2014年3月27日木曜日

アベノミクスの行く末

目の保養 

かつて自国通貨が上がって衰退した国はないが、下がって衰退した国は多い。自国の通貨が強くなって滅びた国は歴史上、存在しないのだ。今となっては円高が懐かしいが、一国の経済は、通貨の価値により大きく左右される。有事の際は、その国の通貨が暴落し、価値が限りなく下がった。実際、ロシアやアルゼンチンなどは国家破産により自国通貨は暴落した。

我が国の貿易統計によると、2013年の貿易収支は11兆4745億円の赤字となり、比較できる1979年以降で最大となった。さらに赤字額が大きいだけでなく、11年以降3年間この状態が継続している。リーマンショック前には、日本の貿易収支は、年間10兆円ないしはそれ以上の黒字だった。それがほぼ同額の赤字に転じたわけだ。日本の輸出立国モデル、貿易立国モデルは、すでに生産拠点を海外に移転した多くの輸出産業を見るまでもなく崩壊している。アベノミクスの金融緩和策で進行した円安は、貿易黒字の拡大どころか,輸入原価の高騰と輸入額の増加による悪影響が出てきた。

これまで南米やアジア通貨危機の頃の東南アジア諸国のように、賃金がぜんぜん上がっていないのに、強烈なインフレに見舞われた国の例は、掃いて捨てるほどあるが、それらの国の場合、インフレのきっかけになったのは自国の通貨安である。自国通貨が急落すると、輸入品の値段が急騰し、それがインフレの原因になる。実際、新興国に限って言えば、インフレの原因の90%くらいは、これである。特に原油など好・不況にかかわらず常に輸入に頼らなければいけない貿易品目がある我が国は公共料金を中心に値上がりが続いている。


東日本大震災の後、企業はさまざまな理由で生産拠点を海外へ移転していった。電力を確保し、停電を回避するため、またサプライチェーンを多様化するため、そして安い労働力を利用するためにこの流れは止まらない。貿易統計をみると、かつて日本が強かった分野である精密機械をはじめ、さまざまな製品が海外で生産され、今、日本はそれらを輸入している。
1970年代のオイルショックでは、日本の製造業は省エネ技術の開発に励み、自動車や家電、情報機器など高品質な製品を作り、それを国内外に販売して利益を上げた。それから40年たち、石油は1バレル20ドルだったものが今や100ドルにもなっている。今や過去の経済モデルは崩れ、ソニーやパナソニックなど弱電の雄も落陽のはざまを漂っている。かろうじてこの春闘で電力大手6社は賃上げを果たしたが、賃上げ率はインフレターゲット2%を追い越せない。トヨタ日産も果たしたものの、世界のトヨタさえ、賃金上昇率は2.87%にとどまる。このように一部の企業を除いて大半の企業は賃上げどころではなく、高度成長期のような物価と賃金の相乗パターンは望めない。



殺到する買い物客
4月からは値上がり物価に3%の消費税が上乗せされるので、いたるところで消費者の買いだめが見られる。庶民のささやかな生活防衛の姿だ。
安倍政権は、デフレ脱却と過度な円高を是正していくことによって、基本方針として「成長による富の創出」という政策目標を実現しようとしている。この政策目標を実現するために、3本の矢すなわち「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の経済政策を実施していくとしている。アベノミクスは曇り空で進行中だが、この暮らしにくい世の中で我々庶民は暗雲が立ち込めないことを願って成り行きを注視している。


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