2013年8月11日日曜日

原発の謎


今年4月、ジュネーブで開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で提出された核兵器の非人道性を訴える共同声明に、80か国が賛同した。南アフリカなどの提案国は、わが国にも賛同の署名を求めたが、しかし、日本政府は署名せず、世界の期待を裏切った。そして今月9日、被爆68年となる長崎原爆の日に、長崎市で平和祈念式典が開かれ、席上で田上富久市長は平和宣言で、政府が共同声明に賛同しなかったことを「被爆国としての原点に反する」と強く批判。核廃絶にリーダーシップを発揮するよう求めた。このように今や政府の不可解な言動の裏には必ずアメリカの影が映るのを気づいている国民は多いと思う。


いろいろな情報源から謎解きをしてみよう。現在問題の原発は54基全てアメリカ型であり、基本的には日米原子力協定という、原発をアメリカが日本に売るためまたは日本がアメリカから原発を買うためのルールがつくられた。1955年自民党政権時の立党宣言には、原子科学を推進するということが謳われていて、この年は最初の原子力協定が成立した年でもあった。さらにこの協定は日英であったり日仏であったりと他の2国とも結んでいる。最初の日米協定はアメリカから実験炉とウランを買うことを決めた契約で、同時に自民党は原子力基本法の制定も行っている。そして核燃料の再処理を英仏に委託している。
戦後中国、北朝鮮、インドそしてパキスタンが核兵器製造システムを進歩させてきた一方で、日本など西側陣営は、これら急増する脅威に対抗するため連携を強めてきた。1960年代にアメリカのジョンソン大統領と日本の佐藤栄作首相の間で秘密裏に会談が行われ、そこには首脳に次ぐ日米の指導者層も集まり、増大し続ける東アジアの軍拡競争に対抗するため、日本の戦力を強化する目的でアメリカの核製造技術を秘密裏に提供することが、国際戦略の一部として決定された。この方針はレーガン政権の時に最高潮を迎え、アメリカ国家の政策を劇的に変化させた。アメリカ政府は、日本に送られた自国技術に由来する核関連物質の取り扱い権限を、事実上全て日本に譲り渡した。
この日米原子力協定の有効期間は30年と決まっており、1988年に2回目の締結の後2018年7月に満期を迎えることになる。この協定がある以上脱原発は夢のまた夢となるのだが,協定を更新するも破棄するもこれを決断する時の政府の責任は重い。
六カ所村


青森県の北東部にある僻遠の地、ウラン濃縮施設がこの六ヶ所村にある。この施設では使用済みのウラン、そしてプルトニウムから、再び核燃料を作り出そうという『再処理』が行われている。ここは分離プルトニウムの上手な隠し場所として使われ、その量は9トンにもなるが、専門家によればこれだけあれば優に1,000個以上の核弾頭を製造することが可能なようだ。
 核兵器の製造・所有は一切行わないことを誓い、目下54基の原子炉の内2基しか稼働していない日本において、この六ヶ所村は唯一の例外のようにも見える。

日本政府は片方では2040年までの原子力発電の段階的廃止を謳っておきながら、一方では六ヶ所村が核燃料の再処理を行い、原子力発電所に燃料供給を行うことになっている。再処理によって創り出される核燃料により、日本は2050年代になっても原子力発電を稼働させ続けることが可能になる計算だ。


しかしこの矛盾は、日本政府の『原子力発電の段階的廃止』という目標が、ほとんど無意味なお題目に過ぎないことを証明するもので、日本が、野田政権の時、今原発をゼロにすると閣議決定したときに、アメリカから文句を言われ引っ込めた。
プルトニウムだけを持ってしまうことが、原爆製造につながることになりかねず、核散防止の建前上、再利用としての高速増殖炉と、プルサーマル発電は続けろとアメリカは指示する。その後ろでアメリカ政府を動かしているのが、ウラン鉱山を専有しているロスチャイルド一族である。

六ヶ所村再処理工場は、完成が15年も遅れている上、資金繰りについては全く行き詰った状況にあるが、政策に対する強い影響力だけは衰えていない。この再処理工場には、すでに2兆2000億円もの巨額の資金がつぎ込まれているが、かつては貧寒とした農漁村であった六ヶ所村の古川健次村長は、補助金が無ければこの村はやっていけないと語気を強める。 村は雇用についても歳入についても、再処理施設への依存割合を高め続けて来た完全な原子力村である。
公的には核兵器を持たないことを表明している日本は、非核国家の中で最大量の分離プルトニウムを抱え込んでいる。その日本がもし、原子力発電の廃止にも関わらず使用済み核燃料の再処理を続ければ、世界中の核開発能力のある国々に誤ったメッセージを送ることになると、アメリカは主張している。日本政府はこうした不安を払しょくするため、2040年までの原子力発電所の廃止は、義務ではなく目標であるといち早く表明したが、国際的圧力によって、技術的には可能な日本の脱原発も着地点の見えない状況になっている。

日本がもし原子力発電という手段を放棄してしまえば、日立製作所とゼネラルエレクトリック、そして東芝とウェイティングハウスとの提携により支えられるアメリカの原子力産業が、その技術的な協力者を失ってしまう事で、原子力核技術の優位性がアメリカにとっては、中国やロシアのそれに並び追い越される懸念材料として存在するようだ。
しかしそんなことよりも100年や200年では片づくはずのない、危険な高放射性廃棄物やプルトニウムをこれ以上『作らないようにする事』の方が、はるかに緊急性の高い問題であり、しかも、六ヶ所村再処理工場は、動き出せば高濃度の放射性廃棄物を毎日海に捨て続けることになるとは小出教授の弁である。(小出裕章氏著『原発のウソ』)。
さらに原子力発電を続ければ、核廃棄物の量が増え続けることになり、これに福島第一原発の事故が生み続けている高濃度汚染水、除染後の土などの低レベル放射性廃棄物まで加えれば、この国の汚染はいったいどれ程のものになってしまうのか、空恐ろしい気分になる。
福島第一原発の現状

小出教授はさらに続ける。「政府や東京電力は安全だと言っています。しかし、現場作業員は信じていない。大きな危険があります。私が個人的に心配なのは第4号機です。建屋は地震によって大破しました。4階の燃料冷却プールには約1300本の使用済み燃料棒があります。その上の階には新品の燃料棒が貯蔵され、重機がたくさんあります。すべてが、非常にきわめて深刻な状態です。大地震が再び起こったら、建屋は崩れ落ちるかもしれません。そうなれば、新たに連鎖反応が起こる可能性が非常に高いです。つまり、外気にさらされた状態で炉心融溶が起これば、今までの私たちの知識からすれば、日本の終わりだ。その場合、放射線は死に至るほど危険であり、敷地内での作業は一切できない。その結果、第1号機、第2号機、第3号機、第5号機、第6号機も制御できなくなるであろう。ハルマゲドンだ。「一番心配なのは、破壊された原発で働ける専門技術者が、もうすぐいなくなってしまうことです。大半の技術者は、被爆量が被爆限度量に達しているからです。」まだ被爆していない専門教育を受けた労働者がいなければ、この大惨事を制御することは不可能だ。仮に今後40年間、専門教育を受けた技術者や専門家を十分に確保できたとしても、問題が一つ残る。日本ばかりでなく、世界も変えるかもしれないような問題が発生する可能性は消えてない。」

現在原発の最前線で働いているのは下請けのまた下請けの日雇い労働者で、原発保守管理のもと過去30年のあいだに福島も含めて、点検整備や事故処理で700~1000人以上が被爆によって命を落としていることやこれら特攻隊のこともまともに報道されていない。これらの中にはホームレスや貧困層に的を絞って日当2万5千円以上(と言っても多くは中間業者にピンはねされる)で40代から60代ぐらいまでの作業員を募集している。筆者も横浜市の瀬谷区の路上で募集チラシを見たことがある。多いのは西の釜ヶ崎、東の山谷、横浜の寿町といったところか。とにかく全国から募集しているのだ。

いま、数十万人の原発難民が、美しい故郷を破壊されて帰る場所を失い、半径280kmに住む2500万人以上の頭上に放射性物質が降りた。国際社会に対するメンツを失うのを恐れた政府は、放射能の基準を国際標準の何倍にも緩め、それを持って大地も空気も水も食品も「問題なし」と言い切ってきた。国家が知っていて言わないことを、知っていて尋ねないマスメディア。新聞を眺める限りでは、国家が知られたくないこと、伝えたくないことをほじくっている記事がほんの僅かで、国家の言うままを国家の指定した順序で書いているだけの記事が大半を占めている現状では、国民は疑心暗鬼に陥るしかない。既に産地偽装の食品が各地のスーパーに出回っているようだ。

今回のようなクラスの大地震がほかの地域の原発に襲ったら、津波の前に原子炉核納容器以外の配管は、その脆弱さゆえにズタズタになる運命にあり、第二の福島が震源地に近いところに出現するだろう。原発再稼働どころではない。広島や長崎に落とされた原爆のように、日本は世代に渡る後遺症の大きさに直面するであろう。事故現場から20km以内の範囲は、居住不可能であると考えられる。そこは、国家的犠牲を背負った土地だと言える。未来永劫日本は原爆を背負って生きていく呪われた国なのか?今や我が国は歴史的に非常に重大な岐路に立たされている。
日本は二つの核開発プログラムを並存させている。公にされたプログラムは、無限のエネルギーを国家に供給するための核開発だ。しかし、そこには隠された計画が含まれており、それは、日本が原料として十分な核物質を蓄え、極短期間で主要核保有国に成り得る技術力を醸成すること、つまり宣告されることなき核兵器製造プログラムがある。巷では原発がプルトニウムを製造して、アメリカに輸出していただとか、福島は核燃料製造工場だとかが囁かれているが、国の機密事項であろうからなかなか裏は取れない。
汚染水の垂れ流しが延々と続く福島原発だが、ここに来てようやく政府は東電福島第1原発の敷地周囲の土を凍らせて地下水の流出を防ぐ「凍土方式」に国費を使う方針を固めた。予算は数百億円に上るという。もはや東電任せにはできない段階に入った。

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