主役のダニエル.デイ.ルイス |
久々にスピルバーグ監督の最新作の映画「リンカーン」を観た。あらすじは第16代米国大統領エイブラハム.リンカーンが奴隷制度を廃止して南北戦争の終結と、南北統一並びに合衆国憲法修正13条を成立させるまでの苦闘を描いた映画である。
周知のように米国は移民国家で、英国の植民地からの独立を果たした独立戦争以来2度目の戦争が南北戦争で、その背景には北の自由労働に支えられた工業地帯と、南の綿花を中心とした奴隷労働に支えられた農場地帯の対立構造があった。
リンカーンと妻のメアリー |
1860年にリンカーンは黒人奴隷開放政策により北部の資本家から支持を得て共和党大統領になったが、南部の奴隷州は反発し南部連合を作り離反した。
北部優勢のうちに1865年南北戦争は終決しアメリカは統一された。ストーリーでは、上院が可決している奴隷制度撤廃のための憲法修正13条を下院で民主党から20名近く賛成派に転じさせるため。説得、買収、脅迫とあの手この手の政治工作が繰り広げられる。リンカーン役のダニエル.デイ.ルイスも風貌といい体つきといいリンカーンによく似た名優で、悪妻と言われたメアリー役の女優もそっくりさんと言われてもうなずくキャスティングだ。唯一見覚えのある俳優(あのコーヒーBOSSのコマーシャルに出ているトミー.リー.ジョーンズ)の強面の弁舌に長けた、奴隷廃止論者の演技が単調になりがちなストーリー展開を引き締めた。
リンカーンについては、その人物像はいろいろなところで述べられているが、今回の映画はアメリカを南北統一に向かわせた彼の手腕と苦悩を、非常に多忙でしんどい政治家の日常生活を描くことで、歴史の1ページを浮き彫りにしてみせた。
リンカーン自身多感な時期にネイティブアメリカン(インディアン)に一家が襲撃され,
目の前で親父が殺されたこともあって、もともと大陸に住んでいた彼らを多数虐殺する政策をしたことでも有名な大統領で、こういった影の部分は今回のストーリーには入っておらず、また暗殺されたことも、歴史のひとコマとして淡々と述べられているに過ぎず、ドラマティックな仕立てにはなっていないが、政治というものをよく表現している映画である。
◆経済史から見た南北戦争
リンカーンが発行を命じた政府紙幣 |
さて、戦費調達において、リンカーンはロスチャイルドらの提案した金利24〜36%の融資案を拒絶し緑背紙幣と呼ばれる「アメリカ政府券」の発行権限を財務省に付託。
1862年を皮切りに南北戦争中合計4.5億ドルを発行。これらが発行されたことで銀行家はリンカーンに対して憎悪をむき出しにした。アメリカ国民と産業界は緑背紙幣を歓迎。 リンカーンは南北戦争の戦費獲得の為に緑背紙幣を発行する必要があり、議会の銀行勢力に対して一つの妥協を行った。国立銀行法の制定により市場に出回る不安定なドル紙幣を回収し国立銀行が国家紙幣を発行するとしたものである。
国立銀行がアメリカ政府債を銀行券の発行の準備金に充てたことで、アメリカの貨幣発行と政府債はセットになり政府は永遠に債務を返済できなくなる。
昨今のアメリカ経済を見ると、2006年にはアメリカ政府債は8.6兆ドルだったのが、2012年度には、法定上限額である14兆2900億ドルというという天文学的数字にせまっている。その結果連邦政府の国債利払いもすざまじい限りだ。
リンカーンは再戦の暁には国立銀行法を廃案にしようとしたが、再選後の41日後に暗殺された。国際銀行家たちはリンカーンの実施した緑背紙幣をなくす為に通貨緊縮法を可決。通貨流通量を圧縮しアメリカ社会を疲弊に叩き込んだ。
南北戦争前後百年の間に米国政府と国際銀行家の間では、アメリカの中央銀行の構築と金融制度上の重要問題を巡り死闘を繰り広げ、その間に4人の大統領が暗殺され、数多くの議員が暗殺未遂に終わっている。 そして1913年のアメリカ連邦準備銀行(FRB)の設立は国際銀行家が最終的に勝利したことを意味する。 国際銀行家勢力はイングランド銀行の複製であるアメリカ中央銀行の実現に成功した。
ケネディー大統領令で発行された紙幣 |
ケネディ大統領も1963年6月に通貨発行権を取り戻し、政府発行紙幣を流通させるが、半年後にはオズワルドに暗殺され、実行犯も殺されて事件の真相はいまだ闇の中である。ケネディー死亡後、言うまでもなく政府紙幣は即座に回収された。まことに経済を支配するものは世界を支配するものでもある。(3月3日錬金術は止まらない参照)そのことは旧約聖書の言葉「借りる者は貸す人の奴隷となる。」が裏付けている。
0 件のコメント:
コメントを投稿