2012年6月10日日曜日

いつか来た道


ユーロ危機が現実味を帯びてきた。対岸の火事と見ていた我々日本人にとっても金融グローバル化の現代、一連托生の危機感は徐々に芽生えてくる。
問題のユーロ圏のデフォルト(債務不履行)が懸念されている国の国債を総称PIIGS債と称しているが、PIGとは英語で豚の意味でいいえて妙である。その国はポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの五ヶ国の頭文字を取った略である。
この内アイルランドは既に破綻し、EU圏で救済の手が差し伸べられた。
EUの新条約「財政協定」は「財政赤字をGDPの0.5%以内にする」という相当に厳しい資金援助の条件を提示して、これを国民の約6割が受け入れ、アイルランドは「財政赤字をGDPの0.5%以内にする」という条件を「憲法」に定めることになり危機を脱したので、PIIGSからIが取れPIGSが現在の財政破綻の順番を待っている。

物わかりのいいアイルランドに比べるとギリシャは国論を二分しゴタゴタが続いているさなかに今度はスペインの財政危機が表面化してきた。
ユーロ加盟国は、マーストリヒト条約(EU欧州連合条約)で定められた条件(財政赤字はGDPの3%以内、累積赤字はGDPの30%以内など)を守らなくてはならないのだが、通貨統合だけで政治統合まで至らないため、ほとんどの国が遵守していないようだ。そのため各国が自国の都合に合わせて国債(PIIG債)を発行し、それが財政を圧迫している。ギリシャに端を発したユーロ危機ではあるが、ギリシャの場合GDP27兆円の150%(40兆円)を抱えていたが、そのうちの77%が国外の金融機関だったことで危機が増幅され国債の買い手がつかなくなり金利上昇に転じ,償還もままならない事態に陥った。


ところがここにきて問題になっているスペインでは規模が大きく、国債残(公的債務)は、GDP 112兆円に対し68.5%の77兆円だが、民間法人と世帯の債務が、GDP(112兆円)の2.2倍(250兆円)もあることで、大半は、ギリシャと同じく国外の金融機関からの借金で賄っている。国債と合わせれば、GDP比で2.9倍(327兆円)の負債になるそうだ。
スペインの危機は財政規模がギリシャとは桁(けた)が違うだけに、EUにとって容易ならざる事態である。 そのためギリシャ問題が影が薄くなってきている。 
報道ではバンキア銀行が、最近政府に行った支援要請の額が190億ユーロ(1兆9000億円)と想像以上に巨額であったことから、同様な不良債権を抱えた銀行群を財政赤字に悩む政府が支援しきれずに 、連鎖的な銀行破綻が発生して金融恐慌が起きる懸念が取りざたされ始めたのである。

ECB(欧州中央銀行)がPIGS債をどこまで買い支え、ユーロ暴落の大火事にならないようにくすぶり続けるPIIGS債の飛び火を押さえ込めるのかが焦点になっている。このPIIGS債に対しては、米国の銀行も、約100兆円のCDS(保証保険)を引き受けており、分かりやすく言えば連帯保証のようなものだ。他国の銀行も持ち合いで大なり小なり同じことをやっている。
つまり、これは民間企業に投資している人が掛ける一種の保険のようなもので、いわば2008年に世界的な金融危機を起こしたサブプライム・ローンの兄貴分のようなものである。サブプライムは個人の破綻を前提にしているが、CDSはその対象が企業 で規模も桁違いである。そのため実体経済の何倍ものマネーが世界を駆け巡っている。

CDS (クレジット・デフォルト・スワップ)とは何かというと、企業の債務不履行にともなうリスクを対象にした金融派生商品で、対象となる企業が破綻し 、金融債権や社債などの支払いができなくなった場合、CDSの買い手は金利や元本に相当する支払いをCDSの発行会社から受け取るという仕組みの商品である。

ユーロ暴落は、ユーロ債(ドイツ債以下、ユーロ17ヵ国の国債・証券・株)をもつ、世界の金融の破産も意味し、その損の規模は、08年9月の、米国発金融危機の2倍にもなるととりざたされている。
今世界が固唾を呑んでユーロ危機を見守っているが、それも世界金融市場の崩壊が来ないことを祈りつつ。
夢か現か金の亡者達が構築してきたバーチャルな金融市場の崩壊が進み、誰もくいとめることが出来なくなり、やがてゾンビのようにまた甦るのか?ヨーロッパ経済は既に恐慌に入っている。

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