2015年10月13日火曜日

日本経済雑感

 
●老人栄えて国滅ぶ
 

80歳以上人口が今年初めて1千万人を超え、街でお年寄りが目立つこの頃であるが、経団連のシンクタンク、21世紀政策研究が発表した2050年までの日本と世界50カ国・地域の長期経済予測によると、日本は人口減少の進行で2030年以降マイナス成長を続け先進国から脱落する恐れがあることが分かった。

貯蓄や投資も鈍化し、生産性が他の先進国並みを維持する「基本シナリオ」では30年代からマイナス成長に転じ、2050年には現在世界3位のGDP(国内総生産)が4位に落ち、中国と米国の約6分の1の規模になり、1人あたりのGDPも世界18位と韓国(14位)に抜かれる。
成長率が最も下振れする「悲観シナリオ」では、マイナス成長は2010年代に始まり、GDP規模は世界9位と中国、米国の約8分の1に縮小。経済大国から脱落し「極東の一小国」に逆戻りする可能性があるとしている。
日本の総人口は2050年には、約25%の3,300万人減少し、9,515万人となり,そして、高齢化率は20%から40%へと上昇する。生産年齢人口は、8,442万人(66.1%)から4,930万人(51.8%)となり,15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口を合わせて被扶養人口と言うが、現役世代と被扶養人口が「1対1」になり現役世代の過負担が問題になっている。このことから
生産年齢人口が50%に近づく日本を先頭にしたワースト7を比較したグラフ (団藤保晴氏作成)が上図である。      ●ここでいう生産年齢とは(15歳~64歳)のことである。

日本(50.9%)、スペイン(51.6%)、韓国(53.1%)、イタリア(53.1%)、ポルトガル(53.6%)、ギリシャ(53.8%)、それにドイツ(54.7%)と続く生産年齢人口割合「ワースト7」が世界の趨勢から一段落ち込んでいる。ワースト7は65歳以上人口が各国の水準より浮き上がって30%台になっていて、日本はダントツの36.5%。二番手は韓国の34.9%である。
       

上の図はH26,27年度の総務省発表の我が国の人口統計である。
ちなみに日本では75歳以上が2割を超える恐ろしい事態になっている。2050年は我々ベビーブーマー世代もほぼ死に絶える35年後であり、経済成長などとても望むべくもない状況に陥るのは間違いないところだ。戦後の中核になったベビーブーマー世代が現役から引退して、昨今の社会、経済情勢からみて労働人口の中身はお寒いばかりである。
総務省の統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)は、2015年で「日本の高齢者人口の割合は、主要国で最高」として日本(26.7%)、次いでイタリア(22.4%)、ドイツ(21.2%)などがあがっている。

OECDによる対日審査報告書(PDF)によると、人口減に直面する中で労働力を維持するために、《労働力人口の減少を緩和するため、男女平等の推進が必要である。男性の労働参加率は85%と女性よりも20%ポイント高い水準にある。もし女性の労働参加率が2030年まで男性の労働参加率と同レベルに追いつけば、労働供給の減少は5%に留められ、労働参加率に変化がなかった場合に比べ GDPは約20%高まるだろう》としているが、
  実際にこの大変革は容易ではないだろう。《雇用における男女間格差は、出産後労働市場に残る女性が38%に過ぎないという事実に表れている。

日本は子育てや学童保育に対する支出(対GDP比)がスウェーデンや英国の3分の1に過ぎない。ただし、支出を増やすためには税もしくは社会保険料収入が必要》であり、子育て支援の拡充は遅々として進まない。もう一つの労働力確保手段である外国人労働者の活用問題では、政府も尻に火が付かない限り本腰を入れない状況である。そうでなくても最近の非正規雇用拡大は若い男性から結婚の機会を奪っており、出生率改善どころか更なる低下も考えられ、労働環境の劣化がすすみ、このままの状況が改善されなければ、経済縮小が続き、日本経済に赤信号がともることは火を見るより明らかである。国家100年の計として具体的な実現可能な政策とその実行を示してもらいたいものだ。

さて我が国の経済を概観してみると、バブル崩壊後、25年以上もたった2015年現在になってもバブルの後遺症に引きずられ、未だに日本経済は立ち直れずにいる。立ち直れないどころか長期低迷の底にあえいでいる。
高度成長期に10%以上あった成長率が70年代には、5%代に、80年代には、4%代に、90年代には、1%代、2000年以降は、1%も切って、更にマイナスへと落ち込んでしまった。今日に至る日本経済低迷の伏線として挙げられるのは1985年のプラザ合意が成立する直前の9月には、1ドル241円70銭だったドル円が1週間もたたないうちに210円台まで値を下げ、1986年初頭には、200円の大台を割り込みその後、1988年に120円台で小康状態に至った。プラザ合意に基づく急激な円高によって、本業で利益が上がらない企業が続出し、アジア転出組と並行して、銀行ぐるみで株や土地への投資に奔走する企業が増え、バブルが始まった。やがて1990年代後半になるとバブル崩壊が進み、長期停滞の時代が始まった。

すなわち周知の失われた10年と言われているものだ。さらに2000年代に入ると、同時多発テロ、リーマンショックと世界が翻弄された時代である。国民総所得が20年以上も横ばい状態が続く。この時代も失われた20年と言われ、今日では横ばいどころか下降しているようにも見える。すべてが国内経済から起因したものでなく、グローバル経済下での外的な要因で動いているが、今日の日本経済は上述したように内部構造の土台が揺らいできているため、経済を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。ましてやTPP(環太平洋経済連携協定)などの条約締結といっても、米国自体議会の反対勢力も多く、何よりも秘密裏に進められている条約ゆえに問題点も多く、国内外とも議会の承認をその都度とらなければならず、すんなりと条項が実施されることは未知数であるため、各項目ごとに吉と出るか凶と出るかは現時点では分からない。政府の歳入と歳出の隔たりは非常に大きいまま国の財政は悪化の道をたどっている中、この国はどのように進んで行くのだろうか、、、?




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