地球生誕から46億年が経ち、今から200万年前に人類(ホモハビルス)が誕生し石器を造った。やがて人類の遠大な歴史の中ではごく最近に当たる200年前にイギリスで産業革命が起き、それを支えるエネルギーを化石燃料から手に入れた人類は、やがて産業の発達とともに、石炭から石油、石油から原子力という究極のエネルギーを手に入れた。
ところが2011年に北半球に位置する小さな島国で、人類が未だ経験したことのない大惨事が起きた。巨大地震による衝撃的な揺れと津波で、原子力発電所が破壊された。その名は日本(福島)、今や世界中の目がこの福島に集中してしている。現在廃炉に向かって作業中であるが、その道程は長く険しい。
原子力エネルギー政策は、好むと好まざるをにかかわらず、歴史的使命を終えたのではないか。今後、稼働中の原子力発電の耐用年数(40年)が過ぎた順番で運転を停止し、危険極まりない地震列島に位置する原子炉は徐々に廃炉にしていき、原子力に代わるエネルギー政策に変換する必要があるだろう。
今までに蓄積されてきた原子力に伴う核廃棄物の処理も一筋縄ではない。これらに伴う管理コストは安い生産コストを圧倒的に押しやることが分かり、結局高くて危険なエネルギーであることが分かった。
特に核廃棄物の処理において、大量の低レベル放射性廃棄物と、高レベル放射性廃棄物の発生に伴い、特に高レベルのものはガラス固化するものの、半減期数万年のウラン235やプルトニウム、マイナーアクチニド (MA) と高発熱量核分裂生成物 FP が混入しているため、冷却しながら30年、その後数万年という気の遠くなるような時間をかけて保管が必要になる。
太陽光(熱)発電、地熱発電、風力発電、波浪発電等の地域分散型発電など人畜無害の自然エネルギー政策への転換も取りざたされているが、太陽光発電では原子炉1基分の100万kWの電力をつくろうとすると、山手線の内側と同じくらいの面積にソーラーパネルを敷き詰めるという話で、地理的に問題があるし、地熱発電も国定公園内がそのエリアにあるため規制がかかる。風力発電も局地的で大規模な発電には至らない。また波浪発電も自然まかせで安定した電力が得られない。もっぱらの頼りは従来の火力発電水力発電だが、、、。
少子高齢化による人口減少、省エネ社会の日本で電気の使用量が下降線をたどると言われている中、福島原発事故後のエネルギー事情は変換を余儀なくされるだろう。全国の原子力発電所54基のうち、35基が停止している現状で、現在運転中の19基も来年夏までには定期検査の時期を迎え再稼働しなければ全部が停止する。いったん止まった原発の再稼働は地元の了解を得なければ困難な状況下で、今後原子力発電に代わるエネルギーをどこに求めるべきか?
ここに脱原発後のエネルギー資源について各方面から興味深い提案が発信されているので3つほど抜粋してご紹介しよう。
東京湾にあるLNG火力発電所 |
提言1
作家広瀬隆氏は最もクリーンで世界の発電のエースであるLNG火力を増設するべき と言っている。電力会社としては、LNG(液化天然ガス)火力発電所を増やすことを勧めている。
LNG火力というのは、現在、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「ガス・コンバインドサイクル」として完成している。この発電設備は、火力のなかで最もエネルギー効率が高い。じつは原発のエネルギー効率は驚くほど低く、わずか30%だ。電気にならなかった残りの70%は、温排水として海を加熱して、自然破壊を進めている。一方、従来型火力は45%まで、そしてガス・コンバインドの熱効率は実績で60%まで高まっているという。
しかも、この方式ではタービンでLNGを燃焼させた後に、何度も排熱を回収してエネルギーを発電機に送るため、熱効率は原発の2倍なのに、排熱量は2分の1に抑えられる。ほかにも、天然ガスはクリーンで地球環境に最もやさしい、小型なので設置に場所をとらない、電源を入れてから1時間で起動できるので消費量の変化に追随できる、という数々のメリットがある。
原発がなければ経済成長できないと考えるのは大きな誤りで、これがいま世界の趨勢なのである。日本の電力消費は、家庭用が3割弱で、残りの7割以上を産業用と業務用が占めている。しかも、日中は家庭にあまり人がいないので、ピーク電力の問題はほとんどが産業用・業務用の問題だと氏は提言している。
提言2
資源エネルギーを他国からの輸入に頼っている国家、日本。ところが、ある資源によって日本が資源小国から資源大国になれる可能性がある。
平成13年7月に発表された「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を実現するため、平成13年度、官民学共同のメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称:MH21)が組織された。
メタンハイドレートは天然ガスの原料となるメタンを水の分子が取り囲んだ状態の固体結晶。永久凍土地帯や大陸縁辺部の海域に高圧低温の条件下で生成され、火をつけると燃えるため「燃える氷」といわれる。燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量は石炭や石油に比べると半分程度で、地球温暖化対策にも効果的な新たなエネルギー源として注目されている。
日本近海の東部南海トラフだけで日本の天然ガス年間消費量の13・5年分に相当する約1兆1400億立方メートルの存在が確認されており、現在のガス田の埋蔵量ランキングにあてはめると世界20位程度に位置する。(上の写真は日本近海のメタンハイドレート分布図と下はその物。画面上赤い個所が埋蔵量の多いところである。)
しかし採掘コストが高いことなどから、太平洋側南海トラフよりも日本海側の佐渡近海がメタンハイドレートの結晶が固まっていることが分かっているので注目されている。
また近年問題の竹島近海でも発見されているので韓国が領有権を主張している。そして東シナ海にも存在するため中国が狙い漁っている。
渡邉教授 |
筑波大学大学院、渡邉信(まこと)教授の進めているバイオエネルギー藻類が日本の救世主になると教授は力説している。
世界にも注目される、大量の石油を生む特別な「藻」の大発見!これまで海外で、いくつか石油を生む藻の発見はあったし、現に米国もクリーンエネルギーとして1000億円以上の事業投資をしている。米国では藻類を原料にしたバイオ燃料を開発するベンチャー企業が続々と登場。研究室レベルのものから、大規模な培養を試みるものまで様々あるが、実用化は5~10年後といわれる。すぐにビジネスになるような話ではないが、産業界の藻類への関心は並々ならぬものだ。
左からボトリオコッカスとオーランチオトリウム |
しかし、藻のスペシャリストの教授が発見したのは、これまで発見された藻をはるかに上回る量の石油を生み出すという関係者しか知らない極秘の藻(オーランチオトリウム)は、従来の藻(ボトリオコッカス)と違い光合成を必要とない藻で、原油(炭化水素)を効率的に作ることが出来き、生産能力はボトリオコッカスの10倍以上になる。日本が年間使用している原油量2億トンを生産するのに2万ヘクタールの土地があれば生産できるらしい。研究チームの試算では、深さ1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約1万トン作り出せるためこの試算になる。
もともと原油は藻類が長い年月を経て堆積したもので、原料は同じことになる。ただ生産コストがかかるので、生産ベースに乗せるプロジェクトを国内企業50社が藻類産業創成コンソーシアムという組織を立ち上げて10年後をめどに実現をめざしているところだ。
地球が何億年もかけて作った石油を、科学の力により短時間で効率よく生産する革新的なプロセス、その上、付随した石油製品の数々も生産できる石油の代替品である。
成功すれば日本は産油国になり250兆円以上の市場が待っているという遠大で夢の多いプロジェクトである。世界のパワーバランスさえ変えてしまう新しいエネルギー循環に期待したい。
■渡邉教授が熱く語っている動画
0 件のコメント:
コメントを投稿