2014年3月13日木曜日

虚と実三様


ビットコイン

古来、虚と実の世界は至る所にある。言い換えれば、実とは存在であり虚とは無のようなものだ。また虚は無の予兆でもある。目で見える世界や現実にあるから実の世界だと我々は思っているが、最近の社会事象を見ていると虚と実の距離感が短くなった感がする。それはデジタルメディアによる現実を構成する核となる「仮想」空間が蔓延している現代の風潮に現れている。

PCを手に入れた者達はバーチャルな世界を作り出す。デジタルネットワークは今や単なるコミュニケーション手段ではなく、生活の場そのものである。彼らは1日のかなりの時間をネットワークでの生活に費やし、ショッピングもエンターティメントも学習も、社会活動もデジタルネットワークの上で行う。まさに情報世界という本来虚の世界が実に転換していることは、皮肉にも虚のもたらす虚構性こそが実世界を豊かにする糧にもなっている。虚という概念は人間のメンタルな活動を中心にしたイマジネーション(想像)に通じるものがある。


マウントゴックスの記者会見

その虚構性が大きく取りざたされた事件が起きた。インターネット上の仮想通貨ビットコインの取引所「マウントゴックス」を運営するMTGOX(東京・渋谷)が28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日受理されたと発表した。債務が資産を上回る債務超過に陥っていた。顧客が保有する75万ビットコインのほか、購入用の預かり金も最大28億円程度消失していたことが判明した。
消失したのは顧客分75万ビットコインと自社保有分10万ビットコイン。金額にして「114億円程度」としているが、他の取引所の直近の取引価格(1ビットコイン=550ドル前後)で計算すると、470億円前後になるらしい。

ウイッキペディアによるとインターネット上で流通している電子マネー。通貨の単位はBTC。紙幣・硬貨は発行されていないため、「仮想通貨」「デジタル通貨」などとも呼ばれる。流通を管理する事業主体や国家もなく、中央銀行のようなものも存在しない。米ドルや円など現実通貨との交換は、ウェブ上の「取引所」を通して行われるが、決済は金融機関を通さないため、諸経費や手数料などが発生しない。そのため、小口の売買やP2P(個人同士)の取り引き、とりわけ国境を越えた送金・決済に利用されている。
現実通貨との交換レートは、需給関係や経済状況に左右され、投機の影響も受けやすいため、乱高下を繰り返している。こうした為替リスクに加え、資金洗浄など不正な取り引きや、薬物取引などのやばいカネの移動手段の温床になっているという批判もある。しかし、手軽さや海外との取引の利便性の高さが人気で、開発からわずか4年の2013年4月には流通量10億ドルを超えるまでに成長した。
日本においては、ビットコインは電磁的記録として扱われ、通貨として認められておらず、電子マネーとは異なり資金決済に関する法律の対象とはならない。また、有体物でも知的財産でもないデジタルデータは、「物」や「財物」や民法上の「動産」の範囲外と見なされる可能性があり、物権や窃盗罪などの法律の対象とならない可能性がある。現在マウントゴックスMTGの登録者数は現在、世界で57万人。米国人が36%を占め、次いで英国人7%、中国人5%、日本人は約1650人と1%にも満たない。価値を裏付けるものがないため、もともと本質的に不安定な仮想通貨ビットコイン、それを取り巻くこのバーチャル空間の整合性について今検証が始まっている。


STAP細胞

新しい万能細胞として注目されていた理化学研究所のSTAP細胞の論文に疑念が強まり、共同執筆者の山梨大学・若山照彦教授が「研究の根幹に関わるところで信じ続ける事が難しい状況になってきた」と、論文の共同執筆者(2本の論文で計14人)にメールで論文の撤回を呼びかけた。
若山教授は1月29日(2014年)に小保方晴子ユニットリーダーと一緒にSTAP細胞の成果を発表したキーマンの一人だ。その若山教授は「信じられないほどいろいろなデータの間違いが見つかっている。信じ続けるのが難しい状況になっている。いったん論文を取り下げて、間違いのない正しいデータを使って誰からも非難されない論文として発表したほうがこの論文の成果を高めるには大事だろう」と語っている。
浮上した疑惑はいずれも他者の研究からの画像の転用で、要するに研究成果が出なかったのででっちあげたのではないかと各専門家から指摘されている。実験で出た結果ではなく、PC上で作り上げたデータならばこれは大問題。現在、海外のサイトでも大いに議論になっている。

また小保方研究員の早稲田大学在学中の博士論文は、他からの盗用も指摘され、英文で約900字、10行ほどの論文が、ドイツの研究者J・Guoらが05年に国際的な科学誌に発表した 「マウス胎児性幹細胞のマルチカラー核型分析」の論文の一部の「丸写しではないか」と指摘された。一連の疑惑が解明されるまでは時間がかかりそうだが、一度多方面から疑惑をかけられたら、これを晴らすには第三者の実験成功と、使いまわし画像のない精緻な論文を再提出することが求められるだろう、この世紀の発見が虚にならないことを願うが、ご本人の対応も鈍くどういった説明がなされるのか世界が注目している。日本の学会の信用問題にもかかわるので責任は重大である。


ベートーベンのなれの果て

全聾の作曲家にして“現代のベートーベン”と謳われた佐村河内守氏と新垣隆氏のゴースト問題が世間を騒がしている。 2011年に発売された佐村河内氏の作品『交響組曲第一番HIROSHIMA』はクラシック界では異例の18万枚を売り上げ、昨年発売の『鎮魂のソナタ』も10万枚のセールスを記録した。また、佐村河内氏は、ソチ五輪で、高橋大輔選手が男子フィギュアのショートプログラムで滑る『ヴァイオリンのためのソナチネ』の作曲者でもある。
という触れこみだったのだが、それが全部嘘だった。被爆二世として佐村河内氏は広島市に生まれる。4歳のときから母親にピアノを習い、10歳のときにはバッハもモーツァルトも弾きこなし、将来は交響曲をつくる作曲家になることを意識した、と2007年発売の自伝『交響曲第一番』にある。が、その経歴は新垣氏のものだった。
二人の腐れ縁は、佐村河内氏が33歳。新垣氏は25歳で、母校の桐朋学園大学作曲専攻の非常勤講師になったばかりのころから続いていたらしい。
新垣氏は、佐村河内氏が楽譜を全く書けないこと、正式なクラシックの勉強をした形跡もなく、ピアノの腕前も新垣氏の常識では“弾けない”レベルにあること等に気づくが、なあなあの関係が18年も続き、最近の自責の念に駆られての記者会見となった。

ある精神科医によると、佐村河内の人格について『演技性人格障害』の可能性があることを指摘されている。佐村河内氏には、2002年に両耳全聾で2級の障害者手帳が交付されている。これにより、公共料金の割引や、市・県民税の非課税、所得税の控除といったサービスを受けることができる。また、もし受給要件を満たしていれば、障害年金が給付された可能性もある。
だが、全聾が嘘だった場合(詐聴と言うらしい)、佐村河内氏はそれらの手当を不正受給したことになる。その額はおよそ940万相当と計算されているが、これは、詐欺罪にあたるようだ。
新垣隆は全ろうは18年間嘘であると『週刊文春』に掲載された独占手記でも主張した。横浜市による再検査では中度の感音性難聴と診断され、聴覚障害者ではあるが、障害者手帳の交付の対象となるレベルではなかったとし、身体障害者福祉法での「聴覚障害者」には該当しない)との結論に至った。謝罪会見に現れた姿は髪をバッサリ切り髭もサングラスも取っ払ったただのおっさんに戻ったベートーベンの姿であり、そこには謝罪というより自己弁明に終始した姿があった。

0 件のコメント: