2011年6月14日火曜日

アートな話「モナリザ」

Art is long,Life is short.芸術は長く人生は短し.(ピポクラテス)

レオナルドダビンチの傑作モナリザは時を経た今でも永遠に微笑み続けている。未完の名画とも言われている.フランスルーブル博物館所蔵の門外不出のこの絵画は過去に3度博物館から移動している。最初はルーブル美術館に出入りしていたガラス職人による盗難。二番目は米国への貸し出し。3番目は日本への貸し出しである。

最近NHKのBS歴史館 「モナリザはなぜ海を渡ったのか?」というテーマの番組を見た。

時は東西冷戦の真っただ中の、キューバ危機で米国が旧ソ連とにらみ合っていた時期である。米ソ2大国の冷戦が緊張の度合いを増す中、当時フランス大統領ドゴールは、第2次大戦でドイツに占領された苦い経験から、戦後の国家体制は核を保有することで大国と同じテーブルで外交交渉に、対等に望めるとして核の保有に全力を注いだ。米国、ソ連、英国、に次いで核実験を行うが米国の抵抗にあう。そしてフランスの核実験の4年後には中国も核実験を始めた。

核拡散を防ぎたいアメリカと核武装をして発言権を得たいフランスのせめぎ合いの中で、フランスがアルジェリアのサハラ砂漠で核実験をした翌年1961年、ケネディーが夫人を伴い訪仏。この時ドゴールは、腹心の文化相アンドレ・マルローにジャクリーヌ夫人をルーブル美術館に招聘し、この世界的に有名なマルローに取り入らせた。

亭主を落とすには女房から懐柔するといった古典的な手法で、夫人を取り込んだ訳である。ジャクリーヌ夫人はフランスの知性マルローをいたく気に入り、作戦は見事成功した。

翌年ドゴールは、フランス国民の反対を押し切り、初めて海を渡ったアメリカ国立美術館でのモナリザ公開を実現させた。当時米国では2か月間で170万人の観客が押し寄せたそうだ。そのようないきさつで、米国もフランスの核保有を黙認する形となったのである。まさに名画を政治の切り札に使ったモナリザ外交である。

この公開の最中のドゴール大統領は次のように大見得を切った。

『今やアメリカの核戦力は世界平和を保障するものになっている。しかし、この核戦力がヨーロッパやフランスの危機に必ずしも迅速に使われる保証はない。それゆえに、フランスは独自の核戦力を持つことをここに宣言する。』

実行力のある政治家の言葉は重い。どこかの国の口先3寸の出来もしないことを軽く発言する首相の面々とは違う。この言葉の端には米ソに負けない大国になろうとするフランスの思惑が感じられる。そして翌年我々はニュース報道で歴史の大きな転換を知る。ケネディーの暗殺である。その裏に隠されたマリリンモンローとの逸話がMr.presidentに花を添える。

左はIMF専務理事ストロカーン

さて余談になるが、現代のフランスにおいては、次期大統領の呼び声が高い 国際通貨基金(IMF)の専務理事、ストロスカーン氏。現サルコジ大統領とはりあっているが、強姦未遂で次期大統領選を棒に振った女好きを自認するこのおっさん。写真は2009年にピッツバーグで開催されたG20サミットの場面で、スケベったらしい顔でミッシェル婦人に近づこうとする所を旦那のオバマに手を払われている。

歴代のフランス大統領は女で浮名を流しているが、今回のスキャンダル、何もホテルの客室従業員に手をつけることはなかろうに、いつの世も男の業は尽きることはない。「歴史の裏に女あり」とはよく言ったものである。

2011年6月10日金曜日

脱原発


地球生誕から46億年が経ち、今から200万年前に人類(ホモハビルス)が誕生し石器を造った。やがて人類の遠大な歴史の中ではごく最近に当たる200年前にイギリスで産業革命が起き、それを支えるエネルギーを化石燃料から手に入れた人類は、やがて産業の発達とともに、石炭から石油、石油から原子力という究極のエネルギーを手に入れた。

ところが2011年に北半球に位置する小さな島国で、人類が未だ経験したことのない大惨事が起きた。巨大地震による衝撃的な揺れと津波で、原子力発電所が破壊された。その名は日本(福島)、今や世界中の目がこの福島に集中してしている。現在廃炉に向かって作業中であるが、その道程は長く険しい。


原子力エネルギー政策は、好むと好まざるをにかかわらず、歴史的使命を終えたのではないか。今後、稼働中の原子力発電の耐用年数(40年)が過ぎた順番で運転を停止し、危険極まりない地震列島に位置する原子炉は徐々に廃炉にしていき、原子力に代わるエネルギー政策に変換する必要があるだろう。

今までに蓄積されてきた原子力に伴う核廃棄物の処理も一筋縄ではない。これらに伴う管理コストは安い生産コストを圧倒的に押しやることが分かり、結局高くて危険なエネルギーであることが分かった。
特に核廃棄物の処理において、大量の低レベル放射性廃棄物と、高レベル放射性廃棄物の発生に伴い、特に高レベルのものはガラス固化するものの、半減期数万年のウラン235やプルトニウム、マイナーアクチニド (MA) と高発熱量核分裂生成物 FP が混入しているため、冷却しながら30年、その後数万年という気の遠くなるような時間をかけて保管が必要になる。


太陽光(熱)発電、地熱発電、風力発電、波浪発電等の地域分散型発電など人畜無害の自然エネルギー政策への転換も取りざたされているが、太陽光発電では原子炉1基分の100万kWの電力をつくろうとすると、山手線の内側と同じくらいの面積にソーラーパネルを敷き詰めるという話で、地理的に問題があるし、地熱発電も国定公園内がそのエリアにあるため規制がかかる。風力発電も局地的で大規模な発電には至らない。また波浪発電も自然まかせで安定した電力が得られない。もっぱらの頼りは従来の火力発電水力発電だが、、、。

少子高齢化による人口減少、省エネ社会の日本で電気の使用量が下降線をたどると言われている中、福島原発事故後のエネルギー事情は変換を余儀なくされるだろう。全国の原子力発電所54基のうち、35基が停止している現状で、現在運転中の19基も来年夏までには定期検査の時期を迎え再稼働しなければ全部が停止する。いったん止まった原発の再稼働は地元の了解を得なければ困難な状況下で、今後原子力発電に代わるエネルギーをどこに求めるべきか?

ここに脱原発後のエネルギー資源について各方面から興味深い提案が発信されているので3つほど抜粋してご紹介しよう。

東京湾にあるLNG火力発電所

提言1

 作家広瀬隆氏は最もクリーンで世界の発電のエースであるLNG火力を増設するべき と言っている。電力会社としては、LNG(液化天然ガス)火力発電所を増やすことを勧めている。
LNG火力というのは、現在、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「ガス・コンバインドサイクル」として完成している。この発電設備は、火力のなかで最もエネルギー効率が高い。じつは原発のエネルギー効率は驚くほど低く、わずか30%だ。電気にならなかった残りの70%は、温排水として海を加熱して、自然破壊を進めている。一方、従来型火力は45%まで、そしてガス・コンバインドの熱効率は実績で60%まで高まっているという。

しかも、この方式ではタービンでLNGを燃焼させた後に、何度も排熱を回収してエネルギーを発電機に送るため、熱効率は原発の2倍なのに、排熱量は2分の1に抑えられる。ほかにも、天然ガスはクリーンで地球環境に最もやさしい、小型なので設置に場所をとらない、電源を入れてから1時間で起動できるので消費量の変化に追随できる、という数々のメリットがある。

 原発がなければ経済成長できないと考えるのは大きな誤りで、これがいま世界の趨勢なのである。日本の電力消費は、家庭用が3割弱で、残りの7割以上を産業用と業務用が占めている。しかも、日中は家庭にあまり人がいないので、ピーク電力の問題はほとんどが産業用・業務用の問題だと氏は提言している。

提言2    

資源エネルギーを他国からの輸入に頼っている国家、日本。ところが、ある資源によって日本が資源小国から資源大国になれる可能性がある。
平成13年7月に発表された「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を実現するため、平成13年度、官民学共同のメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称:MH21)が組織された。

メタンハイドレートは天然ガスの原料となるメタンを水の分子が取り囲んだ状態の固体結晶。永久凍土地帯や大陸縁辺部の海域に高圧低温の条件下で生成され、火をつけると燃えるため「燃える氷」といわれる。燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量は石炭や石油に比べると半分程度で、地球温暖化対策にも効果的な新たなエネルギー源として注目されている。

日本近海の東部南海トラフだけで日本の天然ガス年間消費量の13・5年分に相当する約1兆1400億立方メートルの存在が確認されており、現在のガス田の埋蔵量ランキングにあてはめると世界20位程度に位置する。(上の写真は日本近海のメタンハイドレート分布図と下はその物。画面上赤い個所が埋蔵量の多いところである。)
しかし採掘コストが高いことなどから、太平洋側南海トラフよりも日本海側の佐渡近海がメタンハイドレートの結晶が固まっていることが分かっているので注目されている。
また近年問題の竹島近海でも発見されているので韓国が領有権を主張している。そして東シナ海にも存在するため中国が狙い漁っている。


渡邉教授
提言3       


 筑波大学大学院、渡邉信(まこと)教授の進めているバイオエネルギー藻類が日本の救世主になると教授は力説している。

世界にも注目される、大量の石油を生む特別な「藻」の大発見!これまで海外で、いくつか石油を生む藻の発見はあったし、現に米国もクリーンエネルギーとして1000億円以上の事業投資をしている。米国では藻類を原料にしたバイオ燃料を開発するベンチャー企業が続々と登場。研究室レベルのものから、大規模な培養を試みるものまで様々あるが、実用化は5~10年後といわれる。すぐにビジネスになるような話ではないが、産業界の藻類への関心は並々ならぬものだ。
左からボトリオコッカスとオーランチオトリウム


しかし、藻のスペシャリストの教授が発見したのは、これまで発見された藻をはるかに上回る量の石油を生み出すという関係者しか知らない極秘の藻(オーランチオトリウム)は、従来の藻(ボトリオコッカス)と違い光合成を必要とない藻で、原油(炭化水素)を効率的に作ることが出来き、生産能力はボトリオコッカスの10倍以上になる。日本が年間使用している原油量2億トンを生産するのに2万ヘクタールの土地があれば生産できるらしい。研究チームの試算では、深さ1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約1万トン作り出せるためこの試算になる。
もともと原油は藻類が長い年月を経て堆積したもので、原料は同じことになる。ただ生産コストがかかるので、生産ベースに乗せるプロジェクトを国内企業50社が藻類産業創成コンソーシアムという組織を立ち上げて10年後をめどに実現をめざしているところだ。

地球が何億年もかけて作った石油を、科学の力により短時間で効率よく生産する革新的なプロセス、その上、付随した石油製品の数々も生産できる石油の代替品である。
成功すれば日本は産油国になり250兆円以上の市場が待っているという遠大で夢の多いプロジェクトである。世界のパワーバランスさえ変えてしまう新しいエネルギー循環に期待したい。

  ■渡邉教授が熱く語っている動画

2011年6月7日火曜日

魑魅魍魎の政界

やっと国民の手で政権交代を実現したと思っていたら、内部の主導権争いの果てに菅・仙谷グループが、不毛な小沢切りに暴走した事から民主党はおかしくなった。今回の大震災後の無為無策と情報操作により、国民からも民主党内部と野党からも内閣不信任をたたきつけられた管内閣。いまや民主党は政権奪取からわずか2年で崩壊の憂き目にあっている。


すでに衆院議員16人が会派からの離脱を表明し、1人が正式に離党を宣言しており、統一地方選を控えた県議、市議は雪崩を打って公認を返上しはじめている事は周知の事実である。民主党は参院選、衆院補欠選に続いて地方選でも連戦連敗。地方首長選では候補者を擁立できず不戦敗が増えた。

誰もが菅内閣に見切りをつけ、民主党の崩壊を覚悟しはじめている状況である。小沢という柱を失ったら、民主党が機能不全に陥ることは最初から分かっていたことだが、結局、不毛な「小沢排除」は党内に亀裂を走らせ、弱体化させただけで、自民党や霞が関、財界といった旧勢力を喜ばせただけである。

民主党政権が短期間で危機に陥った背景は、鳩山の巨談症的錯雑の失政と金権腐敗の小沢の驕り、そして彼らの政治的・道義的責任を隠蔽する民主党の体質に対する国民の嫌悪感、外交音痴の無謀な政権運営によって国益が大きく毀損されたことや、「予算の裏づけがない美辞麗句を連ねただけのマニュフェスト詐欺」の化けの皮がはがれたことである。


今回の反主流派から出された内閣不信任案も、大勢は可決の方向に向いていたが、間際になって支持母体の連合の古賀会長からの要請で、民主党をつぶすなとの一声で、鳩山が管に猫の鈴をつける役に回ったことが知られている。
その結果、鳩山は「菅首相から辞任の約束を取り付けた」と言って、急遽不信任案に反対する側に回ったため、不信任案が否決されることになった。

その時小沢は鳩山に口約束だけで担保は取ったかと質したら、代議士会で確認をとると言い、その場で役者が一枚上の管の辞任表明を聞かされ気持ちが萎えてしまい、どんでん返しが起きてしまった。その約束は以下の通り

、(1)民主党を壊さない(2)自民党政権に逆戻りさせない(3)復興基本法案の成立と2次補正の早期編成のめどをつける。

菅と鳩山が取り交わした誓約書においては「原発事故と震災復興に目処が立ったとき」という抽象的表現であるから、解釈をめぐって言った言わないの押し問答の揚句に、希代のペテン師(オバマをしてトラストミーと大見栄を切ってペテン師と呟いたそうな)にペテン師と呼ばれている漫画の様な光景が広がり、我々は唖然として見ているだけだった。
菅直人と鳩山由紀夫が誓約書以外にいかなる口頭約束したのかは不明であるが、勝手読みと妄想癖が顕著な鳩山であるから、本人の陳述要旨が事実か否かは不明である。しかし、鳩山由紀夫が小沢軍団の謀反を抑えこみ、「菅総理が夏のはるか前に総辞職する」と公表したことは万人が知っている。

いっぽう奇妙なセレモニーも報道を通じて流れている。ここ3年ほど仇敵関係にあった小沢一郎と渡部恒三が「合同誕生会」で手を握り合って両者薄笑いを浮かべている。誕生会を企画したのは、これまで反小沢の筆頭で凌雲会会長前原誠司前外相と小沢組若頭山岡賢次民主党副代表である。誕生会に参加したのは鳩山由紀夫ら民主党国会議員160人。

誕生会に出席したのは小沢軍団や鳩山派・羽田派らの保守だけでなく中間派も多数いたという。今回、前原誠司は「渡部・小沢合同誕生会」を企画・立案し成功させた。反小沢の旗を投げ捨て「菅内閣打倒の軍旗」の下にはせ参じたのである

仙石由人代表代行(官房副長官)は自民党副総裁と連携して「菅降ろし」を画策しているとみられている。彼らの一致した見解は「菅政権は持たない」ということであるが、目下、菅内閣総辞職後の主導権をどちらが握るかという点が最大の争点となっている。

主流派も反主流派も相互に雪崩打ってゴジャゴジャのちゃんこ鍋状態だ。さりとて管直人はしぶとくいつまでも鍋に残る灰汁のようにつまみだせない。

去り際を潔く幕を引くのが高潔な政治家の美学であろうに、品性は顔に出る。