人類社会はこれまでに2度の大きな変化を経験してきた。第1の変化は1万年前の古代メソポタミアで興った農業革命である。これが世界の4大文明の地に伝播したことは想像するに難くない。きっかけは磨石石斧である。切れるまで研いだ石と木の枝を括りつけた斧によって、木を切り森を伐採し、野山を放浪する狩猟生活から一定の場所で農耕したり家畜を飼ったりして定住するようになり定住社会が生まれ、やがてヒッタイト(トルコのあたり)の鉄器に代表される新しい文明が出現して、都市国家が形成されていった。この農業革命の意義は、人類を含め動物も飢餓線上で生きてきたものが、物不足の時代からモノ余りの時代に移行するきっかけとなったことである。
農業革命以降、基本的に人類は自らが消費する以上のモノを生産するようになった。平和が続くと、自然とデフレギャップが出現し、これをどう処理するかがまさに人類の歴史であった。つまり人類の歴史はデフレギャップとの闘いの歴史であったのだ。エジプトのピラミッド建設も公共事業として需要の喚起のために行われ、日本の江戸時代においては火事の多いことで周知であるが、これも公共事業の一種で、火事になれば復興のための膨大な資材と労働力が必要になり、これらの需要が江戸経済を支えていたという説もあるほどだ。
このデフレギャップの打開に手っ取り早く効果的なものが諸刃の剣である戦争である。人類の歴史がデフレギャップとの戦いであるとの認識から推察すれば、戦争を起こすことによって有効需要の創出が生じ、人類全体から見れば少数者の民衆の犠牲によりデフレギャップを調整し、人類全体の生存を図る自然淘汰の法則から逃れられない宿命になっている。しかし戦争が20世紀以後、特に第一次大戦後悪とされたのは、戦争規模の大きいことにより、当事国や同盟国の疲弊が著しく、需要が莫大になりすぎて当事国ではその需要をまかないきれず、今度は極端なインフレギャップになってしまったことに起因する。
第2の変化は18世紀後半から始まり20世紀の前半までかかった英国の産業革命である。タービンとシリンダーの発明を契機として,人類はエネルギーを利用して自らの筋力だけでは不可能だった夢を実現させ,20世紀の物質文明を築き上げてきた。この時点から人類の経済社会の大量生産、大量消費が始まった。と同時に今までの農業人口の多くが工業人口にシフトしていったのである。同時に資本主義の誕生は世界を大きく変えていった。
そして,第3の変化が、1950年代に出現したコンピュータに代表される社会的技術的な大きな変化が,今,地球上で起こっている。歴史学者のアルビントフラーはこの変化を「第3の波」と呼んでいて、今日従来の権力(パワー)が音を立てて崩れており,ビジネス,経済,政治,世界問題において「パワーシフト」が進行している,と述べている。 これら3つの変化はいずれも道具によって変革してきた大きな波である。
人類が発明した道具は人類に多くの恵みを与えてきたが、片や究極の破壊兵器の「核」を対極として存在させ、北朝鮮のような零細国家の脅しゆすりとたかりのこの上もない道具となっている。北朝鮮の夜間上空写真を見ると、この国とまともに対峙することがアホくさくなる画像である。今日,世界規模の情報ネットワークが急速に発展していき,情報は瞬時にしかも同時に世界中に伝わるようになった。このために,社会の制度や経済の仕組みが大きく変わろうとしている。まさに 21世紀は情報文明の世紀となるのである。
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