2008年12月23日火曜日

詐欺列島花盛り


最近、私の生徒の一人が今流行りの振り込め詐欺に会い、危うく騙されそうになったらしいが、手口は初期のオレオレ詐欺で、息子さんの所在の矛盾から難を逃れたそうである。
従来「オレオレ詐欺」別名「なりすまし詐欺」や「架空請求詐欺」「融資保証金詐欺」など詐欺の手口は数多くあるが、私の工房にも時々融資の電話がかかってくる。詐欺の手口の多様化で、警視庁で総称を「振り込め詐欺」と呼ぶことになった。



現在では初期の単独犯や数人での犯行であったものが、徐々に大規模な組織を構成するようになり、組織内でマニュアルを作成したり訓練を行っているとの事例も伝えられる。また、暴力団との繋がりを指摘したり、詐取した金が暴力団の資金源にもなっている。被害者は女性が約7割、60歳以上が全体の約8割。被害世帯の半数以上は、家族構成が65歳以上だけの『高齢者世帯』が多く、地域では関東(特に東京都)が最も多く、逆に京阪神(特に大阪府)では非常に少ない。警視庁の対策ページの分析では「大阪のおばちゃんは金銭感覚が鋭敏であるため、お金に絡む話ではハッキリ物を言い、日ごろから相手に“ツッコミ”を入れることに慣れている」といった気質に基づく要因が指摘されていて、今は亡き私の母親を思い出す。(笑)

昨年は、1万7930件もの認知件数で、約251億円もの被害総額を出した振り込め詐欺ではあるが、近頃は、新しい手口として"還付金詐欺"なども登場し、今年は1~8月の間で約214億円の被害がでるなど過去最悪の状況だ。
詐欺犯罪の背景にはターゲットとなる人の名簿、他人名義の携帯電話、他人名義の預貯金口座などが犯罪の道具として使われている。 名簿、携帯電話、預貯金口座は、振り込め詐欺グループやヤミ金グループの中では「三種の神器」と呼ばれており犯罪を遂行する上でなくてはならない道具となっている。これらの道具は闇で売買されている。


警視庁によると2003年頃からヤミ金業者の一部が振り込め詐欺に移行し始めているが、犯罪者グループは振り込め詐欺の方が検挙摘発されにくく、ヤミ金より「割のいい商売」だと思っているフシがある。ヤミ金も詐欺もいずれもヤクザな商売であるが。



そんな中、現職の京都家裁書記官が振り込め詐欺にあった被害者の凍結口座から、手の込んだ公文書偽造に手を染めて被害金をかすめ取った事件が起きた。ヤクザの上前をはねたハゲタカのような人間が、法の関係者にいたことは驚きである。もっとも警察にもマル暴と言ってヤクザを取り締まる専門の部署があり、どっちが暴力団だか分からないような警官も居ることは居るが。


2008年6月に「振り込め詐欺被害者救済法」が施行され、凍結口座から被害者に金がスムーズに返還できるような仕組みがつくられた。詐欺に悪用された疑いの強い全国約10万件の凍結口座に残されている被害金の残高は実に約50億円。2年かけて被害者に返還するのが目標だ。その流れは次の通りになる。
(1)振り込め詐欺に使われた口座は凍結され、その全体情報が預金保険機構に集約される。
(2)預保はホームページ(HP)で凍結口座の一覧を60日間公表する(公告)。法律上は、口座に金が     振り込まれた時点で、その債権者は口座名  義人となる。預保は60日間の公告の間に債権を主 張する口座名義人が現れないかを確認する(振り込め詐欺犯が訴え出ることはまずない)。訴えがなければ口座名義人の債権は消滅。これによって被害者への返還が法的に可能となる。
 
(3)預保はHP上で口座名義人の債権が消滅したことを告げ、被害者に各金融機関に名乗り出るよう勧める。
 
(4)金融機関での被害確認が済めば、返還される。

今回の事件発覚の端緒は、振り込め詐欺の被害者からの問い合わせだった。「凍結された口座にあるはずの、私のお金がない-」振り込め詐欺にだまされ、金を振り込んでしまった宮城県内の60代男性が、振込先の口座から被害金を取り戻そうとした際、口座に金がないことを不審に思い、その銀行に確認してきてから事件が発覚した。不正を正す側にいる人間がこれをやっちゃーお終いよ!
と言うわけで今年も食品偽装を含め詐欺に始まり詐欺に終わることになった。皆さん詐欺にはくれぐれも気をつけましょう。来年もよろしくどうぞ。
   

2008年12月14日日曜日

イメージの誤算 


 左図 「全体を見れば間違っている」 安野光雅 1977
 右図 「バベルの塔」 ピーテル ブリューゲル  16C




人類を繁栄させてきた想像力[イマジネーション]は時として人類を裏切っていく。21世紀を生きている我々は、100年に一度の体験をすることになる。経済社会を取り巻く世界の環境は日々厳しさを増している。すでにわが国でも主要産業の人員整理や派遣切り、あるいは倒産に至る企業も増えている。まさに2009年は嵐の年になるだろう。

1990年代以降、米国の金融資本は実体経済や作為的に作られた戦争経済で稼ぐだけでなく、[金融工学]と言う名の詐欺的な商いに手を染めるようになった。いわゆるユダヤの金貸し業が古来得意とするカネがカネを増殖する仕組みを、複雑なシステムに置き換え作り上げた。その結果実体経済の何百倍ものカネが動くモンスターが世界経済を凌駕した。



他者に先んじ、利益を独り占めにする貪欲なユダヤの商法は、シェークスピアの「ベニスの商人」でもおなじみである。今後この経済危機を契機に激増する貧困層を抱えていくアメリカ資本主義は、カネが全ての価値観の収縮が加わり、少しは変わっていくかもしれない。限りある金融資本、地球上のあらゆる限りある資源を身の丈で考える叡智を駆使しないと、人類の明日は無いだろう。

経済の基本は数学であり、数学は形あるモノを量の概念として抽象化したもので、それによって複雑な構造をもった関係性を把握しようというツールであるが、これがイメージと言う質の概念に膨らんでいく過程で、金融工学が数字を抽象化しすぎて量の概念を見失い、「実体数字」という「量の概念」が全く見えなくなっていった所に、イメージの錯誤が引き起こしたアメリカの金融危機が始まった原点があった。


16世紀ルネサンス時代の画家ブリューゲルが描いたバベルの塔は余りにも高い建造物を造ったがゆえに、自らの重さを支え切れずに崩壊したという。私には今日のアメリカが築き上げた資本主義経済は、バブルの塔ではなかったかと思うことがあるが、洒落では済まされない時代である。アメリカを代表とする人類の傲慢に神の鉄鎚が下ったのだろうか?

2008年12月7日日曜日

夢追い酒



年末になると落語の芝浜が頭をよぎる。あの拾った財布の大金は夢なのか!?
腕は良いが酒に溺れ、まったく仕事をしない魚屋の亭主。そんな亭主に業を煮やした女房が早朝、無理やり亭主の勝五郎を叩き起こし、20日ぶりに芝の魚河岸に魚の仕入れに向かわせる。


渋々、出かけてみたが、時間が早すぎたので魚市場はまだ開いていない。「女房のやろう、時間を間違えやがったな」と文句を言いながらも、久々に早起きして見る明け方の浜の美しさに感銘する。
魚市場が開くまでと、勝五郎が浜辺で一服していると、浜辺に流れ着いた汚い革財布を見つける。その財布を拾い上げ中身を確かめると、中には大量の小粒金が。慌てて長屋に帰り、女房に財布を見せつけ、「もう、これで当分遊んで暮らせる」と仲間を呼び出し、浴びるほど酒を飲み、またまた寝入ってしまう。
翌日、二日酔いで起きた亭主に女房が「昨晩の酒代の支払いはどうすんだい!?」とカンカンに怒っている。亭主は拾った財布の金で賄えと言うが、女房はそんなものは知らないし、見たこともないと呆れ顔。「そんなことはない!」と女房を問いただし、家中を探すが財布は出てこない。
茫然自失で「あれは夢だったのか」と財布の金を諦めて、今までの行いを悔い改め、女房に酒を断ち、仕事に精を出すことを誓った。
もともと腕の確かな魚屋だったので、懸命に働き出せば、得意先も戻り、以前にも増して客も増えていく。無心に働いた結果、3年後には棒手振り(天秤棒を担ぎながら町内を売り歩くスタイル)から一軒の魚屋を構えることができるようになった。
3年後の大晦日の晩今年の仕事をすべて終え、風呂から帰ってきた後、女房と二人でしみじみと今までの苦労を語り合う。
その際、女房はやおら汚い革の財布を出し、中身を広げる。小粒金で50両近くある。最初はこの大金に皆目検討もつかなかった亭主だが、3年前のことを思いだし、芝の浜で拾った財布が夢でなく本当だったことに気づき、今まで白を切っていた女房に怒りが湧き上がる。ここで女房は嘘のわけを涙ながらに説明した。大家に相談の結果役所に届け、その後月日がたち、落とし主が現れなかったので役所から拾った財布がそのまま戻ってきたのだと。
しかし、財布が戻ってきたとはいえ、せっかく酒を断ち仕事に打ち込んでいる亭主に、戻ってきた大金を見せると、また仕事をしなくなり酒に浸ってしまうんではないかと心配で、怖くて言い出せなかったと、涙ながらに詫びる。この事実を知り、亭主は怒りを納め、嘘をついていたとはいえ、自分を立ち直らせてくれた妻に感謝の意を述べる。

妻は3年間一心不乱に仕事に打ち込んできた亭主を労い「久し振りに一杯どう?」と酒を勧める。はじめは拒んでいたが「もう、あんたは大丈夫」としきりに勧められると、嬉しそうに杯を受け取り「一杯、頂くとするか」と口先にまで酒が注がれた杯を運ぶ。亭主は急に思い立ったように、杯を置く。妻「おまいさん、どうしたの? 」亭主「よそう。また夢になるといけねぇ。」

ここまで来ると女房の鑑と言う噺であるが、うちの奴はどうだろうとふと考えてみると、投機性のあるものに対しては、私が自制の効く人間と認識しているらしく、女房があまりうるさく言わないことをいいことに、過去のゴルフ会員権、金の先物相場、株と大穴をあけて頭が上がらない状況であるが、今じゃしっかり手綱を締められている。男は浪漫、女は我慢は古き良き時代のことか。
この年末は庶民のささやかな楽しみである年末ジャンボでよい年を迎えたいものである。

2008年12月1日月曜日

独立国家の条件





アメリカ政府が毎年10月に日本政府に突きつけてくる『日本政府への米国政府の年次改革要望書』は、日本の産業の分野ごとに、アメリカ政府の日本政府に対する規制緩和や構造改革などの要求事項が書き並べられた文書で、これを読めば数年後の日本を予測できると言われている代物である。
米国政府が日本の各産業分野に対して規制緩和などの要求事項を「通達」する文書で、文中の米国からの要求事項は、日本の各省庁の担当部門に割り振られて実行に移されていく。
こうした外圧の成果は通商代表部の「外国貿易障壁報告書」によって毎年3月に米国議会で報告され、そのうえ日米の担当官が定期的に会合を持って「通達」が実行されたかどうかをチェックまでしているということ。これはまるで「制度化された内政干渉」であり、アメリカの日本改造プログラムの一環である。
ちなみにこの要望書によって実現したおもな法改正には、あの郵政民営化をはじめ、外国企業の活動を助ける商法改正に会社法の制定、人材派遣の自由化。また会計基準の国際統一、司法改革制度など、小泉政権時の構造改革とかなりの部分がダブるわけで、さらには耐震強度偽装事件の一因となった98年の建築基準法改正も、じつは米国の要望だった。


1994年以降毎年出されてきた『要望書』の中で、アメリカ側が日本に要求してきたもののうち、既に法改正や制度改正が行われた主なものは、「持ち株会社解禁」「NTT分離・分割」、「金融監督庁設置」、「時価会計」、「大規模小売店舗法の廃止」、「確定拠出年金制度」、「法科大学院」などで、いずれもアメリカ企業の日本市場への参入条件を有利にするためのもので、アメリカの都合のいい様に我が国の防衛、行政、産業に至る構造改革を押し付けられ、従属国家としてノーと言えないわが国に対する要求は年々エスカレートしてきている。


さて、今起きている世界金融恐慌は、アメリカの覇権の衰退と世界の多極化を早めることを示唆している。アメリカの強大な軍事力は破たんしたカジノ経済と多国の米国債引き受けに支えられた経済力に裏打ちされたもので、米国の現状を鑑みれば、この世界一の債務国が2009年にはディフォルト(債務不履行)になるか為替操作で債務の半分をチャラにするかの荒療治(オバマショック)も想定されている。


戦後我が国がアメリカと結んだ安保条約の第10条には条約の効力が10年間としてあり、期限が来た時に終了意見の通告を行えばその1年後に自動終了となる。歴史を振り返ってみると軍事同盟は両国の利害が一致しなくなった時には破棄の運命にある。
アメリカの覇権が終わった時に我が国は、真の独立国家として、アジアの大国として世界に対峙していくためにも、防衛力[核抑止力]を強め従属国家から脱却の準備をしていく必要があるだろう。今の時代、核は金で買える時代でもある。


戦後60年経った今、アメリカから押し付けられた日本国憲法も軋みが出ている。時代はどんどん変容していく中で、硬直した社会制度や法律、また食糧自給率低下を招いている農業政策などの改革や資源問題の技術開発など、モノづくり日本の下支えをする政策が円滑に遂行されなければ、アメリカに去勢された日本の明日は無い。政治的閉塞感の充満した日本で,口先だけの漫画親父を我々国民は望んでいない。真に強い大和魂と先見性を持った実行力のあるリーダーを望むだけである。
今回囁かれている大連立政権も死に体の自民党にとっては活路になるのではないだろうか?