2010年12月7日火曜日

見果てぬ夢



今年は猛暑のせいか海水温がまだ高い。11月末南房総白間津で1.2kgのシマアジを釣り、翌日は10号ハリスを切られるオオカミ(シマアジの10kgオーバーの老成魚)に遭遇し、悔しい思いを残したまま、今月に入り定宿の金沢八景野毛屋でフグをやることにした。


通常なら10月ごろに東京湾内房の大貫沖に海苔棚が設置され、この海苔を食べに回遊してくる多くのショウサイフグでにぎわうのであるが、どういうわけか今年はこのよりフグが少なく、船宿も気をもんでいるところに、11月半ばころから、港のすぐ沖で、トラフグと並んで味の上位にランクされる、アカメフグ(正式には彼岸フグ)が大量に釣れているというので、最近作った自作のフグ竿の調子を見るために半年ぶりに、混雑を避け、平日の月曜に来てみたら結構釣り客が来ていた。
さてその釣果はキロオーバーのアカメが4匹、それ以下が2匹にショウサイフグが2匹、船上でさばき、2~3日冷蔵庫に寝かせて、居酒屋に持っていく手はずになっている。

                                               アカメ           ショウサイ

フグを食す文化は古く、江戸時代からあり、フグにまつわる俳句も多くある。

ふぐ食わぬ奴にはみせな 富士の山  一茶

河豚くうて 尚生きてゐる 汝かな  虚子

河豚汁や 鯛もあるのに 無分別  芭蕉



湾フグ釣りの歴史は今から 30~40年前にさかのぼる。八景野毛屋の今は無き先代の親父が、神奈川県で最初に始めたそうである。
やがてそれが東京湾エリアから湾奥エリアに広がったそうだ。湾奥エリアでは浦安吉野屋あたりが、神奈川の船宿に釣り方のノウハウを聞きに行ったそうで、これが約30年前のことで、最近では相模湾の船宿沖右衛門の船頭が教えを乞いにきたらしい。そんなわけで釣り自体の歴史は新しい部類であろう。野毛屋は先代の時から通っており、店には私の鯛の彫刻が今でもある。

最近ではフグの釣り人口も増え、それに付随してタックルは驚くほどの進化を遂げでおり、その殆ど全ては熱心な釣り人が、船宿の船長の助言を受けながらコツコツ開発した跡がうかがえる。最近では船宿特注の竿も多く出回っている。また仕掛けについても甘エビを2匹付けて釣っているが、餌の状態が悪いと見向きもしないグルメな魚でもある。

釣りの中でもカワハギとならんで難易度が非常に高いこの釣りは、神経質で繊細なこの魚の特質に由来しており、その当たりはよほど注意して穂先を見ていないと分からないほど、非常に小さい当たりをキャッチする竿が要求される。



写真の竿は最近作った2.07mの自作の和竿であるが、20本近く作ったフグ竿の集大成のもので、穂先の感度と大物を釣り上げた時のしなり具合と強度が申し分ない結果を得た。仕上げは緑の色漆で、中央部に蒔絵を施した。そこで一句、



覚めやらぬ 夢を水面に 糸を垂れ  創雲





見果てぬ夢

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