2013年10月16日水曜日

米国のチキンレース


民主党のオバマ大統領と共和党ベイナー下院議長

先に当ブログ(2013年3月◆錬金術は止まらない)で書いたアメリカの財政問題が再び取り沙汰されている。米国では政府債務の上限(政府が借金できる金額)があらかじめ決められており、これをオーバーすることは許されないことになっている。借金が上限に達した場合には、そのたびに議会の承認を受けて国債を追加発行しなければならないのである。
今年も後半になった現在の債務上限額は約16兆7000億ドル(1630兆円)であるから、またまたこの問題が浮上してきて、上院下院共々腹の探り合いをやっている。経済は年々拡大していくので債務を歳出の一定割合にとどめていても、金額の絶対値は自然に増えていくので、債務の上限は割合ではなく金額の絶対値で規定されているから、米国では毎年のように上限の改訂をしなければならないことになっている。現在の仕組みがスタートした1940年以降、すでに90回以上も債務上限を改定していて、いわば年中行事である。

ルー米財務長官は先月25日、現在16兆7000億ドルとなっている連邦政府の債務上限を引き上げなければ、10月17日に米政府の手元資金がほぼ底をつくという見通しを明らかにした。同長官はベイナー下院議長はじめ議会指導者に、債務上限引き上げを無条件で即時承認するよう要請した。共和党は歳出拡大に強く反対する立場から、債務上限の引き上げ幅と同じ額の歳出カットや医療保険改革の修正を求めている。
 現在議会の与野党対立で17日の期限までに債務上限引き上げが実施されないと、米国債の利払いなど「支払い義務を履行するのは不可能」になり、債務不履行(デフォルト)に陥る危険性が指摘されている。このことは米国債の信用失墜、金利高騰、ドル価下落、金融市場の凍結、株式市場大暴落などが懸念されているので、G20各国も米国に事態の修復に関して11日、20カ国・地域(G20)声明に、米財政問題に関する文章が盛り込まれることを明らかにした。

現在米下院共和党の強硬派はあれこれ屁理屈並べて責めてはいるものの、狙いはただ一点。オバマ民主党政権が打ち出した「米国民医療皆保険制度」、オバマケアの実施つぶしのようだ。この制度は2008年大統領選挙でのオバマが打ち出した主要な公約の一つであった。2010年に成立。その後上下院の勢力が捻じれ状態となり下院で多数を占めた共和党、特に右派が中心になって強引にその実施を阻止し始めた。与野党のしのぎ合いが続き、17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖を開始。最大100万人の連邦政府職員が無給休暇となるほか、国立公園の営業停止も続いている。
国全体の医療費を減らし、医療をめぐる格差の実態を少しでも改善しようと打ち出したのが皆保険、オバマケアだった。だが新大陸入植時の名家名門を筆頭とする支配層。建国以来築き上げてきた軍産複合体、医療保険業界などが厳然とバックに存在する。余談になるが米国の自己破産者の4割は医療費が払えなくての破産だそうだ。カードで借金漬けの多くの国民は稼いでもその返済に追われるため、全体の消費が上向かない。

借金大国アメリカの米国債の発行残高は16兆ドル越え(約1500兆円)である。それと比較すると、日本の国民が保有する現金と有価証券総額は(約1、500兆円)で、日本の国債発行残高は、1000兆円。日本国債の95%は国内で消化されているのに比べ、他国からの借金漬けのアメリカでは、歳出削減や増税をしなくては国債発行限度額を引き上げられないアメリカの危うい現状が見えてくる。2008年にFRB(米連邦準備制度理事会)のひとつであるセントルイス銀行のエコノミストが試算では、海外でばらまいている米国債やドルなどを試算すると、153~160兆ドルにもなるそうである。この数字は米GDP(14兆ドル)の10倍以上で、もはや国家として倒産していると結論づけていた。

日本の米国債保有額は約110兆円と、中国に次ぐ世界2位の規模。民間では三菱東京UFJ銀行など3メガバンクだけでも計8兆円程度の米国債を保有しているもようだ。
米国がデフォルトし基軸通貨ドルが崩壊すれば、米国債はただの紙切れになる。こんな悪夢は見たくはないが、そう遠くない未来にはドルもユーロも基軸通貨の座から転がり落ちる可能性は否定できない。そうなると決済通貨の多極化がおこり混沌とした世界経済がひろがっていくだろう。

ただ我々が意を強くするのは、国の借金がGDPの倍だと言われながらも、平成24年末の対外資産負債残高によると日本の企業や政府、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産は296兆3150億円あることだ。国際通貨基金(IMF)などの統計では、主要国の24年末の対外純資産は2位の中国は150兆2875億円、3位のドイツが121兆8960億円。このため、日本は平成3年以降22年連続で「ダントツの世界一の債権国」であることには変わりはないのである。それにくらべると、米国に至っては、約406兆円にも上る対外純負債国となっている。
果たして米国の終わりのないチキンレースはいつまで続くのか?.......


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