「中国は10年後にはGDPで米国を抜いて、世界一の経済大国になる」という予測がある。過去10年の平均成長率(中国10.5%、米国1.7%)をそのまま延長すると、2022年に米中のGDPは逆転するという。
中国は生産コストの上昇をを避けるために、元安政策を続けなくてはならないが、貿易赤字を抱える米国が元安をいつまでも許さない。あと10年も元安を続け、ドルをさらに貯め続けることができない。そうした経済情勢から単純にこの数字を予測はできないだろう。 (写真は上海)
一方で外資系企業に対中投資を続けてもらうためには、低賃金を続け、また無尽蔵に労働力供給を続けなければならない。しかし、中国の労働力人口が2013年にもピークを迎え、人口抑制のための一人っ子政策により、中国は世界最速のペースで高齢化が進んでおり、労働力供給が底を突けば、賃金の上昇はまぬがれない。ましてや労働者の賃上げ要求が年々激しさを増していく中で、低コストの貸し工場としての魅力は薄れ、海外からの投資は減りより安い新興国に向かうため「貸し工場」で外資企業頼りの成長モデルでは、このままあと10年も成長が続くとは思えない。
国民が豊かになって、国内消費が伸び、それが投資と国内生産を押し上げて、さらに国民を豊かにするという日本型の高度成長とは違う成長モデルがそこにある。日本の経済成長最盛期には個人消費がGDPに対する比率が60%ぐらいあった。中国の個人消費は2000年まではGDPの45%と、もともと低い段階であったのが、2009年には35%まで下がってしまった。
ここに2008年度の総務省による世界各国の輸出高の統計がある。中国の輸出のGDP比率は、2009年で26%、ピークの2006年では39%もあった。すなわち、輸出依存度で言えば、日本の2.5倍から4倍という「超輸出依存型」である。また。逆に投資は2000年が34%で、2009年には46%にまで上昇した。中国政府の公共投資と不動産バブルの影響である。
さらに中国国内の所得格差は凄まじい。人口の上位10%が国民全体の所得の50%を占めている。日本では29%である。
非常に速いスピードで経済成長を続けてきた中国だが、大卒者の数はそれを上回る速度で増えてきた。大学を出て職にありつける学生は3人に一人と言われている。インフレと高い失業率は民衆の不満を民主化運動に火をつける。中東に広がっている民主化運動がその例である。
中国ではジャスミン革命と呼ばれる民主化運動に本格的に火がつく可能性は十分にある。中国政府の強力な消火機能で当面は抑えられても、火の手はあっちこっちで広がっていく。
原油価格と食料品の価格高騰による激しいインフレ、そしてバブル経済の崩壊による経済の失速は避けられない。
■インフレの背景にあるもの
重要な穀物である小麦は、中国、インド、米国、ロシア、フランスの5ヵ国で、世界の産出量の半分以上を生産しているという。また、原油の主要産出国は、サウジアラビアをはじめ中東地域に集中している。それらの穀物や資源は、基本的に国内で消費される分を除いて、輸出に回される。ところが、当該品の生産国や地域自身の需要が拡大すると、当然輸出に回る分量は減ることになる。原油に至っては、昨今の中東情勢の影響で原油価格が高騰している。
大紀元では中国の最近の食糧事情を報告しているので、本文をご紹介しよう。タイトルは<食糧不足、中国の深刻な危機>
「中国は世界にとって重要な小麦生産大国だが、国連食糧農業機関(FAO)によると、中国大陸では08年の時点ではまだ150万トンの小麦を輸出していた。それ以後、09年と10年は輸出をしておらず、すでに生産が国内の巨大な需要への供給を賄えないほど落ち込んでおり、国外からの輸入食糧に依存する量が徐々に増加しているという。また、米国農務省の資料によると、中国は2010年にはすでに米農産物の最大輸入国となっている。
さらに、昨年10月から中国北方では100日以上の有効降雨がなく、深刻な干ばつに見舞われている。国内メディアによると、小麦の作付と生産量が中国全土の8割以上を占める河北省など8省の主要小麦生産区では、干害面積が640万ヘクタールを超えた。これに伴い、最近の小麦買い付け価格は4割以上も高騰しており、ここ5年で最高額になると予想されている。(写真は枯れた麦苗を手にする山東省の農民)
一方、南方は10年来稀に見る低温に見舞われたため、冬季稲作の生産量が減り、米価格が上昇し始めており、一部農家は米の買いだめを始めているようだ。
最近、北朝鮮が珍しく40か国の大使館を通じ食糧援助を求めていることも注目すべきである。今冬、中国が農作物に受けたダメージは極めて大きく、政府がすでにこの方面への供給力がないことを物語っている。
小麦価格の高騰は今後、小麦粉を原料とする食品類の価格をつり上げ、米の供給不足も手伝って、各種食品価格の上昇が次々に引き起こされると予見できる。国民の大半を占める中低所得者層に大きな衝撃となるに違いない。価格上昇が深刻なことであるのは間違いないが、金さえあればまだ買うことができる。しかし、極端な気候の影響により、ロシア、ウクライナ、豪州、ブラジル、インドなど世界の重要な穀倉地域の農作物生産にも凶作が現れており、国際食糧価格が上昇し続けることを憂慮すべきである。中国当局が海外から食料を輸入し自国の不足を補おうと考えても思い通りにはいかなくなる可能性もある。そうなれば、その時どれほどの中国人が飢えるのだろう。
これらの人々が一斉に立ち上がり中国共産党政府に対し、抗争運動を発起するのではないだろうか?今、チュニジアの「ジャスミン革命」からエジプトの革命まで、北アフリカ、中東地域の民主運動が盛んだが、その背後には共通して、物価高騰、生活不安が存在している。民衆は街頭に出て、自分たちの基本的な生存権のために奮戦せざるを得ない状況に立たされて必然的に生じていることが現状だ。
中国は広大であり、ネット封鎖、中国共産党の軍隊と警察の残酷な武力による鎮圧などのため、一般大衆の動員が難しいといわれているが、孫中山(孫文)が清を倒したことを思い起こして欲しい。この革命(辛亥革命)でのキーポイントは「各省の呼応」だった。インターネットのない時代、変革を切望する人々が皆、同じ心で連絡を取り合い、専制主義政府を倒したのだ。インターネットの発達した21世紀の中国では起こらないと誰が断言できるのだろうか。」
2011年3月9日水曜日
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