2011年3月1日火曜日

アートな話「色について」

◆ 黄色について

黄色で目に浮かぶのがゴッホのひまわりである。花瓶に活けられたひまわりの油彩の絵画としては11点が描かれており。これはその中の一つである。

バブルに浮かれていた時代に、わが国の1企業のオーナーが58億円で落札して一躍有名になった。

印象派の影響を受けつつ、印象派の点描のタッチとは異なったゴッホ特有のストロークの長い筆致で、絵の具のマチエールがむき出しになった重厚なタッチは、画家の気性の激しさと、鬱積した精神の高揚を求めた痕跡を覗かせている。ゴッホも後期印象派と言われるように、印象派の画家たちが用いた技法で、ぶっつけ描きと呼ばれる『アッラプリマ技法』を用い、絵の具をパレット上で混ぜ合わせるのではなく、キャンバス上に原色を塗り、その視覚的効果で混色を感じさせた。絵の具を混ぜて作る混色よりも、彩度が高い鮮やかな色を得ることができ、好んでこの技法を使っている。


ゴッホの絵画を居ながらにして間近で拡大して見たり、離れて見たり、それらの絵を飾っている美術館内部の様子も360度見られるサイトが、Googleが提供している<Art Project>である。英文ではあるが世界の名だたる美術館と名画が、グーグルアースの手法ですべて見れて、画家の絵の具のタッチまで分かるすぐれものだ。興味のある方はこの中のゴッホ美術館で確認あれ。




美術商のもとで働いたのち、伝道師や学校教員などをやりながらやがて画家を志したゴッホは、画商をやっている弟テオの援助を受けながら絵画を学んでいくのであるが、彼には癲癇持ちの持病があり、絶えず発作に悩まされ最後は孤独と絶望のうちに37歳の若さで自らの命を絶った。そんな不遇の画家ゴッホの生前に売れた唯一の作品が「赤い葡萄畑」である。


黄色は太陽の色であり、幸福や生命の光を感じさせ、色彩心理学的にも「希望」や「欲求」を表わしていると言う。まさにゴッホが希求していたものだったのかもしれない。確かに黄色は精神を高揚させる何かがあるようだ。

 黄色はすべての色の中で一番明るい色であり、目立つ色である。黄色は明るく楽しく陽気な色なので、人に受け入れやすい色でもある。人間関係で問題のあったゴッホにとって潜在的な人とのコミュニケーションの手立てとして、この色彩を多用したのではないかと想像が駆け巡る。ゴーギャンとの共同生活の破たんや、耳切り事件と、現実と理想のはざまでもがき苦しんだ孤独の画家ゴッホ。
この赤い葡萄畑も背景にある黄色が赤を侵食している。ゴッホが死ぬ5カ月前に400フランで売れた絵である。

ゴッホはこんな言葉を残している。「すばらしい絵画を制作するのは、ダイヤモンドや真珠を見つけ出すのと同じくらい難しい。困難や苦労を覚悟して、命も賭けなければ成し遂げることができない。」



さてわが国に目を転じれば、黄色と言えば原色よりも黄土色で荒涼たる大地を描いた平山郁夫がいる。いわゆるシルクロードの砂漠と土の色である.氏は生前「色と言うのは人間の感情を表現する一つの言葉ではないかと」述べていた。

平山郁夫のシルクロードは、かつて栄えた国々が歴史の流れの中で消えていった痕跡を、あるいは仏教伝来の道を探す旅だった。この画家は国内では非常に評価が高いが、海外では低い点、ゴッホとは正反対である。
上の絵は平山郁夫の「桜蘭遺跡を行く」

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