2013年7月22日月曜日

自民圧勝民主惨敗



報道によると、安倍政権の信を問う第23回参議院選挙が21日投開票された。自民党は選挙区、比例区ともに順調に議席を伸ばし大勝した。公明党と合わせ全議席の過半数を獲得し、国会で衆参の多数派が異なる「ねじれ」状態は3年ぶりに解消。自民党は1強体制を固めた。安倍晋三首相は今後も経済最優先で政権運営に臨むとともに、憲法改正に向けた環境整備を進め、改憲勢力の結集を図る意向だ。一方、民主党は大敗し、参院第1党から転落し、落日の憂き目にあった。
今思うと、民主党は政権時、唐突に消費税増税やTPP参加を表明したり、尖閣問題や内部分裂のごたごたを起こし、政権与党としての覚悟と政策実行力に疑問があり、政権末期には誰が見ても選挙結果は見えていた。

いまアベノミクスは「踊り場」を迎えている。周知のようにアベノミクスというのは、安倍政権が打ち出した景気回復のための経済政策で、この政策には、3本の矢と呼ばれる3つの分野がある。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」そして「民間の投資を引き出す成長戦略」である。前の2つは要するに「ミニバブルを起こす」「バラマキ」といったショック療法で、最後の1つは「日本経済の体質改善」と言われている。インフレ目標2%をお題目に、日銀の黒田総裁は張り切っているが大幅な金融緩和は諸刃の剣で、我々国民はそのさじ加減を注視するしかない。たしかにその効果は、ショック療法で、長らく1万円を割っていた株価は安倍政権発足後に上昇し続け、今年5月にはなんと5年4か月ぶりに1万5000円台にまで達した。今は乱高下しているが、円安の恩恵を受けた輸出業界では好調が続いている。反面円安による輸入物価の値上がりがじりじり続いている。
問題は第3の矢「成長戦略」がバブル崩壊後の失われた20年から脱却できるのかどうかである。
参議院選挙も終わり、ねじれ解消のもと、消費税は先送りされるのか、農業や医療の抵抗勢力を押さえ込みTPPを推進していくのか、憲法改憲を実行するのか、選挙前の縛りがなくなり、安倍首相は思い切った政策に進むお膳立ては出来た。
ただ消費増税を実施した場合に、景気の腰折れ、つまり成長率の低下が起こる可能性がある。13年度は財政出動や円安の効果、消費増税前の駆け込み需要などで、そこそこの成長率が実現できるだろう。しかし、消費税率が引き上げられれば、少なくとも成長率は落ちることは過去の経済指標を見ても明らかである。増税によって景気が腰折れすれば、消費税率を上げても、税収が予想通りには伸びず、かえって財政状況が悪化する可能性がある。そのためそれを補填する第3の矢(成長戦略)を実行することが急務であるだろう。

その一つに農業がある。日本の農産物は質も高い。改革さえすれば、日本の農業は、国際競争力を持つ重要な産業に十分になり得る。そのためにも、まず保護一辺倒の現在の農業政策が足カセとなっている。そして、農業への企業法人の参入、農地集約による大規模化をしやすくすることが必要だ。安倍首相も、その必要性は痛いほどわかっているはずなのだが、それができない。農水省、農協の抵抗が強いからだ。この既得権益に守られた農業を改革するのは皮肉にも外部からの圧力(TPP)かもしれない。
そのTPPだが、第18回交渉会合が7月15日から25日の日程で、マレーシアのコタキナバルで開催されているのに、日本が初めて交渉に参加できるのは、米国の承認手続きが終わる23日午後(現地時間)からであり、米通商代表部(USTR)のフローマン代表が18日、オバマ政権の通商政策について下院歳入委員会で証言したなかで、TPP交渉への日本の参加問題をめぐり、「(まとまった交渉文書の)再交渉も、蒸し返すことも日本に認めない」と述べている。つまり、日本が、最終日の25日までの3日間に基本的な立場を説明し、これまでの交渉状況の把握に努めても、先行参加している11か国(ベトナム、ブルネイ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダ、メキシコ)が、すでに大筋のことを合意しているのであるから、これを覆すのは困難としか言い様がない。
復帰した自民党政権は、安倍晋三首相、麻生太郎副総理らかつて挫折した時と同じ役者が采配を振っている。失敗から学ぶことはあるとしても、急に信条、体質、手法が変わるはずもない。ただ、アベノミクス効果で社会が明るさを取り戻したのは確かで、世間は不安を覚えながらも浮かれ気分が広がっているのが現状だ。野党とのねじれはなくなったものの、今度は自民党内でのねじれが生じ、抵抗勢力をねじ伏せ政策遂行に邁進できるだけの胆力と、内外ともに多忙を極める首相の日常を持ちこたえるタフな体力があるかどうかが多少の不安は残る。前回慢性の下痢で政権を明け渡した過去があるだけに。

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