「立てば国難、座れば人災、歩く姿は風評被害」 詠み人知らず。
評論家伊藤肇のベストセラー「現代の帝王学」の中に、中国漢代の学者荀悦の著述《申鑑》を引用している箇所がある。古代中国を知ることは日本を知ることと、私は思っているので、この部分を現在の政治状況と照らし合わせてご紹介してみよう。
説明を追加 |
後漢末の「申鑑」の中に「国に重い病気が4つある。」として、「四患」を論じている。
第一に「偽」。
国家、国政に嘘が多くなる。
選挙などはその例であろう。小沢幹事長が政府に文句をいったように、公約が簡単に反故にされる事態。尖閣諸島問題、大震災後の原発事故後の正確な情報を国民に流さないことなど。嘘とわかるようなウソをつくところに管首相の器量が分かるというものだ。
今、福島原発の1号機が初期の段階でメルトダウン(炉心溶解)を起こしていることが判明したが、2号3号機もすでに同じ状態が続いていることが懸念されている。メルトダウンの事実を東電も首相も当初から知っていたのではないかと疑いをもたれている。みんなの党の渡辺代表は「今度の大震災の菅首相の危機管理の対応について危機を過小評価しすぎたため、それを正当化するため不都合な事実が起こるたびに情報を隠蔽し、国際的な風評被害を生んだのは万死に値する。」と述べている。
第二に「私」。
国家、社会という公を忘れ、皆が私利私欲に走り出す。政治の悪性は政治家とその取り巻きが私利私欲に走ることである。
5月2日に成立した1次補正は4兆円規模にすぎず、本格的な復旧・復興費用は復興の根幹である2次補正に計上することになっていた。
だが、菅直人首相は16日の衆院予算委員会で「拙速にすぎるのは復興事業にとって気をつけないといけない」と答弁し、2次補正の提出は8月のお盆休み以降に臨時国会を開いて先送りする考えを示した。相変わらずの内閣延命作戦だ。この期に及んで被災者・被災地対応を放置することは断じて許されないだろう。それよりも内閣改造での政権浮揚を考えることで頭の中がいっぱいらしい。
西岡参議院議長 |
すべて大事な事案を先送りする管内閣に業を煮やした西岡参議院議長も立場も考えずに止むに止まれず首相の退陣を求めて19日付の読売新聞に寄稿している。
特に西岡氏は、震災発生以来の首相の対応について、首相としての責務を放棄し続けて来たと批判し、必死さも、決意も、術もなく、今おやめにならなければ原発事故がもたらす重大な課題も解決できないと強調している。
自民党の谷垣総裁は、東日本大震災復興に向けた 2011年度第2次補正予算案を提出せず、今国会を6月22日の会期末に閉じる場合には 内閣不信任案を提出する意向を表明した。与党内にも小沢をはじめとする反管グループもその動きを見せている。
自公民との復興の連携を図ったがそれも自らの人徳のなさで頓挫してしまった。すべて自己保身の目論見が透けて見え、大連立を延命の道具に使う意図を見抜かれてしまったからだ。
第三に「放」。
法律を無視した「放埓」が幅を利かす。
鳩山に続き普天間の解決策を潰し、問題を先送りにしていることはこのことに当るだろう。理解もしないで解決策を否定することは、それまでの努力を無に帰することになる。重大緊急事態に対処する重要事項を審議する安全保障会議も開かずに、10万人の自衛隊員の出動を命じたり、浜岡原発の緊急記者会見や、その他重要案件を法制化せずに思いつきで発令したり、これといった災害対策法案も出せないまま独断先行の采配をふるっている。誰が言ったか知らないが、鳩山は最低の首相、管は最悪の首相とは言い得て妙である.これほどやめろコールが鳴りやまない人望の無い首相も珍しい。先に外国人の献金で辞任した前原外相に続いて同じ案件が発覚し、辞任に追い込まれるところを運よく大震災の発生で難を逃れた管はこれで2年は続けられるとつぶやいたとも言われている。
第四に「奢」。
実力もないのに贅沢だけを覚える。
日本人はいったん走り出すと不幸なことが起こるまで彼らは止まらない。国策とはいえ原発推進の御旗のもと政官民一体となり、脆弱な地震列島の上に54基の原発を作り、全電力の35%の供給を原子力に委ね、利便性を享受している我々国民。電力コストを考えれば原子力だが、コストは安全性に変えられない。浜岡の2次堤防が出来るまでの2年間の停止要請など気休めに過ぎない。直下型の活断層の激震が来れば施設はズタズタになることは専門家の間で多く言われていることだ。
以上この4つの病気で国は衰退していく。
被災地の産業の復旧では、農業なら耕作時期、漁業なら漁期などに間に合うよう地域ごとに迅速に対応する必要があり、中央での多くの会議の結論待ちでは復興の機会を失ってしまうだろう。ひたすら、復旧・復興のスピードアップを図るべき時にお盆休みを過ぎて2次補正を出すとは被災者をないがしろにするものだ。
ポスト管が見当たらない今、裸の王様は益々権勢を振る。まことに民主党政権の責任は重い。いつの間にか我々は問題を先送りする内閣は、政権能力がないことに気づかされた。