2012年12月12日水曜日

日本のインフラ


最近読んだ本に「日本文明世界最強の秘密」増田悦佐著がある。「日本はもうダメだ」という悲観論のマインドコントロールから日本人を救い出す画期的論考!閉塞感漂う現代日本に一筋の光明が差すような本でもある。                                                 
「その国の経済発展を支えるものは強固で効率的な交通網(車より鉄道社会を守り抜いた日本の大首都圏のインフラ)であり、我が国が21世紀を通じて先進国の中では一番経済的パフォーマンスを繰り広げている。戦後の荒廃から脱却し1970年代までの日本経済の高度成長を支えたものは、世界一のエネルギー変換効率で、車よりもネットワーク性が高く、大量に人を運ぶインフラである鉄道網が東京、大阪といった二大都市圏に張り巡らされて、世界一急速に都市化が進んだにもかかわらず、交通渋滞による大都市圏の経済効率が下がることもなかった。」

競争力は何によってきまるのか、との命題から考え始め、原材料、技術、労働力、エネルギーの要素は移転可能だから、決め手にはならず、一番大事なのはインフラだとする。ここでインフラというのは、人間を大量に集積する都市が有利であることであり、特に人口を集められるのは鉄道中心の都市であるとする。結果、東京や大阪など鉄道中心の都市がある日本は他の国に対して競争の上で優位に立っているという、増田理論の結論が出てくる。

また本書ではこう続ける、鉄道を発明したのはイギリス人だが、鉄道網を発明したのは日本人だと。実際欧米諸国の鉄道はターミナル駅はそこから乗り換えするのに非常に不便な位置に有り、日本のようにターミナル駅が通過駅としての機能を併せ持ち、そのため同じ駅内で乗り換えがスムーズに行われて、時間のロスがなく、時刻の正確さはこの上ない。しかも駅の中ではショッピングモールを組み込んだ多機能な空間が存在する。この利便性は他国の追随を許さない。

世界最大の乗降客数を誇る新宿駅でも、山手線、中央線、京王線、小田急線、地下鉄各線が同じ構内に集中している。そのため欧米では貧乏人以外は不便な鉄道をさけ、通勤は圧倒的に車に頼る車社会で、一度に大量輸送が可能な鉄道に比べエネルギー効率が非常に悪いのである。日本では旅客は鉄道、足のない貨物は車と概ね棲み分けられている。そのため日本では旅客では世界一鉄道依存度が高く、貨物では世界一鉄道依存度が低い。よって道路を走行する自動車に占める業務用車両の比率が高くなっている日本では交通量の増加はほぼストレートに経済活動の拡大を意味する。

中央道笹子トンネル事故
ただ我々も荷物が多い遠出には車を使い、少ない遠出には鉄道または飛行機を使ったり、旅行先で荷物が増えたら宅急便を使ったりと、選択肢は多い。田舎を走ってみて気づくことであるが、大都市圏の利便性がない地方の移動手段は圧倒的に車である。それも一家に一人1台の軽自動車の多いことか。とにかく軽自動車が多いのが目に付く。ただ今回報道を賑わした中央道の笹子トンネル事故は、時々利用する者として穏やかでない話である。

笹子トンネルは、今から約37年前の1975年に完成し、77年から使用されており、まだわが国が高成長の真っただ中にある時期に使われ始めた。笹子トンネルがある中央自動車道は、わが国の中心である東京と山梨や長野、さらには兵庫県西宮を結ぶ幹線道路の1つとして、わが国経済の動脈としての役割を果たしてきた。
そして老朽化していた笹子トンネルの事故は、9人の尊い命を奪った。現在、同様の問題を引き起こす可能性のある危険度の高いトンネルは全国で49カ所あるとも言われ、その点検が急がれている。直近では首都高羽田トンネルもボルトの脱落を指摘されている。
そしてこの事故を受けて,各党代表は,インフラのメンテナンスの重要性を訴えるに至っている。言うまでもなく高度成長期につくられた道路、トンネル、橋梁などのインフラの多くがこれから大量に寿命を向かえる。時代錯誤の無駄な新規大型公共事業復活の前に、過去のインフラのメンテナンスが最優先されるべきだろう。
そのためにはデフレ不況の今,増税をしたところで不況が深刻化する以上,なんとしてでも「経済成長」をはたして財源を確保して,抜本的な「インフラのメンテナンス事業」に政府として取り組んでいく事が不可欠だと思う。

0 件のコメント: