2012年8月11日土曜日

海の歳時記

鬼カサゴ(10年で30cmと成長が遅い)
8月に入ると必ずやる釣り物に鬼カサゴがある。顔を見るとお世辞にも良い顔とは言えない。どこかの幹事長よりも悪相で醜悪な面構えである。人間にはある年代になったら自分の顔に責任を持てという言葉があるが、こいつは小さくてもえぐい顔をしていて1年生きようが10年生きようがその面構えは変わらない。さらに悪いことにそのヒレは猛毒を持っている。
スコーピオンフィッシュ(サソリ魚)と英語では呼ばれているように背ビレ、腹ビレ、尻ビレなどに猛毒を持っているが、この魚は普通の魚屋では見られない超高級魚で味は折り紙つきの極上の味なので釣り人を夢中にさせる。100M~200M位の深海に生息し1年にたった100グラムほどしか成長できず猛毒を持つ数本の背鰭で外敵から身を守り20年以上も生き延びる、そして釣り上げられても、水圧の変化にもビクともせず、まな板の上でも動きを見せる強靭な生命力の持ち主だ。臆病は野生の知恵と言われるように、この魚も神経質で警戒心が強いのでばらすことも多い。成長が極端に遅いので21cm以下はどの船宿も放流を求めてくる。


さて釣友3人と腰越から出船したのだが、そのうちの一人は鬼カサゴ釣りは初めてで、背びれには触らぬよう注意したのだったが、3匹目を釣った時に針を外している最中に魚が跳ねて運悪く手の甲にとげが刺さってしまった。
刺された右手 パンパンに腫れている
刺されるとこれまでに体験したことのない激痛が走るそうで。船長は傷口から血を吸い出せと激励し、けして冷やすなと言っていた。本人も血だらけの手に向かって懸命に血を吸っては吐き出していた。普段は饒舌な彼もひたすら無口に激痛に耐え忍んでいた。一説ではオニカサゴ毒の強さはハブ毒のなんと18倍もの強さもあり、毒量は極めて微量のために致命率は極めて低く、タンパク毒(ハチの強力なもの)のため50度ほどの温度で無毒化し拡散しないようだ。ただ魚は死んでも毒は健在で調理も慎重にヒレをとってからでないと痛い目にあう。
その後納竿までの3時間ひたすら激痛に耐え、本人は釣りどころではなかったようである。後日調べたところ、塩野義製薬から出ている「リンデロンVG軟膏」が患部に塗って早くて10分、遅くて1時間で痛みがなくなるようである。
オコゼ (こいつはひでえー顔だ!)

<オコゼの毒>
オコゼもすこぶる旨い魚で、顔はもとよりその風貌は海のホームレス(一昔前の)とでも言おうか、薄汚い体表に無数のボロ布を着けているようだ。一度日本海から取り寄せたことがあったが、背びれは処理済みで送られた風体をを見たときはこいつが食えるのかと一瞬たじろいだが、刺身、唐揚げは絶品だった。
 

オニオコゼ類の毒腺はカサゴ類のそれよりも遥かに発達しており、毒性も強いのでより要注意である。毒はハブ毒の81倍の強さを持つことが報告されていて。西インド洋でかなりの死亡例があったと言われている。医療事情が悪いことも原因だと考えられるが。刺傷事故が多く危険で有るためオーストラリアでは抗毒素が作られているほどである。
岩のような鬼ダルマオコゼ、魚類最強の毒を持つ

以前沖縄・名護市の海岸でスクーバダイビングの講習中、「オコゼ」に刺されて死亡したという記事もあった。これは背ビレのトゲに猛毒があるオニダルマオコゼでどうやら素足で踏んだらしい。


ゴンズイ

<ゴンズイ>
ナマズの仲間で背鰭と胸鰭には、刺があり、刺されると猛烈に痛いので漁師はあまり相手にはしないようだが、一度東伊豆で食べたゴンズイの蒲焼はうなぎとまではいかないが、脂がのって美味かった記憶がある。堤防などで釣れる魚で、小学生の頃
周りの大人がこいつはヤバイから触るなと聞かされたものだった。毒の強さは猛毒で、大人でもあまりの痛さに真っ青になって病院に駆け込んでくるケースも多いが、冬場の味の良さは意外と知られていないようだ。

悪相、猛毒、美味。なぜか三拍子揃った魚を求めて、今日も釣り場をさまよう馬鹿がいる。

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