2013年12月19日木曜日

増長する中国

建国60周年式典

先月中国は、「東シナ海を中国の防空識別圏に設定する」という中国国防省の発表で、新たに日本に挑発を仕掛けてきた。その後の日米の対応の経緯は、一連の報道のとおりである。
中国国防省が尖閣諸島上空を含む東シナ海を防空識別圏に設定した背景には、日米同盟に対抗する意図がある。日本版NSCに対抗する形で、発表された中国版NSC「国家安全委員会」と並び、習近平政権の日本に対する強硬姿勢を国内外にアピールする狙いがあるようだが、もとより、尖閣諸島上空は日本の領空であり、中国が防空識別圏を設定する権利はどこにも存在しない。中国の行為は、軍事力によって現状の変更を図るものであり、アメリカもB52爆撃機2機が26日に尖閣諸島付近で飛行訓練を行い、中国の脅しに対抗した。

中国は、ほぼ10年おきに支配地域を拡大してきた歴史がある。70年代に南シナ海の西沙諸島、80年代に同じく南沙諸島、90年代に東シナ海という具合に進出し、2000年には西太平洋に出てきている。これらの動きの中で、表向きは資源調査のものもあるが、実際は軍事目的。潜水艦の通り道として海底の構造などを全部調査している様子だ。今年4月には宮古海峡を堂々と中国の軍艦や潜水艦が通過して、西太平洋で大演習をやった。
 

防空識別圏とは、国などの防空上の理由から設定された空域のことである。大半はアメリカ軍によって設定されているが、アメリカ軍の被占領国や保護国が慣例として使用し続ける場合もある。日本の防空識別圏は1945年にGHQが制定した空域をほぼそのまま使用しており、航空自衛隊の対領空侵犯措置の実施空域に指定している。
尖閣を奪い取るため、度重なる領海侵犯に加えて、空でも威嚇、脅しをかける腹のようだが、海上自衛隊護衛艦へのレーダー照射事件の例でも分かるように、憲法9条の制約で先制攻撃ができず、やられた場合の反撃しかできない日本の足元を見透かしているのだ。
声明では防空識別圏を飛行する航空機は中国外務省や航空当局に飛行計画を通報することや、防空識別圏を管理する中国国防省の指示に従うことなどが明記され、従わない場合、武力による緊急措置をとるとしていて、我が国はこれを無視しているが、アメリカは逆の行動に出て、日本は梯子を外された格好になっている。米国債保有国1位の中国を配慮したのかは知らないが、同盟国としての不甲斐なさを見せつけた。


大規模なデモ



中国はアヘン戦争以来、列強から国土が蚕食されたという屈辱の近代史の体験から「力がなければやられる」という危機意識が根底にあり、経済発展とともに軍事力を増強してきた。増長する中国は、経済力に支えられた軍事力が公表されている数字よりも多い軍事費国家予算として計上されているようだ。一方で2012年には、公表された国防費よりも多い国内で起きる毎日800件以上の暴動やデモに対する公共安全費(暴動鎮圧維持費)が約9兆円と言うすごい数字になっている。ではその土台となる国家経済はどうなっているのか。

2008年のリーマンショックで崩壊した経済を再建しようと、各国政府が財政投資に巨費を投じたことは記憶に新しいところである。その中で中国政府は4兆元(64兆円)の景気浮揚策を行うこととなった。しかし、大紀元によると中央政府が投じた資金はわずか2000億元(3兆2000億円)で、残りの約60兆円は国有企業や地方政府が自分たちで資金調達を図って景気浮揚策を実効せよと言うことになった。
ゴーストタウン(鬼城)

そのため、国有企業や地方政府は大銀行から融資を受けることになったが、地方政府は直接銀行からお金を借り受けることが出来ないため、投資会社を経由して調達することになり、その結果、2010年末にはその資金は政府が計画した景気浮揚資金170兆円までにふくれあがり、その巨額な資金が不動産開発や公共事業資金として 市場に投入されるところとなった、というわけである。その結果、各国がリーマンショックから立ち上がるのに四苦八苦しているのを尻目に、中国経済はV字型に回復しGDPの伸び率が一時期12%となって世界経済の牽引国となったのである。それは 一方で中国の不動産バブルを巨大化させ、北京や香港の都市部のマンション価格を急上昇させ、地方都市では、人の住まない巨大な幽霊公団住宅が あちこちに出現するところとなった。


第一生命経済研究所資料
ところが、最近になって国有企業や地方政府が集めて投資した資金の総額は10.5兆元どころか、なんと30兆元(480兆円)を超えていること が明らかとなったのである。この金額は中国GDPの55%に当たり、日本の国家収入の10年分というからとんでもない金額である。これだけの資金が不動産関連に投資されたのだから、巨大バブルが発生して当然である。
この膨大な資金の流れを追っていくと、そこにシャドウバンキング(幽霊銀行)なる存在が浮かび上がってくるのだ。地方政府の役人達にとって大量のカネの流れは得るところが多く、また中小の地方銀行にとっても不動産開発や公共事業への融資はうまみのある商売であった。高金利で融資が出来るし、地方政府の保障が得られるからである。そのため大量の資金集めのため、 新たな投資信託会社なるあやふやな銀行もどきの会社を設立して、一般の欲の皮が突っ張った民間大衆投資家たちに理財商品という高利回り商品を販売してきたのである。
この理財商品の販売については、これまで中央政府への届け出が義務付けられていなかったため、中国政府の財務省もその商品の販売額がどのくらいの額に達しているのか十分に把握できていなかった。従って、先頃判明した30兆元(480兆円)なる景気浮揚資金の数値も正確なものではなく、更に大きなものになっている のではないかと言われている。そして最近になってこの裏勘定も、とうとう中国の中央銀行が助けない(助けられない)宣言をしたという次第である。

国内融資の82%を占める4大銀行の主な融資先である国有企業のうち、半数以上が赤字とされる。中でも不動産の売れ残りが約60兆円あり、潜在的な不良債権総額は最大約250兆円に達するという。日本のバブル崩壊時の不良債権が約100兆円であったから、驚くべき金額だ。
巨大な資金を集めていた地方政府や国有企業が不動産バブルの崩壊によって一気に破綻し、中国経済の大失速が始まるのは、もはや時間の問題であろう。その時起こることは、民間投資家の暴動と一般庶民の大騒乱、はたまた資金確保のために中国政府が米国債を売りに走った場合は世界経済に与える影響は甚大である。
次の金融危機は中国発になりそうだ、とおおかたの評論家は口を揃えている。

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