2013年11月15日金曜日

他力本願の国

朝日新聞デジタル

この秋に採決されようとしている「特定秘密保護法案」は、所管する内閣官房が、保存期間満了後の文書の取扱規定を盛り込まない方針で、都合の悪いことは秘密にしたまま担当省庁の判断で廃棄される可能性がある。識者からは「国の秘密になるほど重要な情報は歴史に残し、後世の検証の対象にするのは当然」と批判が上がっている。他国に先駆けて情報公開法を制定した米国では、例外はあるものの10年未満、10年、25年と優先順位をつけての自動機密解除が潮流となっているのだが。

2001年にようやく施行された情報公開法は「国民主権の理念にのっとり、情報の一層の公開を図る」ことを目的とし、続いて2009年に出来た公文書管理法は、国の諸活動や歴史的事実の記録であり、公文書は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源とうたっている。政府は国民からの信託に基づいて行政を行っているのであるから、国民に対して情報を提供、共有することは当然の責務である。
先進国としての、我が国の情報公開の遅さは、日本の為政者に、国民に自分たちの為政の情報を与える文化がまったくなかったことを示している。いわゆる由らしむべし知らしむべからずの伝統的な政治である。情報公開法は出来ても、少しでも為政者に都合の悪い情報は公開されていない。ほとんど情報公開法の意味がないような、ほぼ全面にわたって墨で消された「公開情報」を我々は様々な場面で目にする。

公文書管理法は、行政機関等の公文書を対象としており、司法・立法の公文書は含まれていない。また、地方公共団体の公文書は努力規定となっている。消えた年金や、小沢一郎裁判で明らかになった司法の闇などは、すべて情報公開と公文書管理文化の立ち遅れを物語るものである。例えば、3.11以降、原発関係の重要事項を決めてきた「原子力災害対策本部」の議事録も作成されていなかった。これは原発事故以降の最大の隠蔽工作であると言われている。福一の事故のあと、東電や国の隠蔽工作は時間を追って次々にあぶりだされたことは記憶に新しい。

古くは1972年の沖縄返還に伴う密約問題で、政府の「隠蔽体質」が如実に現れた。日本が米国に財政負担することを両政府が合意した密約について日本政府は一貫して否定し続け、2000年以降に米国立公文書館で密約を裏付ける文書が見つかった後も、その姿勢を変えていない。
国民的議論も不十分なまま進められていく昨今の消費税増税・原発輸出・ TPP参加・「特定秘密保護法案」・NSC法案・解釈改憲・新ガイドライン。これらはすべて危機による国民のパニックを利用して、平時なら不可能な改革を実施するフリードマンの経済ショック療法のやりかたを踏襲している。

ところで、この秋にも採決されようとしている「特定秘密保護法案」のルーツは、日米政府が締結したGSOMIA(ジーソミア)にある。これは、2007年5月1日に、日本と米国が「2プラス2」(日米安全保障協議委員会)で協定締結に合意し、2007年8月10日に、GSOMIA(General Security of Military Information Agreement、ジーソミア)として締結されたものである。
同盟など親しい関係にある2国あるいは複数国間で、秘密軍事情報を提供し合う際に、第三国への漏洩を防ぐ協定である。日本は米国やNATO、フランスと、この協定を締結している。この締結の際に、米国から日本での法案化が要請されており、それが「特定秘密保護法案」として現在の臨時国会に提出されようとしている。
つまり日本での過剰なまでの情報統制や国民監視の法案提出には、背後に常に米国の要請や指示があるという筋書きになっている。ほとんどの国家ではスパイ防止法や機密保護法を制定し国益を守る防御策が講じられているが、スパイ天国日本の現状を見て、スノーデンに3万点に及ぶ機密文書を盗まれた米国が要請してきたのは想定されるところだ。



その「「特定秘密保護法案」は、米国の要請を元に官僚主導で法案化が進んでいる。その法案概要では、次の4分野に分けられている。
( 1 )防衛( 2 )外交( 3 )外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動(スパイ活動)の防止」( 4 )テロ活動防止。
この4分野のうち、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあり、秘匿の必要性が特に高いと考えた情報を、行政機関の長が「特定秘密」に恣意的に指定できる。
しかし国民の「知る権利」「取材の自由」は守られる、と言いながらも、その規定がどうにも曖昧で、その定義は解釈によってどうにでもなる。報道に網がかけられた次は、やがてネットで好き勝手なことを言わせないネット規制も始まるかもしれない。

個人にプライバシー権があるように、国家にも「国家機密情報を保護する情報のコントロール権」がある。中国や北朝鮮の工作員や米国やロシア等主要国の諜報員多数が我が国で国家機密情報の収集に注力している状況下で、他国の場合はスパイ活動を発見すれば逮捕又は国外追放処分に付すが、我が国にはスパイ活動を取締まる法律がないためスパイ天国となっていて、最近の中国書記官のスパイに逃げられた事件など、数え上げたらきりがない。

外圧によって重い腰を上げる日本政府は、今回の特定秘密保護法案や、TPP、そして集団的自衛権においても他力本願の政治姿勢は変わらない。我々は民主党政権時代、脱原発を閣議決定する矢先に米国の横槍で頓挫したことを見てきた。今、小泉元首相が即脱原発と声高に叫んでいるが、弟子の安倍首相が米国の圧力をはねのけて閣議決定するのは容易なことではないだろう。 

2013年11月13日水曜日

沖縄駆け足紀行


琉球王朝時代の王宮  首里城

普天間の基地問題で揺れている沖縄に行ってきた。35~6年前に新婚旅行に行った地であるが、沖縄は悲劇の島である。今回は短い期間だったが、たまたま行く機会があったので便乗してカミさんと行ったわけである。沖縄は14世紀頃、琉球王国として栄えていたが、16世紀に薩摩藩に侵略され、明治維新後は日本のものとなった。琉球王国は元来武器を持たない民族で、政治・外交は交易などを通じて中国、日本、東南アジアの国々と平和裏に交流してきたという。首里城に“守礼の門”があるが、これは徳礼を用いて政事を行うという意思表示だそうだ。当時薩摩藩は武器を持ってやって来たので一日で占領された。漆器、陶器、染め織物など文化財を持って行かれた。沖縄人の薩摩に対する敵意はいまだに残っているということらしい。

普天間基地         嘉手納基地


 日本の領土となっても悲劇は続く。太平洋戦争末期の1945年6月、米軍の猛烈な艦砲射撃の後、米軍が上陸、本土防衛の盾になり、日本で唯一地上戦が行われ日本兵・民間人約20万人の犠牲者を出した。米国の占領が続き、1972年に日本復帰を果たしたにも拘らず、米国に基地を提供しなければならなかった。 日本の0.8パーセントしか占めない沖縄の地に、日本にある米軍基地の75パーセントが押しつけられているという。


今回は1泊2日の強行軍だったのでレンタカーを借りてもそう多くは回れなかった。
早朝に家を出て、沖縄に到着したのは11時を過ぎたころだった。1日目は空港から島の西側を回り、宜野湾市にある嘉数高台公園から普天間基地を見て、北に進み「道の駅 かでな」の建物の上の階に嘉手納基地展望スペースがあり手軽に基地を展望することができた。どちらも我々が目にする厚木基地と概観がよく似ていた。ただ写真のように普天間基地は民家の密集地に隣接しており、その喧騒は想像以上だ。日本の防衛の最前線の責務を背負って立っている感じがした。

琉球村        美らうみ水族館

さらに北上し、琉球村や美らうみ水族館を回り、海中道路のある古宇利島に渡り、帰りは沖縄自動車道をひた走り那覇のホテルについたのは7時半を過ぎた頃でハードドライブだった。途中3件の交通事故を見たのも珍しい光景で内地ではあまり見たこともないことだった。確かに沖縄の人々の運転は荒っぽい、普通の車間距離で走っていても左から追い越しをかけてくる。交通手段が限られているのでクルマの数が多いので主要道路の渋滞箇所も多くなる。

国際通りの公設市場         古宇利島


翌朝は島の南から東を周り、10時頃には国際通りで買い物をして公設市場の2階で1階で買った魚介類を料理してもらい昼食を済ませた。ここ沖縄は11月いっぱいまで半袖で過ごせるぐらい暑く、日差しは強くカミさんが日傘を買うほどであった。1時頃にはそこを出発して首里城を見て、一路那覇空港に向かい、定刻より30分ほど遅れて空港を飛び立ち、家についたのは0時近かった。とにかく忙しい旅であった。沖縄のオススメ料理はあまりなかったが、青い海が唯一のご馳走だった。

2013年11月3日日曜日

数字のマジック

あべチャン頼むよ!

2014年4月から消費税は8%に引き上がり、2015年以降に法人税減税が待っている。
アベノミクスの影響で、2013年10月から我々の生活と密接な関係にある保険料や食品価格その他も大きく変わってきた。例えば、年金は10月分から1%の減額、厚生年金保険料は17.12%に引き上げ、食品価格は小麦や乳製品などで1~4%の値上げとなり、年金減額に連動し、児童扶養手当も0.7%に引き下げ。他にも自動車保険料の一部値上げなどが続く。

勤労者の所得が減っていて消費が冷え込んでいるところに消費税アップだ。首相は消費税増税に伴う家計への8・1兆円の負担増からくる消費需要の減退とデフレ圧力の高まりを懸念し、5兆円の経済対策を打ち出した。経済対策の目玉にあの復興特別法人税の来年度廃止など法人関連の減税を餌にして企業の賃上げを誘い、内需の拡大につなぐシナリオを描いているが、イメージどおりことが進めば誰も苦労はしない。
国税庁『会社標本調査』(2011年度分)によれば、72.3%の法人が欠損法人、つまり赤字となっている。法人税の減税と言っても7割以上の企業は法人税を払っていない赤字企業である。経営の苦しい中小企業にとっては何のメリットもない。恩恵を受けるのは一部の黒字企業だけだ。
もとより、中小企業は日本経済を支え、全企業421万社の99・7%、全従業員数4297万人の66%を占めている(21年時点、総務省)。法人税を払っている企業 30% 残りの70%は赤字決算でまぬがれているこの現状。 法人税の減額は海外からの投資を招くというが、大半は金融投資であり、工場や支店を出すことにつながらない。法人税の減税分は企業の内部留保に回す。企業は利益を出しているのだが、それを内部留保という形で貯め込んでしまい、設備投資にも回さないし、賃金にも回さない。利益が設備投資や賃金に回れば、経済の好循環が始まるというものだ。全雇用の3分の2を占める中小企業による賃上げのための経済環境は悪化し、法人関連税の減税で挽回できるはずがない。





菊池英博著「消費税は0%にできる」(ダイヤモンド社刊)によると、主要国の国税収入に占める消費税の割合 は以下のとおり。

国 名   国税の標準税率      国税にしめる消費税の割合  
イギリス      17.5%                 22.5%     
ドイツ       18.0%                  27.0%       
イタリア     20.0% 27.5%             同上
スウェーデン 25.0% 22.1%              同上
日本      4%(5%の内1%は地方税)    22.1%      
アメリカ    消費税は州税で州により違い、国税は法人税と所得税

自公政府とマスコミ、御用学者は国民に次のように宣伝する。
「日本の消費税は5%で主要国と比較して非常に低い。これでは社会保障の財源が出ない。少なくとも10%以上に引き上げなくてはならない。」日本の消費税は主要国の1/4~1/5の税率なのに、国税収入全体に占める割合は既にイギリス、スウェーデン並みの22%になっている。その理由は次のとおり。

日本では消費税の非課税項目がきわめて少なく、税率が低くとも税収金額が多いこと。主要国の消費税(付加価値税)は、教育、医療、住宅取得と関連金融および不動産で非課税であり、また、生活必需品(食料品、医薬品、新聞、書籍の一部)も軽減税率または非課税であり、アメリカでもこの傾向があり、生活必需品はほとんど非課税である。
この点公明党が食品などの生活必需品の軽減税率を主張していることは理解できる。

日本の場合は法人税と所得税の比率が低すぎること。特に1990年度から2006年度までに構造改革で法人税は40%から30%に下がり、所得税は累進税率を緩和し最高税率が07年度には40%までに引き下げられた。そのために、法人税と金持ちの所得税が大幅に減税され、その結果として消費税が国税に占める割合が高くなった。
 このために、日本は低額所得者の税金が主要国で一番高い国になっており、貧乏人は悲惨な状況である。高額所得者に減税する一方で低額所得者に増税し、消費税が3%から5%に増額され、1999年に導入された定率減税も廃止され、2002年度には課税最低限度額が360万円から325万に引き上げられた。

消費税をなくせとは言わないまでも、我々納税者は数字のマジックを理解したほうがよさそうだ。