2013年5月14日火曜日

生き様死に様

星の誕生と死(NASA提供)

人間も世界も小宇宙である。その源である大宇宙では時空を超えて多くの星が生まれては消えていく。進化した星は星の死(爆発)という手段で新しい元素を宇宙空間に作り出す。
150億年といわれる宇宙の歴史は星の誕生と死の繰り返しでもある。生命体としての人類の歴史の長さとは隔たりはあるものの 、両者の存在と無を繰り返す営みはどこか人間と似てないだろうか?人間の体の細胞も無数(60兆)の集合体である。 その個々の細胞にも、主人である人間と同じように、死の時がやってくる。

              アポトーシス                                    ネフローシス


細胞の死には、二種類の死に方があると言われており、ひとつは、細胞自身が外的な環境の変化によって、仕方なく死を迎えてしまうネフローシス(受動的な死)という死に方と、もう一つは、アポトーシス(能動的な死=プログラムされた死)と呼ばれる死に方である。 画像左はアポトーシスを起こした瞬間の細胞、右は毒蛇に噛まれて壊死したネフローシスを起こした少年の足。

アポトーシスとは、細胞が、新しい細胞や主人である生命そのものの成長のために、自ら積極的に死を選ぶような現象である。その時、細胞は、自分自身で自らを殺すための遺伝子にスイッチを入れるらしい。例えば、胎児の手は、丸い肉のかたまりとして成長し、その中の細胞が死んで脱落することによって手の形ができてくる。しかも脱落した細胞は、マクロファージという食細胞によって食べられて、跡形もなく無くなってしまう。これがアポトーシスの完璧な死の姿である。自分が死ぬことで、全体の成長を助けているのだ。
生体は生まれてから成長する過程で、不要になった細胞や害になった細胞を取り除く機構を持っている。また、成長した後も、生体を維持する上で老化した細胞やウイルスに感染したり、がん化した細胞を取り除く機構を備えていて、不要となった細胞を取り除く機構は、「アポトーシス(プログラム細胞死)」と呼ばれている。

生物の発生から進化そして老化から死に至るまで関わりを持つアポトーシス。オタマジャクシの発生に伴う尾の消失、手指形成過程における指と指の間の「水かき」の消失、などのように進化の過程に大きく関与しているということである。太古の微生物の中でアポトーシスという細胞制御機能をもったものが現れ、そして微生物はこのテクノロジーを用いて、よりレベルの高い多細胞生物への進化において、発生や変態という重要なプロセスをらくらくと制御することができるようになった。そしてそのことはとりもなおさず、より適応のレベルをあげる進化に役立ってきた。

人間の場合、新生児や胎児の卵巣には約50万個の卵母細胞があり、思春期までには約16万個ほどまでに減少する。そしてその後、1月経ごとにたった1個のみが成熟して排卵される仕組みになっているらしい。1回1個の細胞を多数の中から選んで大切に使っていく。まさに適応戦略の姿にほかならない。そして残りの卵母細胞は、やがて、アポトーシスを起こして死んでいくというのだ。



ゴドーを待ちながら S.ベケット
我々、今を生きている人間は、地球上で我々がこの世に生まれ出るために、無数の祖先たちのアポトーシス的な死があった。人間の営みは、ちょうど生というタスキをつないでいく駅伝リレーに似ている。つまり我々は、過去の人々から引き継いだ命のタスキを次の世代に、引き継いでいく使命を負っている。自分のルーツを探るとき、ただ戸籍制度が成立していない時代の確認は調査にも時間を要し、江戸時代より遡れば、寺の過去帳をよりどころにするのが実情のようだ。ただ言えることは親から貰った自分のかけがえのない命を、「一日たりとも無駄に過ごすべきでない」ということは自分らしい生き様、死に様を考える場合のキーワードになるだろう。なぜなら皆一様に死に向かって歩を進めて行くのだから、ゴドーを待ちながら,,,,,,,。


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