2010年11月4日木曜日

アートな話「芸術探訪」

                     東京都現代美術館


久しぶりに東京に出た。首都圏の片田舎に住んでいるものとしては、娘に会いに行くか、特別な用がない限りめったに東京には出かけない。
今、気になる展覧会とイベントを見に行ったので、ここで2つほど紹介してみよう。

◆東京都現代美術館 「東京アートミーティング トラスフォーメーション」

 『対称性人類学』などで知られる人類学者 中沢新一とキュレーター長谷川裕子の共同企画で始まった内外のアーチスト、映像作家による企画展が来年の1月30日までの日程で開催されている。場所は地下鉄半蔵門線白河清澄駅から徒歩8分。


展覧会の概要は次のように述べられている。

「生きることは変わること。細胞や知識の更新、時代、環境との出会い、また想像力によって、日々私たちは変わっていきます。
この展覧会は、「変身-変容」をテーマに人間とそうでないものとの境界を探るものです。古今東西、変身をテーマにしたイメージや芸術は多くつくられてきました。
特に日本においては、昔話から現代の漫画やアニメのキャラクターに至るまで、豊かなイメージが溢れています。では今、なぜ「変身-変容」なのか?インターネットやグローバル経済、テクノロジーの発達によって、従来の社会に属する「人間」という形がぶれはじめ、その存在には、かつてないほどの多様性が生まれつつあります。本展では、動物や機械、想像上の生き物、異なる遺伝子組成をもつ体など、人とそうでないものの間を横断する多様なイメージが、絵画、彫刻、映像、アーカイヴ、
シンポジウムなどを通して展開されます。そこで表現される「変身-変容」する形は、私たちの夢や希望、おそれをひとつの予兆として映し出します。1980年代から現在にわたり15カ国21組のアーティストたちによってつくられた作品を通して、今、変わることの可能性と意味を伝えます。」


東京アートミーティングとは

現代アートを中心に、デザイン、建築などの異なる表現ジャンル、およびその他の専門領域が出会うことで、新しいアートの可能性を提示します。第一回目は、「トランスフォーメーション」のテーマのもと、アートと人類学が出会います。東京藝術大学とも連携し、「東京藝大トランスWEEKS」として、将来世代の育成を図るための展示、パフォーマンス、シンポジウムなどを開催します。

ジャガンナート・パンダ《叙事詩(エピック)III》2010 アクリル





アクリル絵画もさることながら、展示の半数以上を占める映像作品は、プレゼンの方法が多種多様で、CG,アニメ、音響、造形のイリュージョンありで、特にAES+Fというロシアのグループ制作で<最後の暴動2>という作品は、部屋いっぱいに屏風のように置かれた3つの巨大スクリーンから迫ってくる映像は圧巻だった.

またスイスの映像作家のピピロッティーリストの作品は天井と床に映し出された映像を寝ころんでみたり、床下をのぞき込んだりして見せる空間のイリュージョンも印象に残った。

各会場ともカーテンの入り口で仕切られ、一つのアートな世界を繰り広げている。
一部日本の浮世絵に見られる歌川国芳のだまし絵の様なアニメーション シャジアシカンダーの<ネメシス>なども印象に残った作品である。また立体彫刻も数は無かったが、変容をテーマにした興味深いものが見られた。



一方、常設展では戦後の美術会を引っ張ってきた読売アンデパンダンの過去に見覚えのある作品が多く出品されていた。合わせて見ると現代アートは、今やタブローから抜け出た映像と音響の総合アートに変容していく様を目の当たりにし、隔世の感があった。



◆東京芸大 アートプロジェクト



次に回ったのは、東京下町の下谷神社会館で行われた、東京芸大企画のギャラリートーク「噺家と彫刻家のトーク」と題して、現役の芸大生が、寄席発祥の地、下谷を舞台に若手落語家をモデルにいろいろな素材でその人を彫刻してもらおうという企画で、会場では彫刻作品を前にモデルの噺家と像を造った作者との制作談義が繰り広げられた。この企画、彫刻アートプロジェクトは、台東区と東京芸大の彫刻科が連携を組んで大学から町に飛び出して、大学授業と地域交流を主眼とする試みであり今年で4回目を迎えるそうだ。

現代アートがタブローから映像に変容していくように、彫刻も密室の制作から街に出て制作するのも、ある種変容ではなかろうか?

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