世界銀行もどんどんロシアに融資した。




ソ連は建国以来最大の経済危機を迎えた1985年、ゴルバチョフがソ連の最高権力者、共産党の書記長の地位につきペレストロイカ[改革]を遂行し、共産党のみならず、国家体制さえも改革するような渦の中に巻き込まれ、やがて保守派のクーデターをおさえた強硬改革派のエリツィンの登場を呼んだ。エリツィン時代のロシアは「西欧の資本主義システム」を無防備に輸入した結果、国家の富を横領して短期間に肥え太った新興財閥オルガリヒやマフィアが生まれた。
国家の財政は破たん、庶民は「餓死寸前」まで追い込まれ治安は乱れた。軍や治安機構も崩壊したエリツィン時代のロシアで市場経済移行の中、ロシアの新興財閥オルガリヒの勢力は、金融業のみならず旧政府系の各産業、さらにはTV局や新聞などのメディアを押さえていった。自由に世論操作出来るようになったオルガリヒは共産主義に後戻りしないようエリツインを後押し市場経済に突き進むが、ロシア経済は混迷を極め、アジアの通貨危機が飛び火した1998年8月には、ついに資金繰りに窮し、ロシア国債の支払いを90日延期するというモラトリアム宣言をした。事実上のデフォルト(債務不履行)にまで陥り、この時点でロシアは国家破産状態になった。






ソ連崩壊によってロシアは政治・経済・軍事・治安・国民生活など全分野で崩壊した。エリツィン時代の「失われた10年」を経たロシアにおいては、独裁者が強権政治を担わざるを得ない必然性があった。プーチンはロシアの特殊事情が生んだ「時代の申し子」である。プーチンが思い描くロシア像は「威厳に満ちた強いロシア」である。当面の世界戦略は「米国の一極支配は認めない。米ドルを基軸通貨の地位から引きずり落とす」ことである。この世界戦略にそって、米国への対決姿勢を貫徹している。
姦雄とは単なる英雄でもただの悪党でもない。権謀術数にたけ、善人をあざむき、天下に覇を唱える強烈な個性の持ち主のことである。三国志に出てくる曹操は当代一の戦略家であり、最近見た映画レッドクリフにも登場していてプーチンにかぶるものがある。

世界は今、経済だけでなく政治や軍事も大変動の時代に突入した。世界の政治地図は時々刻々変動している。米国は今や軍事力だけで覇権を握っているに過ぎない体力の弱った国家である。超大国であった時代の米国は「中国の反米行動」を容認することができた。だが今や、中国は外貨準備高世界第1位、経済力は世界第3位、軍事費は世界第2位で、名実ともに米国覇権に挑戦し、米国覇権を脅かす巨大なモンスターに成長した。




周知のように欧米日5か国で始まったサミットは、世界経済に占める欧米列強の比重が低下するに伴い、約10年前から重点をG20に移すようになった。G20は、アジア・豪州地域が8か国、アメリカ南北大陸が5か国、ヨーロッパ地域がロシアとEUを加え6か国・地域、アフリカ大陸が1か国である。世界経済の重心が大西洋からアジアに移動したことが反映されている。「文明の衝突」の著者ハンチントンがいう「西洋の没落・アジアの台頭」がサミット参加国でも実現した。
一方、米国とEUの主要国は北大西洋条約機構(NATO)という軍事同盟の同盟国であり経済関係も濃密である。EU特に独・仏・伊とロシアは経済的な相互依存関係にある。ロシアはEUとの貿易で稼ぎ、EUもロシアのエネルギー資源への依存度が高い。世界の準基軸通貨ユーロを発足させ米ドルの基軸通貨体制にクサビを打ちこんだ独・仏は、いよいよ政治的分野においても主導権を握る時代になったとの認識でいる。




昨今のロシアにとっての原理原則は「米国の一極支配を許さない」という一点に集約できる。そのため原油取引をルーブル建てにしたり、イランやベネズエラなどの反米国家に対する最新兵器の売却を推進している。ロシアは世界最大級の天然ガスの資源国でサウジに次いで世界2位の原油生産国である。現在エネルギー資源大国であるから「資源価格高騰」で潤っている。EUのエネルギー消費の約30%を供給しているといわれるが、東欧諸国においてはエネルギー資源のほとんどをロシアの原油や天然ガスに依存している国も多い。これら諸国にとって、ロシアからのエネルギー資源の供給が停止された場合、国家経済が破たんする。ロシアはとりわけ東欧諸国の経済に対する主導権を握っている。またロシアの動向によっては国際的な原油価格に影響が出る可能性がある。
 ロシアはNATO加盟を掲げる親欧米政権を崩壊させ、ロシアを迂回する石油と天然ガスのパイプラインが経由するグルジアを旧ソ連時代のように支配下におく思惑がある。そのためグルジア問題は、キューバ危機以来45年ぶりに米国とロシアが直接対決する構造となった。衰退する覇権国家米国に勝負を挑む新興大国ロシアという図式だ。「冷戦時代」というのは、米ソが「共倒れを回避しつつ、勢力圏を拡大又は守もるための局地戦を行う」構図であったが、これは新たな経済冷戦のはじまりでもある。プーチンのもと大統領のメトベージェフは影が薄い。優秀な法律学者の彼は米国の絡んだグルジア問題であっさり停戦合意をしたのでプーチン(皇帝)の怒りを買った。ロシアの政局はプーチンの隠然たる力で支えられている。

フランスの歴史学者エマニュエル・トッドの言葉「世界は米国なしでも生きていけるが、米国は世界なしには生きていけない」と言う辛辣な批判は、米国の属国である我が国の政治家も肝に銘じなければならない言葉でもあろう。

2009年4月11日土曜日

アートな話 「東西の天才」


先日、BS放送でルネサンス3大巨匠の光と影と言う番組を見た。3大巨匠とは絵を描く科学者レオナルドダビンチと絵を描く彫刻家ミケランジェロと画家のラファエロである。いずれも私が1986年にイタリアに旅をした時に、三者三様の作品を間の当たりに見た感動は今も思い出す。

放送では絵と彫刻の葛藤の中でライバルであったダビンチとミケランジェロは、お互いにそれぞれの絵と彫刻の優位性を主張している様が描かれているが、視覚芸術において絵画と彫刻の優位性を比べることに果たしてどれだけの意味があるのだろうか。優位性よりむしろ嗜好の問題である。


ダビンチ展は最近日本でも公開されたが、彼は理論モデルや地図、製図といった図的表現と、絵画作品のための構想図、素描、装飾図案といった美術的表現との間の各段階における、さまざまな視覚的表現をスケッチと言う手法で自在に用いている.
ダビンチが扱った数限りないモティーフのうちでも、初期の頃から晩年までほぼ継続して関心を抱き続けたのが「水」である。


画像ではトレコニルの急流を描いたものと対比して、片や日本の天才画家葛飾北斎の鳴門の急流を描いたものを載せてみたが、いずれも臨場感あふれる線描である。ダビンチは川、海、あるいは実験用の水路において水流を観察し、スケッチや記述によって表現し続けた。これらの表現を年代ごとに辿るなら、ダビンチによる、数十年にわたる水の表現の展開を知ることができる。水を初めとする諸対象の「運動」現象は、明らかにダビンチにとって、人体と同じく探求すべき最重要テーマであった。水はそれ自体に固有の形をもたず、ダビンチがその動きを視覚的に表現する仕方には、比較的判別しやすい描写法の展開が見られる。 39 歳頃の水流を表わすスケッチでは、何本も引かれた細い線によって水流が表わされており、一見実際の情景に近い写実的な表現とも見える特徴をもっている。

水が循環する地球と、血液が循環する人体、いずれも科学者の目からすれば興味あるもので、マクロコスモスとしての地球と、ミクロコスモスとしての人間はあらゆる森羅万象を描いた両者にとって語りつくせない永遠のモチーフでもある。水流のもととなる運動は、流れと打撃の他、落下、跳ね返りのときの入射運動と反射運動、渦などの種類に及んでいる。いずれも様式化されたような線描がつづく。

ダビンチは手記「絵画論」1436年の中で「光の入射角によって作られる角度が最も直角に近い時、最も明るい光が見られ、それが最も直角から離れた時、最も暗くなる」と記述している。科学者らしい記述である。
ダヴィンチも凄いが、北斎も凄い。事実90歳で没するまで花鳥画や美人画は勿論のことだが幽霊や古典物語を題材にしたもの、果ては気象の変化の様子まで森羅万象あらゆるものに興味を持ち克明にそして自在な筆で書き残していることはダヴィンチと似ている。

2009年4月6日月曜日

独裁国家の末路



瀬戸際外交と呼ばれるギリギリの戦略を次々と出しては、世界を翻弄させ、北朝鮮という国家体制を維持しようとしている金生日。その海千、山千、北朝鮮の戦略のもとまたまた虎の子のテポドン2号が打ち上げられた。アメリカと同じ土俵に立つために声高に力んで自画自賛の放送を世界に向けて発信する朝鮮中央放送のお馴染みのアナウンサーは、ドンキホーテを来る日も来る日も賞賛して止まない。北朝鮮は日頃から、大げさな身振り手振りで相手を恫喝する手口を多用するから周辺諸国から「また、いつもの手か」と馬鹿にされている。にもかかわらず我が国は早期警戒・情報伝達システムが2度にわたって「発射された」との誤報を流すというチョンボをしでかし、国民をやきもきさせた。
独裁国家北朝鮮は人工衛星は成功したと宣伝しているが、アメリカは軌道に乗っておらず失敗であると言っており、そもそも人工衛星を打ち上げる技術と打ち上げ後の技術環境が出来ていないことから、明らかに大陸間弾道弾であることは疑いの余地は無い。


北朝鮮は「権威も権力」もすべて金正日が独占している。北朝鮮は金正日への個人崇拝と権力の集中で維持されている国家である。誰もこれに代わることができないシステムであるが、権威を継承すべき後継者は育っていない。
北朝鮮が核兵器を保有し続ける限り、日本と韓国は米国の核の傘に依存せざるをえない状況が、日本と韓国を米国の属国にとどめおくことができる楔であることを米国は計算している。さらに、北朝鮮の核は中国の喉に刺さった棘でもある。北朝鮮は2006年10月、核実験に成功した。小型の核爆弾だったと言われるが、核爆発が起きたことは確かであり、これで故金日成主席の遺言通りに北朝鮮は核兵器国になったのである。
このことから米国は北朝鮮の核を、中国、日本、韓国を管理する手段と考えているふしがある。だから、金正日体制が崩壊しないよう100万トンの重油支援を取り決め、米国単独で「人道支援」という名目で、たびたび食糧50万トンを無償で提供していた。一方、日本は、拉致事件の解決までは経済援助せず、という原則に基づいて、事態を静観している
北朝鮮は、中国やベトナムとも、統一前の東ドイツとも違う。中国の場合身近に存在しない米国や日本の高い生活水準と比較しずらいが、北は隣が韓国である。統一前の東西ドイツの経済格差は約2倍だったが、南北間には17倍の格差があると言う。従って北は、この事実を国民に隠して、韓国は「地上の地獄」だと宣伝し続けるしかない。韓国は統一によって自国経済が壊滅的打撃を受けることを恐れている。2007年の韓国議会の推定では、0.8 - 1.3兆ドルという巨額の統一コストによっても、北の生活水準を韓国の半分まで引き上げるだけである。よって韓国は経済援助で徐々に北の経済を底上げさせようとしている。



今回のテポドン打ち上げも、脳梗塞を起こし健康の不安を抱えた将軍様率いる北朝鮮に、崩壊の足音が忍び寄ってきた現在。金正日が最後の賭けに出た様相である。ポスト将軍様の北朝鮮の権力が「暫定的集団指導部」に移行したとすると「扇の要」を失った北朝鮮は各党派に分裂し内紛を起こし、やがて武力衝突が起こるかもしれない。中国、ロシアそして米国が北朝鮮の各勢力を支援して火に油を注ぎ権力闘争がますます激化し朝鮮半島は新たな火種となるだろう。