2013年4月20日土曜日

どうなってんの この地球?


花見の東京と吹雪の北海道

暑さ寒さも彼岸までとは言うものの、今年の天候はいつもと違うようだ。3月に入って観測史上最も早い桜の開花となった東京を始め、関東以南では夏日の気温を記録する一方で、北海道は相変わらず冬の寒さと交通に支障が出るほどの降雪と吹雪の日が続き、いつまでたっても積もった雪の山は消えない。
わずかな緯度の違いで、冬と夏の気候が平行し、また同じ1日でも極端な寒暖の差が生じている。東京では3月10日は、日中の最高気温が25.3となったあと、 翌朝には3.8度まで冷え込みその差が何と21.5度に達している。異常気象を裏付けるなんとも凄まじい温度差である。

富士山林道の亀裂と渇水した河口湖

4月に入っても寒暖の差は大きく、また今年は漁師泣かせの荒天の日が多い。今年に入って相模湾の定置網はどこも近年にない不漁続きで、地元の漁師は頭を抱えているようだ。瀬戸内に春を告げる鰆(サワラ)漁も、今年の漁獲高は不漁だった昨年の1、2割程度という。反面日本海側の各地の漁港は、軒並みマイワシの異常なほどの大漁が続いている。イワシの豊漁期には、マグニチュード6以上の地震が不漁期の2~3倍も多く発生するという定説もあるようで、ここのところの日本列島の群発地震や、富士山周辺の地割れや渇水など何やら不気味である。

目を世界に転じれば、今年に入って世界が異常気象に襲われている。3月中旬には130年ぶりの大雪に見舞われているモスクワでは、3日間で1ヶ月分の雪が降り積もり、ロシア全土では相当数の凍死者が出ている模様だ。オーストラリアでは40度以上の記録的な熱波で山火事が収まらず、アメリカ中西部でも猛暑による大規模な森林火災が起き、ブラジルでは熱波と干ばつに襲われた。中国の南部・雲南省では昨年の10月から135日間、4ヶ月半にわたってまったく雨の降らない日が続いており、大規模な干ばつが広がっている。
蛇行する偏西風

気候変動の厄介な兆候はほかにもある。北極海を覆う氷の面積が、2012年の後半から、過去最小のレベルにまで縮小しているのだ。アメリカ国立雪氷データセンター(NSICD)によると、昨年9月半ばには、北極海の半分近くの海面から氷が消えた。北極海の海水温が上がると北極圏上空のジェット気流のパターンが変化し、低緯度地方でも異常気象の可能性が高まるという説を唱える科学者もいる。ジェット気流の蛇行は一般的に言われているが、そのメカニズムはまだ推測の域を脱していない。
いずれにしても異常気象は年々世界に広がっていることは、単純に地球温暖化だけで解明できる問題ではなさそうだ。3.11で知らされた大自然の脅威を目の当たりにし、為すすべもなく恐れおののく我々日本人を尻目に大宇宙の摂理のもと刻々と地球は日々変動していく。天災を前にしての我々人間の可能な限りの防災はなんとささやかなものであろうか。

2013年4月14日日曜日

漂流する毒


中国発、H7N9型鳥インフルエンザが広がりを見せている。現段階で感染者は北京、上海、江蘇、浙江、安徽の2市3省の49人(うち11人死亡)に拡大。感染がさらに広い地域に及ぶ懸念が強まっている。どうやら今年3月から中国各地の河川に、大量の豚やアヒルの死骸が大量に不法投棄されたことと無縁ではないだろう。一部では異常気象の寒暖差の激しさにやられたと言っているが、定かではない。
上海市の黄浦江では約1万6千頭の豚の死骸が回収された。3月中旬には、四川省眉山市の川で千羽余りのアヒル、4月初めには、江蘇省常州市の黄河の河川敷で百頭あまりの豚、および四川省西昌市の川でも約百頭の豚など、各地で家畜や家禽の屍骸が大量に捨てられる事態が続いている。
近年まで死亡した豚の一部の豚肉が市場に出回っていたというが、元々、「死んだ豚を買い取って食用に回す闇ルート」というのが存在し、それが摘発されたために死んだ豚を処理しようがなくなって川に流した、というのが真相らしい。去年の11月に、闇屋が摘発され数名が無期懲役になったため、それ以降死んだ豚が食用に回らなくなり、そのため死んだ豚が産地で積み上がり始末に困って川に流した、というわけだ。過去にも河川上流の新疆ウイグル地区から流れてきたインフルがらみの死に豚騒動など、毎度の話である。
 

このような家禽が広範囲にわたって大量投棄されている現状について、当局は、まだ大規模感染症の発生を認めていないが、、大紀元によると中国の一部の地域では、すでに昨年12月から家畜間の鳥インフルエンザが大規模に発生していた。今はそれが、中国の東部から西部に拡大している。中国の獣医師が警告しているのは、「中国国内では、鳥インフルエンザが毎年発生していて、H7N9型ウイルスは長年の遺伝子変異の結果だ。そして今回、ついにヒトへの感染に発展した」と述べている。
同氏の情報では、昨年4月から5月にかけて、河北省石家荘市で発生した鳥インフルエンザは最も深刻で、家畜の死亡率は80%に達したという。
また、昨年12月頃から、河南省や、山西省、陝西省などの各地で、ニワトリの鳥インフルエンザが大規模に発生し、陝西省では約50%が病死または殺処分された。
「ヒトへの感染を隠しきれなくなったため、当局は公表し始めた。しかし、そのデータは大きく改ざんされている」とも述べている。
今までの感染例がすべて長江デルタ地域で確認されたことから、3月に長江の支流となる黄浦江などで見つかった大量の豚の死骸との関係も囁かされている。また、3月末に四川省の川で見つかった千羽あまりのアヒルの死骸も懸念を深めた。一方、上海市動物疾病対策センターは1日、豚の死骸を調べた結果、鳥インフルエンザのウイルスは検出されなかったと発表したが、誰も信用していない。政府当局の隠蔽工作から今回の鳥インフルエンザがパンデミック(世界流行)になる可能性も捨てきれない。

一方で豚の品質管理にも問題は多く、病気のないブタにも抗生物質を、病気のブタにはさらに多種の抗生物質を投与したり、ブタの色艶をよくするため、毒性の強いヒ素を投与する養豚業者も少なくないことが判明している。我が国にも何らかの形で輸入されている。例えばソーセージ(豚肉加工食品)。日本の法律では、加熱した豚であれば輸入が可能となっているため、病気で死んだ豚を使っている悪質な業者もいる。亜硝酸塩などの有害物質も使われており、安易に中国産の豚肉に手を出すのは禁物。
  鶏肉も<中国では養鶏場のダニを殺すため、有機リン系の殺虫剤を撒いて鶏肉が汚染される。今年、中国KFC(ケンタッキー)は山東省の業者から成長促進剤を投与した『速成鶏』を仕入れたことが発覚。日本のファーストフードも中国産の鶏を使用しており、要注意だ。

  
また南京市のレストランが鍋料理に旨みを加えて固定客をつかもうと、アヘンの原料となるケシを入れていることが、当局の捜査で判明した。取材を受けた別の店のオーナーは、「これを入れると料理が驚くほど美味しくなる。(中略)ほとんどの店はやっている。そうでもしないと固定客をつかめない」と罪悪感のかけらもない。ケシは鍋料理のほか、串焼きの肉料理にも使われているというから驚きだ。昔から中国人はなんでも食うことで有名だが、さすがに昨今の食環境の悪化から、自虐的な書き込みが目立つ。笑えないギャグがRecord Chinaに出ていたのでご紹介しよう。


■朝起きて、下水油で揚げた揚げパンを食べる(※下水油=使用済みの食用油を下水から回収してろ過したもの)。スーダンレッド(=違法な合成着色料)で染めた塩漬け卵と、メラミンで汚染されたホルモン牛乳を飲む。
 昼は赤身肉に偽装した豚肉と農薬たっぷりのニラを炒めて、人造鶏卵でつくった煮卵を添える。
夕方に退勤したら、避妊薬に汚染された魚と硫黄の混入した蒸しパン、メタノールにすり替えられた酒を飲み、夜食には塩素入りのコカコーラと、革靴ヨーグルト(=革靴から抽出した工業用ゼラチンを用いている)。
 もし気分が悪くなったら皮革カプセル(=廃棄皮革からつくられたカプセル)を飲めばいい。これが中国人の1日。生きているのが不思議なくらいだ!
■猛毒のヘビがいる穴に落ちてしまったアメリカ人と日本人と中国人。アメリカ人は噛まれて神のもとへ召された。日本人は恐怖のあまりショック死した。中国人は(体内に蓄積した毒で)ヘビを逆に中毒死させた。

■人気番組の司会者・周立波のコメント:経済はまやかしで、食品は毒まみれ、欲深い官僚に落ちぶれた文化、外交は最弱で軍隊は脆弱、住宅や医療費はバカ高くて、教育は最悪、就職口はない、犯罪は凶悪で市場にはコピー製品ばかり、環境汚染は悲惨な状態で、労働者が最も苦しく農民が最も貧しい。給与は安くて物価は高い、主義主張はうそっぱちでロジックは貧弱、口はでかいが中身は空っぽ―これこそが中国というものだ。

週刊文春2013.4.4「中国猛毒食品」の特集ではおびただしい数の中国の猛毒食品が我が国に輸入されていることがリストで公表されている。また特集2弾では上海の約100キロ上流にある浙江省嘉興市周辺の農家が、豚の死骸を大量に川に投棄していたことが「週刊文春」編集部の取材で明らかになった。
それによると、豚が死んだら死骸処理のための補助金が貰えるはずが、地方政府の役人がそのカネを全部ポケットに入れてしまうので、捨てる穴を掘ろうにも自分の家の敷地内にはもう埋める場所もないため、やむなく死骸を川に捨てたという例もある。

2013年4月2日火曜日

アートな話「見立て」

ルネマグリット 白紙委任状

ルネ・マグリッド(1898~1967)は、私の好きなベルギーの画家でシュール・レアリスムを代表する画家でもある。
マグリッドの絵は、筆の跡をほとんど残さない古典的ともいえる描き方で丁寧に描かれているが、絵に表現されているのは、「空中に浮かぶ岩」・「鳥の形に切り抜かれた空」など現実では考えられない不思議なイメージで、本人の言葉によれば表現とは「目に見える思考」だそうだ。
「言葉とイメージ」を追求したマグリットの作品は、その後20世紀の商業広告やグラフィックアートの世界にも大きな影響を与え、そのエスプリは現代に生きている。

彼の制作手法は、日本文化の見立て(みたて)に通じるところがある。それはある物の様子から、それとは別のものの様子を見て取ることで、その別の物で対象物を表現する便法である。
「見立て」は絵や彫刻をはじめ、和歌、歌舞伎、茶の湯、活花、造園など、我国において芸術創作の重要な要素になっている。、定義においては「見立て」は「模造再現」のカテゴリーに入るのであろう。
利休 釣瓶水指

見立て」という言葉は、「物を本来のあるべき姿ではなく、別の物として見る」という物の見方で、本来茶の湯の道具でなかった品々を茶の湯の道具として「見立て」て、茶の湯の世界に取り込む工夫をしたのが利休であった。
利休は、この文芸の精神であった「見立て」の心を大いに生かして、日常の生活用品を茶道具に採り入れた。たとえば、水筒として使われていた瓢箪を切り、花入として用いたり、井戸の釣瓶を水差しにしたり、船に乗るために出入りする潜り口を茶室のにじり口に採り入れたりした。

話は変わるが、この見立てが単なるイマジネーションに終わっていないのが、人類の発明した紙幣である。ユダヤ人の発明した紙幣を絶対的な価値のある金(きん)に見立て今日の世界に普遍させたのが最大の見立てである。この現実世界で寄る辺ないひと握りの人種(ユダヤ人)が、長い歴史の中で築き上げた金融システムも見立ての舞台で世界を縦横無尽に支配している。


ソフトバンクCM

一方で、見立ては一種の言葉遊びとしてもよく見られ、比喩遊びとも言う。比喩は直喩(ちょくゆ)暗喩(あんゆ)擬人法の三つがある。日本では文人の遊びとして、ひとつの流れを作っており、芸術表現としても和歌、俳諧、戯作、歌舞伎などで広く見られる。
 芭蕉の句、奥の細道の「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。」これなどは暗喩である。身近なたとえで言うと、母は太陽のように明るい。などは直喩になる。また擬人法になるとTVのCMでお馴染みの、ソフトバンクの犬(我が家の主)などがある。ソフトバンクの監督だった,ワンちゃんと言われた王を使わず、本物の犬を使ったところに、ソフトバンクのこだわりがあったのではないかと想像を巡らしてみたりする。


柳家小さん 時蕎麦
日本文化の落語においては、特殊な道具を使わず、限られた決まり切った道具として扇子や手拭いだけを用いて様々な情景を表すが、これも一種の見立てある。たとえば扇子を閉じた状態で、ある時はこれを煙管に見立て、煙管として使ってみせたり、又あるときはこれを箸に見立て、蕎麦をすすってうまそうに食ってみせる名人芸もある。小さんの「時蕎麦」は食べる仕草と音で蕎麦の細いのと太いものの差を感じさせたし、そばの温度の変化も仕草で演じ分けた。




寅さん

一方で「地口」(じぐち)と言って、江戸時代の言葉遊びでは「恐れ入谷の鬼子母神」 「驚き桃の木山椒(さんしょ)の木 」など、我々が聞き覚えのあるフレーズがある。最近では、もっとも有名なのが映画の寅さんで日本中が知り得ることとなった。この下衆(げす)な口上。「結構毛だらけ猫灰だらけ ケツの周りはクソだらけ」などは、サブカルチャー的なものとしておなじみであるが、昔、新橋駅前で見た十徳ナイフの 叩き売りをやっていた露天商の口上も負けてはいなかった。疑り深い客に向かって「嘘は泥棒の始まり、屁はクソの始まり」と言ってのけた具合だ。
モノマネ、形態模写、声真似、顔真似など、真似モノ。ピン芸なんていわれて、いまひとつ知的な高評価を受けていない気がするが、これらも広い意味での見立てになるだろう。